近づく調整の足音、米中・日米交渉がトリガーとなるか <東条麻衣子の株式注意情報>
米中通商交渉の進展期待を背景とする米国株高に支えられて、 日経平均株価も堅調に推移してきたが、今回は少し警戒をした方が良いのではないかと考えられるデータをお伝えしようと思う。
日経平均株価が緩やかに上昇を続け、かつその間の日経VIX指数の平均が20以下であった期間は近年でみると、次の3期間があげられる。(日経VIX指数=日経平均ボラティリティー・インデックス:投資家が日経平均株価について、将来どれほどの変動を想定しているかを示す。数値が高いほど、相場が大きく変動すると予想していることを示す。20%以下が相場の先行きに対し楽観的とされる)
(1)2017年9月11日~2017年11月9日(日経VI平均15.10)
(2)2018年3月27日~2018年5月21日(日経VI平均18.21)
(3)2019年1月7日~ (先週末3月1日までの日経VI平均は19.60)
この間の営業日をみると、(1)41営業日、(2)37営業日、(3)3月1日までで39営業日、となっている。
このデータを見る限り、そろそろ上昇基調に一服感が出てきてもおかしくない日柄にあるといえよう。
また、マクロ面でも注目すべきイベントが続く。
今回の上昇の背景には、米中貿易交渉の進展期待がある。中国では5日から15日まで全人代が開催され、その後、米中首脳会談(3月27日で調整)が開かれる予定である。トランプ大統領は2日が期日であった対中関税引き上げを延期。中国に対し牛肉や豚肉などの農産品の関税を直ちに撤廃するよう求めていることを明らかにし、「これは私にとっても米国の偉大な農家にとっても大変に重要なことだ」と述べている。トランプのメッセージを受け止めて、中国が米国産農産品への関税を撤廃した場合、米国が対中関税引き下げに動く可能性も報じられている。株式市場は一定の妥協点は見いだせると先読みしているものと考えられる。
だが、中国が譲歩するのであれば、それはサプライチェーンの他国への移転が、自国経済に多大なダメージを与えていることへの危機感の高まりがあるに違いない。一度転がり始めた中国からの生産能力の移転・撤退の動きは容易には止められない。中国経済の失速リスクがあらためて意識されることになると、これまでの期待に基づく買いが逆転してもおかしくはない。
加えて、米中会談の後は日米通商交渉に焦点が移る。トランプ大統領は「アメリカにとって好ましいドルを求めている。強すぎるドルは求めていない」と前週末にドル高を牽制する発言を行っている。日米交渉では通貨安誘導を防止する「為替条項」の導入を求めてくるとみられることも日本株にはマイナス要因だろう。
データから見る日柄感やマクロ面の環境を踏まえると、調整局面が近づいている可能性があることには注意を要したい。
◆東条麻衣子
株式注意情報.jpを主宰。投資家に対し、株式投資に関する注意すべき情報や懸念材料を発信します。
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