“金”上昇の意外、市場が直視し始めたリスク要因 <東条麻衣子の株式注意情報>

市況
2018年10月16日 20時00分

株価上昇が続きマーケットに楽観論が広がる中、当欄では9月26日に注意喚起を促す記事(「不動産市場が映す株式相場“変調の芽”」)を配信したが、その翌週に懸念は現実となり、日米株式市場は10月2日、3日に相次いで天井を打って急落。その波紋は各国に広がり、世界の株式市場は再び同時株安の様相を呈している。

米国では金利の先高観を背景に、金利と逆相関にある株式が売られたとする見方に加え、リスクパリティ(株式や債券など資産ごとの価格変動リスクの均衡化を図る手法)やターゲットボラティリティ(リスク水準を一定で維持する手法)が相場の下落に拍車を掛けたとの指摘がなされている。これらはもっともだが、相場の先見性を踏まえると、加えて筆者は来年の第2四半期以降の米国経済の減速を株式市場は織り込み始めたのではないかと考えている。

今回はマクロ面を中心に株価下落の背景について整理したい。

■世界で高まる緊張、中心には米国の存在

トルコで拘束されていた米国人牧師のブランソン氏が釈放され、米国にとって安全保障上の重要なパートナーとの問題で一定の解決を見たことは好材料ではある。

だが、より大きな視座では米国が推し進める貿易・外交政策は中国との軋轢にとどまらずシリア、イラン、ロシアなどを含めたより複雑な構図の摩擦に発展する可能性も高まっている。

世界における地政学的リスクを含む緊張の高まりは、世界経済の先行き不透明感を強め、景気減速への懸念を一段とかき立てる。

米国との間で貿易赤字問題を抱える日本も例外ではない。安倍晋三首相は日本の首相として7年ぶりに訪中、10月26日には北京で日中首脳会談が予定されている。米国との同盟強化を外交の基本に据え、同時に中国との関係改善も模索する日本は、その立ち位置を含め、会談の結果次第では大きな影響を受ける可能性がある。

■金価格上昇の意味するもの

10月に入り金価格は上昇の勢いを強めているが、「安全資産」としての評価から選好されている節が強い。これまで米中貿易摩擦が激しさを増す中でも、下げ基調にあった金価格だが、8月中旬に底を打ち値固めに転じていた。それが足もとそのレンジから上放れつつある。逆相関の関係にある金の上昇は株式市場にとって“逆風”となる。

この背景には、米国経済のリセッション入りを懸念した安全資産への逃避があるのではないか。

世界の政治・経済における緊張の高まり、米国の金利上昇と同国をはじめとする世界景気の減速懸念など…。マクロ面に抱える不安材料がいよいよ市場の無視できぬ大きさに育ち、金の「安全資産」としての価値を高めつつあるのだとすれば、今回の世界株安は簡単には終わらない可能性も考えておくべきではないか。

◆東条麻衣子

株式注意情報.jpを主宰。相場変調の可能性が出た際、注意すべき情報、懸念材料等を配信。

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