米国株式市場見通し:投資家のリスク選好姿勢が後退
米中首脳会談は、対中関税追加の90日間延期や中国による農産物の購入などが合意されたものの、一時的な先送りに過ぎず、不透明感は解消されていない。中国通信企業幹部の逮捕による貿易交渉への影響や、米景気の先行き懸念が強まっており、投資家心理も悪化している。来週にFOMCを控えていることから様子見ムードとなることもあり、今週は上値の重い展開が続きそうだ。
先週発表されたISM製造業・非製造業景況指数は前月比で改善したほか、今週発表の経済指標も概ね良好な内容となると予想されるが、米国債イールドカーブ(長短金利差)の逆転や、予想を下振れた雇用統計を受けて、12月の利上げに懐疑的な見方が広がっており、19年度の追加利上げはほぼ織り込まれていない。FOMCが利上げを急ぐ必要はないと判断するとの見方が妥当だろう。さらに11日は、英国で欧州連合とのEU離脱を巡る合意案の採決が予定されているが、否決されれば、先行き不透明感から欧州株が下落し、米国相場にも影響を与えるだろう。
経済指標では、11月生産者物価指数(PPI)(11日)、11月消費者物価指数(12日)、11月輸入物価指数(13日)、11月小売売上高(14日)、11月鉱工業生産(14日)などの発表が予定されている。全米小売業界(NRF) によると、11月22日の感謝祭から26日までの小売店舗及びオンラインでの買い物客は、昨年を約5%下回る水準となった。小売業者が特売を前倒しで行い、消費者も長期にわたり買い物を行うようになったことが要因で、年末商戦の滑り出しは概ね良好と考えられる。11月小売売上高も高い伸びを記録することが予想される。
個別企業では、アパレルのアメリカン・イーグル・アウトフィッターズ(11日)、会員制卸売のコストコ・ホールセール(13日)、グラフィックソフトのアドビ・システムズ(13日)などの決算発表が予定されている。アドビ・システムズは、9-11月期の売上高が20%増となる見通しを示しており、好決算が予想される。コストコも10月と11月の既存売上高がそれぞれ予想を上振れており、業績への不安要素は少ない。
(Horiko Capital Management LLC)
《FA》
提供:フィスコ