新貿易協定で食肉・外食はこう変わる、「TPP11」広がる思惑と関連株 <株探トップ特集>

特集
2019年1月31日 19時30分

―輸入食材拡大、ブランド食肉やワイン&チーズの関税引き下げで浮かびあがる有力銘柄とは―

日本と欧州連合(EU)の経済連携協定が2月1日に発効する。また、昨年12月30日には環太平洋経済連携協定(TPP)が発効されており、これらにより日本は世界のGDPの3割程度を占める貿易協定に参加することになる。更に、年内には東アジア地域包括的経済連携(RCEP)の合意が見込まれるほか、TPP交渉から外れた米国との2国間交渉も開始される。

こうした政府が広げる新たな自由貿易協定網に関して、その進捗状況が明確になるには時間がかかるが、2019年は新しい貿易の枠組みがスタートする年になる。これによって恩恵を受ける企業も多く、今後の業績などに反映されそうだ。

●TPP効果で牛肉輸入急拡大

TPP11に関して、食材の重点品目はコメ、麦、牛肉、豚肉、乳製品の5点とされるが、12月末の発効以降、早くも牛肉に関してその影響が表れ始めている。

TPP11参加11ヵ国のうち、批准した日程により、6ヵ国でのスタートとなったが、財務省によると日本を除く豪州、ニュージーランド、カナダ、メキシコ、シンガポールの5ヵ国からの1月上中旬(1~20日)の牛肉輸入量は3万4214トンとなり、前年1月(約2万100トン)を既に上回った。TPP発効により、牛肉の輸入関税は1月を境に38.5%から27.5%に引き下げられたが、輸入業者が発効を待って輸入量を増やした形だ。更に4月からは日本の会計年度では2年目になることで26.6%へ引き下げる予定であり、日豪EPAの冷蔵29.3%、冷凍26.9%を下回ることから、豪州産を中心に輸入量は更に増えることが予想されている。

また、米国との2国間協議も注目される。TPPから撤退した米国産牛肉の関税は現在38.5%だが、中国は米トランプ政権による対中制裁への対抗策として米国産の牛肉や大豆などに追加関税を発動。これを受けて米国内で牛肉の在庫が増加していることから、中国市場に代わり日本への輸出拡大を迫る可能性が高いといわれている。一部報道では米国の業界団体が、最低でもTPP11と同水準の関税適用とするように政府に求めたとも伝えられている。これを受けて、交渉の行方に注目が高まることが予想され、株式市場においても大きな話題となりそうだ。

●輸入食肉の増加に期待

こうした牛肉の輸入増加や、2国間協議への関心の高まりで注目されるのは、 食肉業界だ。

食肉業界ではハムやソーセージ 、ベーコンなどの加工食品や、食肉(精肉)の輸入量の増加が見込まれる。ハムやソーセージなどでは海外製品との競合が警戒されるが、一方で輸入食肉の増加が期待できる。

また、日欧EPAではイベリコ豚などのブランド食肉の関税引き下げもあり、高級ハムなどでは材料価格の低下も期待できる。これを受けてプリマハム <2281> や日本ハム <2282> 、伊藤ハム米久ホールディングス <2296> などは恩恵を受けそう。特に、「食肉の国内の取り扱いシェアの高い日ハムは数量効果もあり、業績への寄与も大きい」(中堅証券)とみられている。

●欧州産ワイン、チーズ価格も低下へ

一方、2月に発効する日欧EPAでは、日欧ともに工業製品や農業製品で関税が引き下げられる。注目は、ブランド力が高いワイン チーズ (最大輸入枠の枠内では無税)や今後関税が引き下げられる予定のパスタやトマトソースで、値下げやそれに伴う輸入量の拡大が見込まれている。

これを受けて、主力のイタリアンレストランで欧州産のチーズやワインなどの欧州産食材を多く使用し、原価低減や欧州食材へのブランド志向で需要刺激が期待できるサイゼリヤ <7581> は、業績への貢献が見込まれる。また、子会社がパスタ専門店を展開するドトール・日レスホールディングス <3087> 、ゼンショーホールディングス <7550> などでも欧州産高級食材を打ち出すことによる集客効果や原価低減効果が期待でき注目だ。

また、ワインやチーズの輸入量増加と国内での販売価格下落により国内での消費拡大が期待できることから、乳原料やチーズの輸入販売を手掛けるラクト・ジャパン <3139> もビジネスチャンスが拡大しそう。更に酒類販売店のやまや <9994> 、アサヒグループホールディングス <2502> 傘下の輸入ワイン販売を行うエノテカなども需要増の恩恵を受けそうだ。

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