アマゾン・エフェクトの脅威vol.4 トランプ大統領はアマゾンを批判【フィスコ 株・企業報】

経済
2018年12月14日 15時11分

◇以下は、FISCO監修の投資情報誌『FISCO 株・企業報 2018年冬号 -10年後の日本未来予想図』(10月5日発売)の特集『アマゾン・エフェクトの脅威』の一部である。全9回に分けて配信する。

米アマゾン・ドット・コムの急成長・急拡大による市場での混乱や変革。一大現象となっているアマゾン・エフェクト。実店舗からオンラインへと消費者購買行動が移行し、米国内の百貨店やショッピングモールが閉鎖に追い込まれるなど、既存の消費関連企業に衝撃をもたらした。同社のさらなる買収や事業拡大は他の分野にも広がっており、その影響で収益低下が見込まれる「アマゾン恐怖銘柄指数」なるものまで設定された。アマゾン・エフェクトとはいかなるもので、これから日本にもどのような影響を及ぼすことになるのか。アメリカで起こったことを検証しながら考察してみた。

■アマゾンに対抗すべく、グーグルとウォルマートが提携

2017年8月にグーグルとウォルマートがネット通販で提携を発表した。見据えているのは、両社にとって最大かつ共通の敵であるアマゾンだ。ウォルマートは、2016年に米EC大手ジェット・ドット・コムを買収するなど、ネット通販の強化に注力してきた。しかし、アメリカ市場におけるアマゾンの独壇場に割って入ろうと攻勢をかけるには心もとない状態だった。そこでアマゾンに対抗すべく、グーグルと提携したわけだ。

日本ではあまり知られていないが、グーグルは2013年、アメリカで即日配達サービスなどをウリにするネット通販・宅配サービス「グーグル・エクスプレス」を開始している。

当初、利用するには年会費95ドル(約1万円)を支払う必要があったが、アマゾンに対抗して年会費を廃止。グーグル・エクスプレスで一定額以上の商品を注文した人なら、誰でも即日配達サービスを使えるようにした。また、ウォルマートと提携したことで、スマートスピーカーで注文できる商品を生鮮品にも広げ、全米4700カ所にあるウォルマートの店舗で受け取れるようにするなど、サービスを拡充している。

グーグルと手を組んでアマゾン対策を講じるウォルマートだが、2018年5~7月期決算は、売上高こそ前年同期比2%増になったものの、純利益で同23%の大幅減益になったように、まだアマゾンに対抗できるほどの存在になっていない。

なお、グーグル・エクスプレスを利用できる小売業者には、ウォルマートのほか、コストコ、ディスカウント百貨店チェーンであるターゲットなどアマゾン恐怖指数構成銘柄が名を連ねる。ちなみに、2018年8月現在、アマゾンが買収したホールフーズの商品もグーグル・エクスプレスで買い物が可能だ。

■ライバルが追撃するも目立つアマゾンの独り勝ち状態

アマゾンの恐怖におびえる小売各社は、アマゾンに対抗するために合従連衡を繰り返しながら生き残りを図っているが、現状では、アマゾンの「独り勝ち」の様相は強まる一方だ。

トランプ大統領は共和党の大統領候補として選挙中の2016年5月に、テレビ番組で「アマゾンは市場を独占し過ぎており、独禁法の大問題を抱えている」と警告していたが、大統領になってからも変わることなく、ツイッターなどを使って頻繁に批判を繰り広げている。

「アマゾンを巡る懸念は大統領選前から表明してきている。他の業者と違い、アマゾンは州・地方政府にほとんどもしくはまったく税金を払っていない」

「アマゾンは米郵便システムを配達少年のように使い(米国に多大な損失を引き起こし)、何千もの小売業者を破綻に追いやっている!」

いずれにしてもアメリカ大統領が名指しで批判を続けるほど、アメリカでは特別な存在であるということだ(「ワシントン・ポスト」嫌いで知られるトランプ大統領だが、アマゾンのベゾスCEOがワシントン・ポストを買収したことも気に障るのかもしれない)。

米調査会社イーマーケターによると、2018年の米国のネット通販に占めるアマゾンのシェアは、2017年の43.5%から、2018年には49.1%(2,582.2億ドル(約28兆4,020億円))へと拡大する見通しだ。リアル店舗も含む全米の総小売市場における市場シェアで見ても5%に達するとされる。

アマゾン以下は、2位のイーベイ(6.6%)、3位アップル(3.9%)となっており、グーグルと組んでECサイトに注力するウォルマートは3.7%で4位になっている。この数字を見てもわかるように、アマゾンは、アメリカのECサイトにおいて圧倒的な地位を確立していることがわかる。

ECサイトの成長は今後も続き、アメリカのコンサルティング会社FTIコンサルティングによると、2027年には1兆ドル(約110兆円)を超える見通しだという。2020年までは、EC市場の売上高は年平均12%で成長し、2020年以降の10年間は、若干ペースダウンして年平均9%になると予想されている。その間、アマゾンのアメリカEC市場における市場占有率はさらに高まり、2027年で53%になるという。ECサイトの規模が拡大したうえで、シェアを高めるアマゾンは、今後もますます影響力を増すとの見方が支配的になっている。

(つづく~「アマゾン・エフェクトの脅威vol.5 アマゾン進出の影響を受けない5つの要素とは【フィスコ 株・企業報】」~)

《HH》

提供:フィスコ

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