迫る米中間選挙、徹底検証・隠された日米株価“反騰シナリオ”<株探トップ特集>
―米議会「ねじれ」の公算大だが、「イベント通過」で視界一変もー
11月6日に投開票が予定されている米中間選挙が、あと1週間に迫った。米トランプ政権の評価を巡る初の国民選挙となることから、市場の関心は高い。その結果に関して、「上院は共和党、下院は民主党が過半数を取る」との見方が有力だ。しかし、ここへきての共和党の追い上げで、接戦の度合いは深まっている。市場では、米中間選挙を契機に、足もとで下落基調を強める株式相場は反転に向かうとの期待も浮上している。
●下院・民主勝利は60%強の確率、想定される4つのケース
米国の中間選挙では、上院100議席の3分の1(今回は35議席)、下院は435の全議席が改選となる。現在は上下院とも共和党が過半数を占めている。上院に関しては、共和党51議席に対して民主党49議席が現有勢力となっている。今回の中間選挙では、共和党の改選が9議席と少ない一方で民主党は26議席あり、圧倒的に共和党が有利な状況だ。このため、上院では民主党が勝利することは難しいとの見方が多い。
一方、下院に関しては共和党236に対して、民主党193が現状の勢力図だ。これに対して、足もとの情勢では民主党が優勢とみられており、下院での民主党勝利への観測が強まっている。
今回の中間選挙のシナリオは(1)「上院・共和、下院・民主が勝利」(2)「上下院ともに共和が勝利」(3)「上院・民主、下院・共和が勝利」(4)「上下院ともに民主が勝利」――の4つが考えられる。一部アナリストは、それぞれの確率を(1)が60%強、(2)は30%強、(3)(4)はそれぞれ5%弱とみている。
●「ねじれ」発生でもイベント通過を好感、多くの重要法案は成立済み
メインシナリオである(1)のねじれのケースは、トランプ政権にとってネガティブな状況となり、市場には円高・株安要因との見方がある。特に、為替が円高に反応するケースを懸念する見方も出ている。しかし、株価面では足もとの下落で織り込みはすでに進んでいるとの声もある。第一生命経済研究所の桂畑誠治主任エコノミストは「とにかく不透明要因がなくなることは前向きな材料。結果さえ出れば、相場の底打ちから反転に向かうのではないか」と予想する。中間選挙というイベントさえ通過すれば「買い」という見方だ。
この「ねじれ」のケースではトランプ政権の法案が通りにくくなることが懸念されている。もっとも、この点に関しても「トランプ政権は、多くの重要法案をこの2年間で通過させている。残されたものはオバマケアの撤廃程度だが、これはやらない方がいいとも言えるものだ」と桂畑氏は指摘する。
●共和党勝利ならポジティブ・サプライズ、財政赤字拡大には警戒感も
一方、株価に一番ポジティブなのは(2)のケースだ。この可能性は低いとみられてきたが、足もとで共和党の追い上げが関心を集めており、このため一時70%前後とも見られていた民主党の下院奪回の確率は低下している。
この中間選挙での、共和党勝利の可能性を「市場はまだ織り込んでおらず、実現した場合はポジティブ・サプライズとなる」とフィリップ証券の庵原浩樹リサーチ部長は言う。現状の株価水準を前提にした場合「NYダウは2万5000ドル回復が期待できるのではないか」(同氏)とも予想する。
もっとも、共和党が上下院を制した場合、「財政悪化懸念から金利が上昇し、相場は混乱するのではないか」(アナリスト)との見方も少なくない。トランプ大統領は大型減税の第2弾として「中間層に10%の追加減税」を打ち出している。この実現には、共和党が上下両院で多数派を維持する必要があるが、財源のメドがつかない点などが警戒されている。この懸念に対しては「与党内には反対派もおり、大型減税には歳出の削減が求められるだろう」(大手証券)と財政赤字拡大には一定の歯止めがかけられることが期待されている。
●米中間選挙が株価反騰への分水嶺となるか
株価にもっともネガティブなシナリオは(4)の上下両院で民主党が過半数を握るケースだ。この場合、「株価は暴落もあり得る」(庵原氏)との見方も出ている。しかし、(3)と同様に上院を民主党が制するのは難しいとみられている。
こうしたなか、来月6日の米中間選挙までには1日のアップル決算、4日の米国の対イラン制裁猶予期間の終了といった、重要イベントも控える。そして、中間選挙を経て来月下旬にも予想される米中首脳会談と向かう。果たして、米中間選挙は足もとの波乱相場に終止符を打ち、株価が反騰に向かう分水嶺となるか。その大勢は、7日の昼頃までには判明するとみられている。
株探ニュース