国内株式市場見通し:アク抜け感台頭で戻りを試す場面も
■日経平均は今年初の5日続落
前週の日経平均は大幅下落となった。米中貿易摩擦の再燃と為替の円高から、週間では5週ぶりの反落となった。米国時間5日にトランプ米大統領が中国からの輸入品2000億ドル相当への関税引き上げを10日から実施すると表明し、米中通商協議への先行き懸念が再燃した。10連休明け7日の日経平均は、6日のNYダウが一時470ドル超の下げから、66ドル安まで下げ幅を縮めて終了したことから小幅安で寄り付いた。しかし、その後は下げ幅を広げる展開となり、大引けでは335.01円安の21923.72円と4月12日以来となる22000円割れに沈んだ。こうした中、ビジョンファンドの上場検討が伝えられたソフトバンクG<9984>の逆行高が話題となった。ライトハイザー米通商代表部(USTR)代表が、対中関税引き上げを10日に実施すると明らかにし、7日のNYダウは一時648ドル安と急落、大引けでも473.39ドル安と続落した。これを受けた8日の東京市場は、円相場が1ドル=109円台への円高進行も嫌気してリスク回避の売りが先行した。トヨタ<7203>が決算を発表し一時的に買われる場面もあったが相場全体を押し上げるには至らなかった。8日NYダウは9日からの米中高官協議をにらんで3日ぶりに小反発したものの、9日の日経平均は4日続落となった。米中協議の行方を見極めるムードの中、円高が懸念されて輸出関連株の下げが目立つ展開となった。米中貿易協議を前に警戒感が高まった9日のNYダウは一時449.94ドル安となったものの、トランプ大統領が習近平中国国家主席から書簡を受け取りなどから週内に合意する期待感か台頭し、前日比138ドル安まで下げ幅を縮めた。10日の日経平均は9日までの4日続落で905円強の下げ幅を見ており、前場は買い戻しと短期リバウンド狙いの買いが先行した。しかし、米国の対中追加関税引き上げが予定通り発効されると、後場寄り後に日経平均は先物主導でマイナス圏に転じ、昨年12月以来の5日続落となった。一方、10日のNYダウは前日比114.01ドル高の25942.37ドルと上昇した。トランプ大統領が貿易摩擦問題の解決を急がない姿勢を表明し、売りが先行して始まったものの、ムニューシン米財務長官が米中高官協議の進展を示唆し、下げ幅を縮小して上昇に転じた。
■日経平均は週初リバウンドか
今週の日経平均は戻りを試した後、落ち着きどころを探る軟調な展開となりそうだ。日経平均はゴールデンウイークをまたいだ10日にかけての5日続落で、この間の下げ幅は962円強に達しており、急落後の反発を試す場面がありそうだ。米中貿易摩擦の問題は米国側の2000億ドル相当の対中関税引き上げが10日午前0時1分(日本時間同午後1時1分)に発効されたことで新たな局面に入ってきた。トランプ大統領が貿易摩擦問題の解決を急がない姿勢を表明したことは懸念材料だが、10日の上海総合指数は3日ぶりに3%上昇し、NYダウも反発、CME日経先物も大証比180円高の21490円となっており、週初は短期的なアク抜け感を誘う展開となる可能性がある。米国市場と為替の動向を睨みつつ、日経平均はリバウンドのタイミングを探る展開が予想される。実際、昨年7月から9月の米国による対中関税引き上げ実施後、米中ともに株価はしばらく上昇した経緯もある。
■経済指標に波乱要素、個別物色人気が継続
ただし、米中貿易摩擦の長期化は、今年の株価回復のよりどころである年後半の景気回復シナリオが揺らぐことになる。上値を買い上がる材料は乏しく厳しい地合いが想定される。こうした状況下で発表される経済指標に、相場は過剰に反応する懸念もある。15日に中国4月鉱工業生産、米4月小売売上高、ユーロ圏1-3月期GDPなど米中欧の主要経済指標の発表が集中する。短期的な戻りをみた後は、神経質な展開を強いられることになるだろう。TOPIXはすでに3月8日安値1570.39ポイントを割り込み、2月8日の安値フシ1536.65ポイントに接近している。なお、3月期企業を中心とする決算発表は15日でほぼ終了する。13日はシチズン<7762>、東芝<6502>、14日は日産自動車<7201>、リクルートHD<6098>、15日は日本郵政<6178>、KDDI<9433>が発表の予定にある。米国では、15日にシスコシステム、16日にエヌビディアとウォルマートが決算発表を予定している。全般相場が乱高下した10日の東京市場でも、一時を含めて13銘柄がストップ高となった。富士ソフト<9749>やケーズホールディングス<8282>など、そのほとんどが決算発表を手掛かりとしており、物色的には業績を手掛かりとした個別人気が継続することが見込まれる。
■4月工作機械受注、中国4月鉱工業生産、米4月小売売上高
今週の主な国内経済関連スケジュールは、13日に3月景気動向指数、14日に3月国際収支、15日に4月工作機械受注、16日に4月企業物価指数、17日に3月第3次産業活動指数が発表される見込み。一方、米国など海外経済関連スケジュールは、14日に米4月輸出入物価指数、15日に中国4月鉱工業生産、中国4月小売売上高、米4月小売売上高、ユーロ圏1-3月期四半期域内総生産(GDP、改定値)、16日に米4月住宅着工件数、ユーロ圏4月消費者物価指数などがそれぞれ予定されている。
《FA》
提供:フィスコ