【緊急特集】新年大暴落「黙示録」 マーケット覆う悲観と見え始めた“啓示”

特集
2019年1月4日 19時00分

―大統領放言・米株急落・円急伸…災厄過ぎ去りし後―

年明け早々に東京株式市場は、いきなりリスクオフの大波に晒される格好となった。2019年大発会である4日の日経平均株価は大幅安でスタート、寄り後も漸次水準を切り下げる展開で2万円大台を下抜け、一時は770円あまり下落し1万9200円台まで売り込まれた。昨年12月25日の1000円を超える“クリスマス暴落”の残像が脳裏をよぎる場面。その時につけた昨年来安値1万9155円(終値ベース)が意識されるなか、結局、売り一巡後は下げ渋り、大引けは452円安の1万9561円で着地。新安値圏突入は何とか回避できたものの、19年相場は嵐の船出を思わせる波乱安の様相を呈した。

●震源地はまたしても米国、円高の逆風も強い

震源地はまたもや米国だ。前日にNYダウが660ドル安、ナスダック総合指数も200ポイント強の急落をみせ、市場関係者の間に緊張が走った。米アップルが18年10-12月期の売上高を従来予想から最大で約1割下振れとなる840億ドルにとどまるとの見方を示し、これを受けて同社株は終値で9.96%安と暴落した。これが他の半導体関連株などを巻き込み、米国株市場の下げを加速させた。またタイミングの悪いことに、12月のISM製造業景況感指数も前月比5.2ポイントの低下と著しく悪化、リーマン・ショック時の08年10月以来約10年ぶりのマイナス幅を記録し、ここまで一人勝ちを謳歌していた米国経済の変調を強く印象付け、主力銘柄の狼狽売りを誘った。

このネガティブサプライズは外国為替相場にも波及、米長期金利の急低下を背景にドル・円相場は一時1ドル=104円台まで急激な円高に振れ、大発会の東京株式市場は主力株を中心に売りの洗礼を浴びた。新春相場は期待とは裏腹に、日経平均が断続的に下値を模索するような悲観モードに陥る可能性も拭い切れない状況だ。

昨年は米中貿易摩擦の問題が株式市場にとって随時足かせとなった。これは、中国景気の減速懸念へと形を変えて投資家心理の悪化を助長したが、それでも米国経済が強いことで売りの歯車が一方向に回り続けることはなかった。しかし、ここにきて拠りどころとなっていた強靱な米景気に対する疑念が大きくなり始めている。いわば覇権争いで中国経済が疲弊した影響がブーメランのように米国に戻ってくる構図だ。これが中国での販売に依存するアップルの業績に色濃く反映された。もちろんアップルは一企業に過ぎないが、その売り上げ規模や時価総額を考慮すれば、マクロ指標と同じインパクトがある。

●「対中制裁」猶予期間に活路は見いだせるか

市場関係者の間では「米国経済の変調は米株安だけでなく、FRBの利上げシナリオに影響を与えることからドル安を誘発、円高による企業業績への影響も不可避となれば日本株にとっては厄介な環境といえる」(国内ネット証券アナリスト)という見方が強い。そうしたなか、前日にドル・円相場が104円台まで円高加速した背景について、大手為替ブローカーの執行役員は「年始で日本からの市場参加者が限られるなか、ドルの買い手が不在となりロスカットのドル売り・円買いが膨らんだようだ。米国の政府閉鎖が長期化しそうなことも、ドル売り要因となった」とする。一方で「例年1月は年間を通じての円高あるいは円安水準をつけることも多く、104円台は今年の円の高値となることもあり得る」という見解を示しており、イレギュラー的な円高であった可能性も示唆しているが、いずれにせよ今後のドル・円相場からは目が離せない状況となった。

元凶はやはり米中間の争いが一段と先鋭化していることだ。米国の対中制裁措置は猶予期間にあるとはいえ、2月末までに落としどころを見つけなければならない。「マーケットはどこかで(両国が)チキンレースの妥協点を見つけるとの思惑が強く、破局は織り込んでいない。しかし実際は、このまま氷山に突っ込むことも否定できない。むしろトランプ政権は対中関税引き上げに動く公算が大きいとみている」(前出の国内ネット証券アナリスト)という指摘もある。もしこれが現実化した場合は日経平均の攻防ラインは今視界に入っている1万9000円ではなく、1万8000円というケースも考えられる。

●アルゴ売買の反動を狙うのも戦略

ただし、足もとの下げは短期的にみれば明らかに行き過ぎで、これはCTAによる高速自動売買、いわゆるアルゴリズム取引の影響も大きい。東証1部の騰落レシオはきょう大引け時点で72%台と売られ過ぎゾーンにあるほか、企業のファンダメンタルズ面からのアプローチでも東証1部の予想PER12.6倍、PBR1.1倍は底値圏にあることを強く暗示している。

国内大手証券の株式部長は「(悲観ムードが強いが)目先はいいところに来ている感触。仮に1万9000円台割れがあってもそこは買い場だろう。中国の経済対策の効果は春節前後に顕在化する可能性があり、これが確認できるかどうかがカギを握る」とする。一方、米国経済についても過剰な弱気シナリオに異論を示す向きもある。準大手証券ストラテジストは「米国の景気を牽引しているのは個人消費だ。ここがしっかりしている限り、米国のリセッション懸念を俎上に載せるのは行き過ぎ」とし、「株式も為替もAI売買に翻弄され、(人間による)後付けの解釈が独り歩きしている。投資家はそれに惑わされず、各自が相場観を働かせてリバウンドを取るしたたかさが求められる」と前向き。いずれにしても、今の状況のまま下げ一辺倒が続くとはみていない。

●株は需給、投げが一巡した銘柄は強い

株の値動きは基本的に需給関係に左右される。その良い例が東証マザーズ市場だ。昨年12月下旬に個人投資家の追い証の投げが噴出したことで今は逆に上値が軽くなっている。きょうは下値模索の動きを強める東京市場を横目に東証マザーズ指数はプラスで引けた。日経ジャスダック平均も下げは小幅にとどまっており、両市場ともストップ高銘柄が続出している。

また、東証1部でも昨年の師走相場で悪役となった感のあるソフトバンク <9434> だが、公募株を手にした短期回転狙いの投資家はセカンダリーの初日もしくは2日目で売り切った感が強く、きょうも全体相場に逆行して上昇。気が付けば、上場2日目の12月20日からきょうまでの7営業日で下げた日はわずかに1日だけで6勝1敗、上値指向を鮮明としている。日経平均が452円安と波乱の船出となった19年の大発会だが、値下がり銘柄数は全体の7割弱、裏を返せば3割近い銘柄が上昇している。総悲観ムードには程遠い。要はストラテジーが肝要であり、「森より木を見る相場」に徹すれば、個人投資家は十分に対応可能な地合いであることを物語っている。

★元日~3日に、2019年「新春特集」を一挙、“26本”配信しました。併せてご覧ください。

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