為替週間見通し:堅調な米国経済を意識してドル売り縮小も
【先週の概況】
■ドル上げ渋り、金利上昇を警戒した株安が嫌気される
先週のドル・円は上げ渋り。米長期金利がほぼ7年ぶりの水準上昇していることや、米連邦準備制度理事会(FRB)は2019年以降も利上げ継続の方針を堅持していることから、主要通貨に対するドル買いが活発となり、ドル・円は一時114円55銭まで上昇、年初来高値を更新した。
しかしながら、米長期金利の大幅な上昇を警戒して4日のダウ工業株平均は一時、前日比350ドル超の下げを記録し、欧州諸国の株式市場も総じて弱含む展開となったことから、リスク選好的なドル買いは一服。ドル・円は113円台半ば近辺まで反落した。
5日のニューヨーク市場では、この日発表された米9月雇用統計で失業率が3.7%まで低下したことや8月の非農業部門雇用者数が上方修正されたことを好感して、ドルは一時114円08銭まで戻した。ただ、堅調な雇用統計を受けて米長期金利は再び上昇し、ダウ工業株平均は一時300ドル超下げたことから、株安を意識したドル売りが広がり、ドル・円は113円56銭まで反落し、113円68銭でこの週の取引を終えた。先週のドル・円の取引レンジは113円52銭から114円55銭となった。ドル・円の取引レンジ:113円52銭-114円55銭。
【今週の見通し】
■堅調な米国経済を意識してドル売り縮小も
今週のドル・円は底堅い展開か。4日に約11カ月ぶりとなる114円55銭まで買われたが、欧米株安を嫌気してドル上昇は一段落となった。ただ、堅調な米国経済を背景に米連邦準備制度理事会(FRB)による利上げ継続のスタンスに変わりはなく、ドルが113円近辺に下落する局面では顧客筋、個人勢などから押し目買いが入りそうだ。
ドル・円は昨年3月以来となる115円が視野に入った。ただ、2017年には114円半ばから後半の水準で何度か上昇を阻止されており、市場関係者の間では115円近辺は上値抵抗線として意識されているようだ。また、9月27日から10月4日までの1週間でドル・円は112円台半ばから114円台半ばまで円安に振れており、ドル上昇のスピードはやや速いとの見方もある。今週発表される経済指標が市場予想を下回った場合、利益確定やポジション調整目的のドル売りが増える見通し。
イタリアの債務問題をめぐるイタリアと欧州連合(EU)の関係悪化や、EUから英国が合意なしの離脱(強硬離脱)を決定する可能性は残されており、欧州通貨は引き続き買いづらく、結果的に主要通貨に対するドル買いが続くとみられる。
米FRB当局者の発言も、ドル買い材料となるケースがありそうだ。パウエルFRB議長は講演で、雇用情勢の改善やインフレ上昇などの事例を挙げており、米国経済の強さを強調し、利上げ継続の必要性があるとの見方を示した。9月消費者物価指数や米10月ミシガン大学消費者信頼感指数速報値など経済指標が市場予想と一致、または上回った場合、リスク回避的なドル売りはさらに後退・縮小するとみられる。
【米・9月消費者物価指数(CPI)】(11日発表予定)
11日発表の9月消費者物価指数(CPI)は、前年比+2.4%と8月実績の+2.7%を下回ると予想されるが、消費者物価コア指数は前年比+2.3%と8月実績の+2.2%を上回る見通し。コア指数が市場予想と一致した場合は利上げ継続方針を後押ししよう。
【米・10月ミシガン大学消費者信頼感指数速報値】(12日発表予定)
12日発表の10ミシガン大学消費者信頼感指数(速報値)は100.8と予想されており、9月実績の100.1を小幅に上回る見通し。信頼感指数は高い水準で推移しており、堅調な個人消費が確認できれば景気拡大への期待が高まり、ドル買い材料となろう。
予想レンジ:112円00銭-115円00銭
《FA》
提供:フィスコ