植木靖男氏【静かな強弱感対立、ここからの相場は上か下か】(1) <相場観特集>

特集
2018年11月12日 18時30分

―日経平均は朝安後に浮上も上値追いに慎重なムード―

週明けの東京株式市場は気迷いムード。朝方は日経平均株価が安く始まったものの、売り一巡後急速に下げ渋り、前週末終値を上回る水準で着地した。後場も頑強ぶりを発揮したが、一方で上値を積極的に買う動きは見られない。企業の決算発表もピークを越え、売り方も買い方も新たな刺激材料の出現を息を殺して待つような地合い。2万2000円台前半は静かな強弱感対立の構図が浮き彫りとなっている。こうした局面を何度も見てきた経験値の高いベテラン市場関係者に、東京市場の今後の見通しについて聞いた。

●「先高期待あるものの2番天井探しの地合い」

植木靖男氏(株式評論家)

全体は下値リスクを強く意識させるような状況ではないものの、上値を積極的に買い進む主体にも乏しい。先高期待は失われていない段階にあるが、いずれにせよ年内は(10月2日の年初来高値2万4270円に対する)2番天井探しの局面にあると思われ、それほど強気にはみていない。

日米ともに株式市場の拠りどころとなっているのは、企業の好調な決算数字であり、これは業績相場の流れを支えている。マクロ面でも米国経済の強さは本物であり米長期金利の上昇は、それを反映したものだ。しかし、米金利高は本国への資金回帰を促し、新興国からの資金流出の引き金ともなっており、新興国株市場は冴えず、中国景気の減速懸念がくすぶるなかで欧州株市場も弱い動きだ。つまり、米国とそれに追随する日本の株式市場だけが強いという状況が今後も続くかというと、それはグローバル的な見地から肯定しづらい。

日経平均の上値メドを予測する際に、業績相場から逆金融相場への流れが意識されている現状では、PERなどから単純に判断できない難しさがある。テクニカル的には10月2日高値から26日の安値2万1000円割れ水準までの下げ幅約3300円、この6割戻しが2万3000円近辺となるが、個人的にはそこが2番天井のメドとなるのではないかと考えている。日足一目均衡表の雲も2万3000円台前半にあり、ここを元気よく上に抜けるようなイメージは持っていない。

物色対象も日経平均に連動しやすい主力大型株は食指が動きにくく、その時々のタイミングでテーマに沿う中小型材料株の短期回転売買で対処するのが実践的だろう。ただ、大型株の中では東レ <3402> の動きが異彩を放っており個別に注目している。炭素繊維は原料高デメリットからあまり収益に貢献していない局面にあるが、この株価の強さの背景に何があるのか見極めたいと考えている。

(聞き手・中村潤一)

<プロフィール>(うえき・やすお)

慶応義塾大学経済学部卒。日興証券(現SMBC日興証券)入社。情報部を経て株式本部スポークスマン。独立後、株式評論家としてテレビ、ラジオ、週刊誌さらに講演会などで活躍。的確な相場見通しと独自の銘柄観に定評がある。

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