VC投資の膨張は警戒シグナルか? 注意すべき2つの“デカコーン” <東条麻衣子の株式注意情報>

市況
2018年10月10日 20時00分

米国の長期金利の上昇を受け、世界の株式市場に失速感が広がっている。急ピッチで上昇を続けた反動に伴うスピード調整なのか、調整局面が続くのか、少なくとも今週いっぱいは株式市場の動向を見極めたい。

下落の背景にある最大の要因が米国の長期金利上昇であることは確かだが、株式市場の今後を考えるとき、もう一つ気になる点がある。それが、ベンチャーキャピタル(VC)の投資額だ。

■世界のVC投資は2000年以降で最高に

昨年の世界全体のVCの投資額は前年度比50%増の1640億ドル(うちアジア708億ドル、米国719億ドル)に急拡大し、2000年以降で最高額に達したとされる(PwCとCBI Insightsによるレポート)。

6日には、サウジアラビアはソフトバンクグループ <9984> が計画する第2のビジョン・ファンドに450億ドルを追加出資する方針(拠出額は総額で900億ドルに倍増)と報じられており、背後に控える待機資金の豊富さもうかがえる。

VC投資の動向を占ううえで注目すべきなのが、デカコーン(decacorn=時価総額が100億ドル以上と評価される未上場のベンチャー企業)と称される配車サービスの東西の雄、米国のウーバーテクノロジーズと中国の滴滴出行の2社の存在である。

■VC投資の鍵を握るか、配車大手2社

事業モデルの先行性に対する評価はあろうが、各国・地域でライバル企業も台頭し競争は厳しさを増しており、現段階で想定される2社の上場時の時価総額は割高と考えられる(ウーバーはおよそ700億ドル、滴滴出行は560億ドル)。上場後の2社の株価の動向によっては、今後のIPO市場に悪影響を及ぼすのではないかと筆者は懸念している。

VC投資が増え続け、後に控える待機資金も潤沢であることは、世界の景気と株式市場の好調を映している。だが、VC投資が一つの頂点を極めたのが2000年、インターネットバブル崩壊の年であったことも想起いただきたい。

滴滴出行は中国国内での乗客殺害事件を受けて、2018年下期とされるIPOの延期も懸念されている。ウーバーテクノロジーズもIPOの時期は2019年後半が目標といわれ、足もとの株式市場の動向に直結する要因ではない。だが、中期の時間軸で株式市場に影響を及ぼす要因としてVC投資の動向、その鍵を握る可能性のある存在として配車大手2社のIPOがあることには注意したい。

(2018年10月9日 記)

◆東条麻衣子

株式注意情報.jpを主宰。相場変調の可能性が出た際、注意すべき情報、懸念材料等を配信。

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