嶌峰義清氏【相場観特別編・著名エコノミストに聞け! 年後半「令和相場」の行方を占う】(2) <相場観特集>

特集
2019年4月30日 8時00分

―“逆業績相場”の向かい風に世界の株式市場は果たして耐え得るか?―

「日経平均は年央高へ、日本の政策動向が不透明要因」

嶌峰義清氏(第一生命経済研究所 取締役 首席エコノミスト)

●中国の景気対策とFRBの政策転換が株高を促す

昨年末から年始にかけ膨らんだ世界景気への不安は、足もとでは薄らいでいる。この要因には、景気対策効果で中国経済が引き上げられるだろうという期待が膨らんだことや、米連邦準備制度理事会(FRB)が政策金利の引き上げ方針を見直したことなどがある。海外の景気評価は当面、それほどは変わらないとみられ、比較的好材料が多い状態と言えるだろう。

ただ、中国の景気対策の規模はリーマン・ショック時に比べれば大きくはない。中国の輸出環境に逆風が吹くなか、どこまで経済を持ち上げることができるかを確かめる必要がある。また、米国景気は緩やかに減速している。トランプ政権による減税効果が薄らぐなか、景気減速の度合いを見極めることが求められる。景気が悪化して利下げが必要となった場合、FRBが迅速に行動してくれるか、どうかには不透明部分がある。米中貿易摩擦に関しても、関税は引き上げられたままの状態にあり、この先、状況が悪化する可能性がなくなったわけではない。いまの株式市場は、景気がすごく悪くなるリスクを織り込んだ状態からの反発局面にあるという認識は必要だ。

●消費増税の実施はあるか、見送りなら株高要因に

最大の不透明要因は、日本の政治・政策動向だろう。消費増税は予定どおり今年10月から実施されるのか。もし、再度見送りが決断された場合、7月の参議院選挙は衆議院解散による衆参同時選挙となるのか。予定通り参議院選挙の単独で実施された場合でも、与党は勝利できるのか、などが不透明要因だ。

政策動向の予測は行っていないため、現時点では、消費増税は実施されることを予想の前提としている。消費増税が実施された場合、景気対策としてのポイント還元などで一時的に消費が喚起され景気の落ち込みが避けられる可能性はある。ただ、これは増税に伴う景気減速の「崖」を先延ばししただけに過ぎないものだ。消費増税は、景気への影響という点では、良い話ではない。

一方、もし消費増税の見送りが決断された場合、政府に対する信頼度の低下は避けられないものの、いまの株価は増税を前提に形成されているだけにプラスに働くだろう。

こうしたなか、日経平均株価は5月前後の年央に2万2500~2万3000円の水準で今年の高値をつけるとみている。安値は8~9月頃の2万~2万1000円前後を予想する。夏場から秋口にかけての下落を経て、年末にかけて値を戻すだろう。来年に向けて米国は大統領選挙を意識したうえでの景気対策が期待されるほか、中国は消費回復も見込めることが株価の下値を支える要因となる。

為替は、ほぼ横ばい圏での値動きを予想している。想定レンジは1ドル=110~112円。大きく円安に動くこともないが、急激な円高となる地合いでもないとみている。(談)

<プロフィール>(しまみね・よしきよ)

1990年3月青山学院大学経済学部卒。1990年4月岡三証券入社。岡三経済研究所を経て、1992年日本総合研究所入社。日本経済研究センターへ1年間出向を経た後、1998年5月第一生命経済研究所入社。米国経済担当、日本経済担当などを経て、現在は金融市場全般を担当。2011年4月より首席エコノミスト。2018年6月より現職へ。

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