雨宮京子氏【一方通行相場、次に振り子が逆に振れるのは?】(1) <相場観特集>
―米長期金利上昇と中国リスクに揺さぶられる東京市場―
3連休明けとなった9日の東京株式市場は日経平均株価が大幅安。前週の地合いを引き継ぎ売り圧力の強い展開が続いた。9月中旬以降の鮮烈な上昇波も今は鳴りを潜め、急速に下値を試す展開を強いられている。しかし、これまでの経緯でも明らかなように、全体指数はいったん方向が変わると連日の上昇もしくは連日の下落となりやすい傾向がある。企業の四半期決算発表を控え、投資家もリスクをとるべきか否か悩ましい局面だ。相場の機微に通じたマーケット関係者2人に今後の相場展望と物色の方向性について話を聞いた。
●「企業の決算発表をにらみ冷静に買い場探し」
雨宮京子氏(SBI証券 投資情報部 シニア・マーケットアドバイザー)
東京株式市場は前週半ばを境に下値を探る展開を余儀なくされているが、9月中旬から10月にかけての上昇波動が凄かっただけに、今の下げも“さもありなん”と冷静に構えておくべきところだ。売りも買いも一方通行の展開はCTAなどトレンドフォローのアルゴリズム売買による需給的要因が大きいと思われる。こういう時こそ株価形成の基本である企業のファンダメンタルズにしっかりと目を向けたい。現在の相場は米長期金利の急上昇が引き金となっているが、これは2月の米株市場発のVIXショックに似ている。しかし、その時と今は状況が違う。日米ともに企業業績は好調であり、好実態株を安く拾うチャンスとみて、ここで買い向かう作戦をとれるのが相場巧者といえるのではないか。
きょうは東証のシステム障害の影響もあった。逆に言えば今度はその反動で戻り足に加速がつく可能性も念頭に置きたい。下値メドとしては25日移動平均線の2万3340円近辺とみている。足もとは派手に下げているようでも、この25日線との上方カイ離調整で済めば、今回の日米株安も上昇トレンドの踊り場として認識される。
そうしたなか、あすは安川電機 <6506> が3-8月期の決算を発表。その後は国内企業の4-9月期決算発表が順次開示される。安川電の決算発表では中国向け依存比率が高いだけにガイダンスリスクが生じる可能性もあるが、国内主要企業を総括すれば総じて上方修正銘柄が多くなるはずだ。ここは足もとの全体相場のムードに流されないようにしたい。
日経平均はいったん底入れ反転モードとなれば、またもやCTA効果で上値追い一辺倒となることも考えられる。10月2日の取引時間中高値2万4448円の奪回は意外と早い段階に訪れるケースもあり得る。
個別銘柄では、まずSNSの炎上対策やコンサルタント業務を手掛けるエルテス <3967> [東証M]に注目。データ解析技術をもとに業務の多角化を図っており、現在は国際会議やイベントでのテロ対策事業に注力している点もポイントだ。このほか、10月本決算銘柄で好調な月次から業績の上振れが期待される神戸物産 <3038> や、7月にマザーズに上場した直近IPO銘柄でロジザード <4391> [東証M]も面白い。ロジザードはIT企業であるのに物流と在庫にフォーカスしたクラウドサービスを提供している点が特長で、今の押し目形成は狙い目とみている。また、丸紅建材リース <9763> はその進捗率から上期決算発表時に増額修正余地がありマークしたい。最後に主力銘柄では、やはり国内外投資家の評価が一様に高いソニー <6758> を挙げておきたい。
(聞き手・中村潤一)
<プロフィール>(あめみや・きょうこ)
SBI証券 投資情報部 シニア・マーケットアドバイザー。元カリスマ証券レディ。日興証券時代は全国トップの営業実績を持つ。ラジオ短波(現ラジオNIKKEI)、長野FM放送アナウンサー、『週刊エコノミスト』(毎日新聞社)記者、日経CNBCキャスター、テレビ東京マーケットレポーター、ストックボイスキャスターなどを経て現在に至る。
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