日米マーケット、急落の危機は去ったか? <東条麻衣子の株式注意情報>

市況
2019年2月13日 20時00分

パウエルFRB議長のハト派発言や米中通商交渉の進展期待、好調な決算発表などを背景に、米国市場は今年に入り堅調に推移している。前週末のクドローNEC(米国家経済会議)委員長の発言により米中交渉の難航観測が浮上し若干調整する場面はあったものの、米国市場は依然として上昇基調を保っている。

日本株式市場も 日経平均株価は7日、8日と続落し25日移動平均線を下回るまで下落したが、その後は米株高を下支えに再び2万1000円台に迫っている(2月12日現在)。

これまでの流れは、概ね前回の当コラム「アップル・ショックと日本株の行方」で指摘した通り、特に米国株において行き過ぎた悲観が修正される形になったと言えるだろう。

■なぜ日経平均株価は上値が重いのか

現在、ND倍率(日経平均株価[円]÷ダウ平均株価[ドル]で算出される指数)は0.8倍台とほぼレンジ下限で推移している。日本株の出遅れが指摘される数値ではあるものの、売買代金の6割以上を海外投資家が占める日本株市場では、為替の影響を加味してより正確に海外投資家のパフォーマンスを表す「ドル建て日経平均株価」に着目する必要がある。

ドル建て日経平均を見ると、2018年10月2日の213.7063ドルから12月27日181.1733ドルまで32.533ドル下落。その後、1月31日190.8451ドルまで9.6718ドル戻し、約30%程度上昇している。

一方、NY市場は約48%戻しており、米国株と連動はみせているものの日経平均の出遅れが確認される。

では、その背景にあるものだが、中国の景気減速懸念に加え、今後の日米通商交渉で「為替条項」が火種となれば、ドル安・円高が打撃となり電子部品をはじめ主力輸出株の調整・低迷が想定される。買い主力である海外投資家は冷静にその行方を見極めようとしているのではないか。米国市場に比べ戻りが鈍く、調整時には下げ幅が大きくなりがちな背景にはこれがあるとみる。

米国市場が堅調を保ち続ければ、引き続き日本株の下支え要因になり得る。だが、上昇ピッチの速さも踏まえると米国株調整のリスクは否定できない。その調整が大きなものであれば、日本株式市場はより大きく下に振らされる可能性がある。

そこで見ていただきたいのが、米国市場の騰落レシオと過去10年間の月足だ。

■米国株式市場の騰落レシオ(25日)

(1)12月26日時点の騰落レシオ

NYダウ 68.161

ナスダック運輸株指数 64.644

ナスダック バイオテクノロジー株指数 72.516

ナスダック銀行株指数 66.734

ナスダック 100指数 78.173

ナスダック金融株指数 73.993

ナスダック 保険株指数 71.880

ナスダック通信株指数 66.042

(2)2月6日時点の騰落レシオ

NYダウ 149.498

ナスダック運輸株指数 131.530

ナスダック バイオテクノロジー株指数 126.775

ナスダック銀行株指数 138.310

ナスダック 100指数 153.808

ナスダック金融株指数 149.843

ナスダック 保険株指数 132.063

ナスダック通信株指数 139.290

騰落レシオ(25日)は12月26日時点では売られすぎを示す80%を下回り、60~70%台で推移していたが、2月6日時点では買われすぎとされる120%を上回っている。

■過去10年間のNYダウの月足

2月    3月

2009年  ●陰線  ○陽線

2010年  ○陽線  ○陽線

2011年  ○陽線  ○陽線

2012年  ○陽線  ○陽線

2013年  ○陽線  ○陽線

2014年  ○陽線  ○陽線

2015年  ○陽線  ●陰線

2016年  ○陽線  ○陽線

2017年  ○陽線  ●陰線 

2018年  ●陰線  ●陰線 

過去10年間のNYダウの月足を見ると、2月は8勝2敗で上昇、3月は7勝3敗で上昇と、傾向としては2月、3月の米国市場の強さが指摘できる。

2月の騰落レシオの水準の高さは気掛かりだが、相場の勢いが強い場合には120%を超えても上値を追うことは珍しくはなく、それだけ現在の基調は強いと捉えることもできる。

米国株式市場が大きな時間軸(月ごとの動き)では上昇しやすい時期であることや、反落からの回復力の強さなどを踏まえると、米国株は下押すことがあっても大きな亀裂を入れるには至らず、小さな調整で済むのではないか。

そうであるならば、日本の株式市場も調整があったとしても1月の安値に向かうことはなく、底値は限定的なものとなろう。

(2019年2月12日 記)

◆東条麻衣子

株式注意情報.jpを主宰。投資家に対し、株式投資に関する注意すべき情報や懸念材料を発信します。

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