米年内利下げに現実味?【フィスコ・コラム】

市況
2019年4月14日 9時00分

米連邦準備制度理事会(FRB)の今年の利上げはなしというのが市場コンセンサスですが、足元では利下げへの思惑が広がりつつあります。トランプ大統領がFRBに送り込もうとしている腹心のうち、スティーブン・ムーア氏とは一体どんな人物なのでしょうか。

4月5日に発表されたアメリカの3月雇用統計は、失業率が3.8%(予想3.8%)、非農業部門雇用者数は前月比+19.6万人(予想+17.5万人)、平均時給は前年比+3.2%(同+3.4%)となりました。賃金は予想を下回ったものの、雇用者数は上方修正され、失業率は半世紀ぶりの低水準を維持。全般的に好調といえますが、トランプ大統領の金融政策への言及でドル・円はむしろ売られ111円後半から値を下げています。

トランプ大統領は雇用統計を受け、FRBの対応によって景気が減速したと指摘。そのうえでFRBは利下げするべきとの考えを示しました。加えて、景気のテコ入れのため量的緩和再開の必要性も強調しています。同大統領は今後、FRB人事で、ピザ・チェーンの展開に成功した事業家のハーマン・ケイン、保守系経済エコノミストのスティーブン・ムーアの両氏を理事に充てる方向です。

このうち、ムーア氏は2016年の大統領選でトランプ陣営のシニア・エコノミック・アドバイザーを務め、経済復活のためのアメリカ・ファースト戦略の全容との触れ込みの「トランポノミクス」(共著)を上梓した人物。トランプ政策の責任者が満を持しての登場です。若くしてレーガン政権の民営化に関するリサーチを務め、その後もCATOやヘリテージ財団などのシンクタンクに長く在籍し、保守系の政策に携わるようになりました。

経済紙ウォール・ストリート・ジャーナルの編集幹部だった縁で、今も同紙に寄稿しているようです。金融政策を商品価格とリンクさせるべきというのが持論。経歴だけみると相当な経済政策通の印象を受けますが、エコノミストとしての評価はそれほど高くありません。有名なエピソードとして、2008年リーマン・ショック前にFRBが利下げサイクルに入っていた時に、ムーア氏は利上げをするべきと主張していました。

トランプ大統領がFRBに利下げ圧力を強める理由は何でしょうか。金融引き締めに乗り出せばリスク資産にマネーが行きわたらず株価の上昇が抑えられるため、それを回避したいためだと思われます。実際、FRBが3月19-20日に開催した連邦公開市場委員会(FOMC)でのハト派寄りの政策スタンスが議事要旨で確認されると、株価は上昇基調に振れました。市場では目先も株価は下げづらいとの見方が出ています。

もう1つは、FRBは中央銀行と位置づけられていますが、実は一部の資産家がアメリカのマネーを独占するための組織で、そうした既得権益を解体するのが狙いとの説もあります。それが真実なら、将来ハリウッド映画の題材になりそうです。アメリカの格付け会社は、トルコに対しては中銀の独立性を問題視して格下げの可能性に言及した経緯があります。トランプ政権の金融政策への介入をどのようにみているのでしょうか。

(吉池 威)

※あくまでも筆者の個人的な見解であり、弊社の見解を代表するものではありません。

《SK》

提供:フィスコ

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