いよいよ本格運用スタート、新市場切り拓く「みちびき」関連株 <株探トップ特集>

特集
2018年11月6日 19時30分

―自動運転車やドローン配達実用化に弾み、受信機手掛ける企業に商機―

日本版GPS(全地球測位システム)を担う準天頂衛星システム「みちびき」の本格運用が11月1日から始まった。これまでGPS単独では10メートル程度あった位置情報の誤差を、専用の受信装置を使うことで数センチにまで縮めることができ、さまざまな分野での活用が期待されている。政府は日本版GPSの活用により、新たな産業の創出や便利な生活の実現につなげたい考えで、新市場を巡る企業の取り組みが更に活発化しそうだ。

●政府が日本版GPSを整備するワケ

政府は10年9月に「みちびき」の初号機を打ち上げ、17年には2、3、4号機の打ち上げに成功し、4機体制を構築した。「みちびき」の整備が進められている背景には、現在の衛星測位サービスは米国が運用するGPS衛星を利用しているため、視界に入る衛星数が少ないなどの理由で安定したサービスが受けられないことがある。GPSは地球上のほぼすべての場所で現在位置の測位ができるように設計され、地表全体をカバーしながら周回しているが、時間帯や場所によっては高い建物や山などの障害物に信号が遮られたり、反射したりして必要な電波が受信できなくなり、これが10メートル程度の誤差が生じる原因となっている。

こうした問題を改善するためには測位に使用する衛星を増やす必要があるが、GPS衛星は米国が運用しているため容易に数を増やすことはできず、そこでGPSと互換性があり、GPS衛星と一体で利用することができる「みちびき」の必要性が高まっている。「みちびき」は日本を中心としたアジア・オセアニア地域での利用に特化したシステムで、現在運用されている4機のうち1機以上の衛星が仰角70度以上のほぼ天頂付近に位置することから障害物に電波を遮られることなく、安定して位置情報を受け取ることが可能。政府は23年度をメドに7機体制を確立する方針で、そうなれば日本上空に必ず衛星4機が存在することになり、米国のGPS衛星に依存せずに持続測位ができるようになる。

●サービス利用には専用受信機が必要

「みちびき」の特徴のひとつが「補強信号」と呼ばれる特殊な信号を出せること。補強信号は2種類あり、「サブメータ級測位補強サービス」では誤差が1~2メートル、「センチメータ級測位補強サービス」では誤差が6センチ程度とされる。誤差が縮まると、高精度に人やモノの位置を把握することができ、自動運転車や自動農機、ドローンによる配達などの実用化に弾みがつくことが予想される。

「みちびき」のサービスを利用するためには専用の受信装置が必要となるが、既に対応したさまざまな製品が開発、販売されており、受信機はコア <2359> 、古野電気 <6814> 、日立造船 <7004> 、トプコン <7732> 、ソフトバンクグループ <9984> などが製品化。

ソニー <6758> は受信LSI、高圧ガス工業 <4097> はタイムサーバー、構造計画研究所 <4748> [JQ]はシミューター、アンリツ <6754> は信号発信器を開発済みで、ビジネス機会の拡大が期待される。

●スマホやカーナビなど活用進む

「みちびき」のサービスを利用した商品も数多く販売されており、スマートフォンでは富士通 <6702> やシャープ <6753> 、カーナビではクラリオン <6796> やJVCケンウッド <6632> 、ドライブレコーダーではパイオニア <6773> やカーメイト <7297> [JQ]、デジタルカメラではオリンパス <7733> やキヤノン <7751> 、時計ではカシオ計算機 <6952> やシチズン時計 <7762> などが主なものとして挙げられる。

●アイサンテクノ、エコモットにも注目

これ以外の関連銘柄では、アイサンテクノロジー <4667> [JQ]に注目。同社は自動走行をはじめとした数多くの実証実験に参画するとともに、高精度測位の実証実験に活用できるツールを提供してきた実績がある。また、「みちびき」の補強信号で実現される高精度単独測位の位置情報と、高精度な地理空間情報の位置のズレを整合し正しく利用する手法として、セミ・ダイナミック リダクションの技術開発を行っているという。

エコモット <3987> [東証M]と古野電気は共同で、地盤変位や人工構造物の変位をミリメートルオーダーで計測し、計測データをクラウド上で管理することができる高精度3次元変位計測システム「DANA CLOUD(ダーナクラウド)」を開発。地すべりや火山活動の監視といった防災用途、土木工事の施工時における変位監視、道路の維持管理などでの利用が想定されている。

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