為替週間見通し:底堅い展開か、米中貿易摩擦緩和への期待でドル買い継続も
【先週の概況】
■堅調推移、米中貿易摩擦緩和への期待広がる
先週のドル・円は堅調推移。米中貿易摩擦緩和への期待が広がり、リスク選好的なドル買い・円売りが優勢となった。米トランプ政権が中国に対する制裁関税の引き下げを検討していると報じられたことから、リスク選好的なドル買い・円売りが優勢となった。英国議会下院で欧州連合(EU)離脱協定案は大差で否決されたが、メイ政権は存続し、EU離脱の代替案が用意されるとの思惑が広がったことも、リスク選好的な円売りを促す一因となったようだ。
18日のニューヨーク外為市場でドル・円は、109円34銭から109円89銭まで上昇し、ドルの年初来高値を更新した。米中貿易協議で「中国側は対米黒字解消を提案する」との一部報道を受けて、米中貿易摩擦の早期解消への期待は一段と広がった。米貿易収支の大幅な改善も期待されたことでリスク選好的なドル買いが優勢となった。米国株高や米長期金利の上昇もドル買い材料となり、ドル・円は109円77銭でこの週の取引を終えた。ドル・円の取引レンジ:107円99銭-109円89銭。
【今週の見通し】
■底堅い展開か、米中貿易摩擦緩和への期待でドル買い継続も
今週のドル・円は底堅い展開か。米経済減速の思惑が広がっていることから追加利上げ観測は後退しているものの、英国の欧州連合(EU)離脱交渉の見通しは不透明であり、ドル買い・欧州通貨売りが再び広がった場合、ドル・円の取引にも影響を与えそうだ。米中貿易摩擦の早期緩和への期待が広がっていることもドル買い・円売りを促す一因となりそうだ。
今年に入って発表された米経済指標の低調な内容が目立つ。1月NY連銀製造業景気指数と12月生産者物価指数(PPI)はいずれも予想を下回った。フィラデルフィア製造業景気指数は堅調だったが、製造業全般の景況感は改善していないとみられている。インフレ関連の指標は弱含みとなっており、米連邦準備制度理事会(FRB)が利上げ休止を検討するとの観測が広がっている。
ただ、年始の水準からドル・円は緩やかな上昇基調が続く。ドル上昇の主要因は、米中対立の解消期待や英国の欧州連合(EU)からの離脱(ブレグジット)交渉を巡る不透明感によるポンド売り(米ドル買い)との見方が出ている。ブレグジットの進展などで楽観的な見方が広がった場合は、リスク選好的な円売りが強まるため、ドル・円相場が円高方向に振れる可能性は低下するとみられる。
また、1月24日開催の欧州中銀(ECB)で当局者からブレグジットの悪影響や域内経済の回復への悲観的な見解が提示された場合、ユーロ売り・米ドル買いが活発となりそうだ。トランプ政権の対中貿易関税引き下げへの思惑も、ドル買い・円売りを誘発する要因となる。米国企業の10-12月期決算の発表で好業績が続けば株高に振れ、ドルを押し上げる展開が予想される。
なお、トランプ大統領の一般教書演説の延期が議論されており、予算編成をめぐり政府と議会の対立は長期化している。政治不安を嫌って米国株式が下落する可能性は残されており、株価動向を注意深く観察していく必要はありそうだ。
【米・12月中古住宅販売件数】(22日発表予定)
22日発表の米12月中古住宅販売件数は527万戸と予想されており、11月実績の532万戸をやや下回る見込み。中古住宅販売件数が市場予想を下回った場合、景気減速の思惑が広がり、株安・ドル安につながる可能性がある。
【米・1月製造業PMI】(24日発表予定)
24日発表のマークイット米1月製造業PMIは12月実績の53.8をやや下回る可能性がある。景気判断の境目となる50を上回るものの、昨年10月以降は予想を下回るケースが目立つ。1月分が製造業の業況悪化を示す数字だった場合、ドル売り材料となる可能性がある。
予想レンジ:108円50銭-111円00銭
《FA》
提供:フィスコ