金価格を動かす注目イベントはこれ!もっと知りたい商品先物取引(高井ひろえ)

市況
2018年12月11日 17時17分

みなさんこんにちは!フィスコマーケットレポーターの高井ひろえです。

金はほかの投資商品に比べてきわめて特別なものだと思っています。なぜなら金は私たちが投資する商品(株、債券など)の中でも歴史の長い投資対象であり、かつその価値への信仰には絶大なものがあるからです。

先日、古代の遺物が展示されている博物館を訪れたのですが、王冠から日用品など、王様が使用するあらゆるものに金が施され、その権力を象徴していたことがわかりました。また、インドを訪れた際には、多くの女性が金のアクセサリーを身に着けていました。特に、新興国では、自国通貨に対する信頼が薄いため、通貨価値が下がった際の備えのために金が好まれているそうです。

このように、はるか昔から今まで価値を持ち続けている金ですが、実はその価格は日々変動しています。今回は、目先の金相場を見る上でのポイントとなる直近のイベントをみなさんにお伝えします。

■注目ポイント1 ハードブレクジット

金の価格を見る上で、まず注目したいのは「世界情勢の混乱」です。冒頭でインドの例を挙げたように、通貨の価値が下がると金価格が上昇しやすくなります。情勢が混乱している国や地域では自国の通貨が下落しやすいので、注意しておきたいところです。特に現在では、グロバリゼーションがすすんだことにより、先進国での混乱が「世界経済の混乱」につながりやすく、安全資産としての金の価格が上昇することがあります。

直近でポイントとなるのは、12月11日(現地時間)の英国議会での行方についてです。同議会では、英国のメイ首相が欧州連合(EU)との間で合意した「ブレクジット(イギリスのEU離脱)」の暫定案について採決を行います。もし否決されたとしても、来年3月29日には離脱することがEUとの間で決まっているので、「国民の合意なき離脱」となってしまいます。もしかすると、解散総選挙になるかもしれませんし、国民投票のやり直しになるかもしれません。このような英国での政治的不安は、同国の経済に対する信用不安にもつながり、大幅なポンド安を招く懸念があります。また、EU側にも経済不安が広がる可能性があります。これが金高につながるかもしれません。

■注目ポイント2 米国の利上げ

次に注目したいのは、米国の利上げです。利上げの回数が増えると、ドルを持っていることで得られる金利が上昇するので、ドルの価値は高まりやすくなります。なお、ここ数年は米国の経済成長が著しかったので、景気を過熱させすぎないために利上げを加速させてきました。

最近では11月27日のFRB(米連邦準備制度理事会=米国の金融政策を決定する理事会)でクラリダ副議長が「米国金利はFRBが中立金利と見なす水準に近づいている」と発言したことにより、一部市場参加者は早期の利上げ打ち止めを示唆したと受け取りました。つまり「景気の過熱度に対して金利がちょうどよい水準に達したので、今までほど多く利上げを行う必要はない」と受け取ったということですね。続く28 日のパウエル議長の講演では、「政策金利は中立水準をわずかに下回る」と指摘していました。10月初旬には、「中立金利にはまだ距離がある」と話していただけに、その豹変ぶりに市場は驚きました。

このように注目が集まる米国利上げ動向ですが、12月18、19日にFOMC(米国の金融政策を決定する会合)で会見が行われるので、そこでの発言でドルがどう動くかがポイントとなります。来年の利上げが2回となりそうであり、今年の4回と比べて回数が減ってしまいますので、ドル安傾向になりやすいとみられています。金価格においては、米ドル安から金高となる可能性が高まります。

人類の長い歴史という視点で見るとゆるぎない価値を持つように見える金ですが、目先の各国・地域での出来事に価格が動かされてしまうのですね。また、上記で例示したブレクジットですと、企業業績への打撃がクローズアップされやすいのですが、金価格にまで波及しうることを考えると、世界経済はつながっているということが実感できて興味深いですね。

次回以降も商品先物における価格の動きとその要因についてお話します。

フィスコマーケットレポーター 高井ひろえ

《HT》

提供:フィスコ

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