【仮想通貨2019】ビットコインの10万円割れはあるのか? <新春特別企画 第2弾>
山岡和雅(minkabu PRESS 外国為替担当編集長)
●相場急落で浮上した大きなリスク
2018年大きく値を落とした仮想通貨(暗号資産)。その代表格であるビットコイン は、史上最高値である235万517円(国内取引所平均価格)を2017年12月8日に付け、約1年後となる2018年12月15日に35万4350円と高値から200万円近く値を落とした。変動率では実に約84.9%の下落である。
なお、対ドルでは2017年12月18日に2万0089ドルを付け、2018年12月15日に3156ドルと約84.3%の下落を記録しており、為替相場の影響ではなく、ビットコイン自体が暴落していることが分かる。
フェアバリューの無い仮想通貨だけに、どこまでも上がることができ、どこまでも下がることができるとはいえ、派手な動きを見せた1年となった。
では、この仮想通貨市場、2019年はどうなるのか。
例えば、2017年12月からのように大きく値を崩した場合、どこまでも下がることは理屈上は可能。2018年12月に入って40万円前後での取引が続いているが、ここから200万円下がることは物理的に無理でも、絶対に率で85%下げないという理由はない。ちなみに40万円から85%下げると6万円となる。あり得ないといいたいところであるが、2016年秋ごろに推移していた水準である。
もちろん2016年秋時点とは、仮想通貨市場の規模も取引環境も違い、ここまでの下落は考えにくいことは事実。
ただ、一つ大きなリスクが意識される。それによってはもう一段の大きな崩れから10万円を割り込むような相場展開も十分にあり得る。
2018年に大きく値を落としたことで収益性を一気に悪化させたマイニング業者(マイナー)の問題である。
●市場の整備は急速に進む
マイニングコストは、電気料金、使っている機器、ハッシュレート状況などによって変化するため、一定ではないが、ここまでの下落を受けて損益分岐点を割り込むマイナーが増えている。
個人や中小のマイナーは採算が取れなければやめればいいが、大手のマイナーの場合、損益分岐点を割り込んだからといってすぐにやめるという選択肢を取ることは難しい。これは円高で損益分岐点を割り込んだ製造業者が、輸出をすぐにはやめないという行動と似ている。
将来的な不確実性とサンクコストが、マイニング維持の理由となる。
まずは、将来的な不確実性である。現時点で採算を割り込んでいるからといって、将来的にはレートの変化で採算が取れるようになる可能性が高い場合、マイニングを維持して、獲得した仮想通貨を保有続けるほうが得となる。
続いてサンクコストの問題である。ハッシュレートの増大などによって大手マイニング業者は大規模な設備投資を実施してきた。マイニングの収益悪化で機器の価格が暴落しており、ここでマイニングをやめてもこれまでにかかった費用(サンクコスト)は回収できない。ただ、マイニングを実施せずに設備や業態を維持するだけでもかなりのコストがかかる。維持するべきかやめるべきかの判断はかなり難しいものとなるが、将来的な不確実性を加味した場合、サンクコストが大きくなればなるほどそれを捨てるという判断は難しくなる。損を出しながらもマイニングを維持するという選択肢がとられる可能性が高い。
また、こうした大手マイナーに対する投資(クラウドマイニング)が広く行われており、その点でもマイニングをすぐにやめるという選択肢はとりにくい。
こうした状況で、マイニングを続けた業者は、膨らんだ赤字を補填し、業態を維持するために、保有する仮想通貨を売りに回らざるを得ないという状況が起こり得る。価格低下による業績悪化が、さらなる価格低下を呼ぶ資産の売却につながるという負の連鎖である。いったんこの連鎖が起こると、各業者を巻き込んで下落が止まらなくなる可能性がある。昨年11月に米国の大手マイニング業者ギガワットが破産申請を行ったように、仮想通貨業者をめぐる状況は深刻化しており、リスクとして強く意識しておきたい状況である。
一方で、逆に大きく上昇する可能性もあるのが仮想通貨である。中小マイナーの撤退を受けて上昇の一途を辿っていたハッシュレートが下落する動きを見せるなど、情勢はここにきて落ち着きつつある。
世界第2位の証券取引所である米NASDAQが、今年前半のビットコイン先物上場を検討するなど、市場整備も進んでいる。
日本でも大手証券会社の参入などで、一般の投資家が手を出しやすい状況は広がってきている。
フェアバリューがなく、需給によってのみ価格が決まる仮想通貨にとって、市場が急速に整備されてきている状況は、本来はかなりの追い風である。
今年ビットコインが10万円を割る状況も、100万円を超える状況も、どちらもあるのがこの市場の魅力である。
2019年の仮想通貨市場を、リスクとみるか、チャンスとみるか、各投資家の判断に委ねたい。
2018年12月27日 記
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株探ニュース