総会シーズン接近、動き出す「アクティビスト」その深層に迫る <株探トップ特集>

特集
2019年5月30日 19時30分

―旧村上ファンド系が活発化、“議決権争奪戦”に向けうごめく思惑とは―

30日の日経平均株価は前日比60円安の2万942円と続落。終値ベースで2ヵ月ぶりに2万1000円台を割り込んだ。米中貿易摩擦の行方が注視されるなか、相場の軟調地合いが続いている。そんななか、6月下旬にピークを迎える株主総会に市場の関心が高まっている。低迷する日本株市場と裏腹にアクティビストと呼ばれる「物言う株主」の動きは活発化している。来月の株主総会でも注目を集めるアクティビストの動向を探った。

●シャンシャン総会は「今は昔」、6月27日頃ピークに

3月決算企業の今年の株主総会は6月27日前後がピークになる見通しだ。市場では、経営トップ人事を巡り混乱が続くLIXILグループ <5938> の株主総会が高い関心を集めているほか、大型買収を実施した武田薬品工業 <4502> に対しては、損失発生時に経営陣の報酬の減額や返還を求める条項を導入することを要求する株主提案があったことが判明している。

かつて日本企業の株主総会は「シャンシャン総会」と呼ばれ無風で終わることが慣例化していた。しかし、近年は企業統治(コーポレートガバナンス)改革が進み機関投資家も会社提案に対して反対票を投じることも増え、緊張感あるものへと変わりつつある。そんななか、関心を集めているのが「物言う株主」と呼ばれるアクティビストの動向だ。

●アクティビストの株主還元要求で浅沼組、マクセルHDは急騰

足もとではアクティビストによる増配や自社株買いなどの株主還元要求を背景に、株価が急騰した銘柄が目に付く。例えば、浅沼組 <1852> は今月10日、20年3月期の配当を前期比55円増の208円とすることを発表。発表直後の配当利回りは9%近くとなったことから株価は急騰した。同社に対しては旧村上ファンド出身の丸木代表が率いるストラテジックキャピタルが大株主となっており、配当性向を100%とすることなどの株主要求を掲げている。

またマクセルホールディングス <6810> は先月26日、第1四半期に250円の特別配当を実施することを発表。20年3月期の年間配当は286円(前期は36円)とすることを明らかにした。これを受け、株価は10連休明け後の今月7日に急伸した。同社には旧村上ファンド系の南青山不動産や米系のタイヨウ・ファンド・マネッジメントが大株主として顔を出している。

●政策保有売却で活躍余地膨らむ、JR九州の株主総会に関心

日本株は上値の重い状態が続き、外国人投資家の売り越しが続いている。ただ、低迷する日本株に対してアクティビストは積極的な買いを入れている。この要因には、コーポレートガバナンスに対する意識が強まり、日本企業の既存株主も株主価値を高める提案に対しては、反対を唱えにくくなったことがある。更に、今年から政策保有株の定量的な保有効果の検証などが義務付けられたことから、政策保有株の売却が促進され株式の買い集めがしやすくなっている点もアクティビストの活動活発化の要因として挙げられている。

今年の株主総会に向け大手企業に対する株主提案で関心を集めているのは、JR九州 <9142> の大株主である米投資ファンド、ファーツリー・パートナーズの動向だ。同ファンドはJR九州に対し自社株買いなどを提案しており、6月の株主総会が委任状争奪戦となるかが注目されている。また、東芝 <6502> [東証2]にはキングストリートキャピタルなど物言う株主が結集しているほか、ソニー <6758> には米投資ファンドのサードポイントが再度、大株主となったことが判明している。

●レオパレス21やヨロズ、ジャパンディスプレイ、そーせいなど

中堅や中小型株の買い集めで活発な動きが目立つのは旧村上ファンド系のファンドだ。同ファンド系といわれる「レノ」はアパートの施工不良問題に揺れるレオパレス21 <8848> の大株主に5月中旬に浮上し、その後、猛烈な勢いで買い増しを進め話題を集めているほか、廣済堂 <7868> に対する株式公開買い付け(TOB)でも注目された。旧村上ファンド系の「レノ」や「南青山不動産」「オフィスサポート」は、ヨロズ <7294> や日本郵船 <9101> 、エクセル <7591> 、フージャースホールディングス <3284> 、東芝機械 <6104> などの大株主になっている。

また、東芝の大株主となり名を馳せた「エフィッシモ・キャピタル・マネージメント」は川崎汽船 <9107> やヤマダ電機 <9831> などのほかジャパンディスプレイ <6740> やライフネット生命保険 <7157> [東証M]、サンケン電気 <6707> などの大株主となっている。

更に、前出のストラテジックキャピタルは浅沼組のほか、極東貿易 <8093> 、世紀東急工業 <1898> に対して来月の株主総会での株主提案を行っている。加えてタイヨウ・ファンドが大株主となっているそーせいグループ <4565> [東証M]やアニコム ホールディングス <8715> など、英シルチェスター・インターナショナルが大株主となっているサンゲツ <8130> や日本触媒 <4114> の動向なども注目されている。

■「物言う株主」の主な保有株式

●旧村上ファンド系(「レノ」「南青山不動産」「オフィスサポート」など)

レオパレス21 <8848>

廣済堂 <7868>

ヨロズ <7294>

日本郵船 <9101>

エクセル <7591>

フージャースホールディングス <3284>

東芝機械 <6104>

セントラル硝子 <4044>

中国塗料 <4617>

三信電気 <8150>

新光商事 <8141>

マクセルホールディングス <6810>

エフィッシモ・キャピタル・マネージメント

川崎汽船 <9107>

ヤマダ電機 <9831>

ライフネット生命保険 <7157> [東証M]

フタバ産業 <7241>

UACJ <5741>

デクセリアルズ <4980>

ジャパンディスプレイ <6740>

サンケン電気 <6707>

第一生命ホールディングス <8750>

リコー <7752>

日産車体 <7222>

大平洋金属 <5541>

ストラテジックキャピタル

浅沼組 <1852>

図書印刷 <7913>

極東貿易 <8093>

世紀東急工業 <1898>

タイヨウ・ファンド・マネッジメント

そーせいグループ <4565> [東証M]

アニコム ホールディングス <8715>

KHネオケム <4189>

オープンハウス <3288>

ジンズ <3046>

NISSHA <7915>

アルバック <6728>

シルチェスター・インターナショナル

サンゲツ <8130>

奥村組 <1833>

日本触媒 <4114>

ニッパツ <5991>

イビデン <4062>

住友大阪セメント <5232>

三菱マテリアル <5711>

ウシオ電機 <6925>

フジ・メディア・ホールディングス <4676>

●ブランデス・インベストメント

小森コーポレーション <6349>

前澤給装工業 <6485>

タチエス <7239>

※大量保有報告書に提出した株主と有価証券報告書に掲載される株主名が同一株主にもかかわらず異なる場合があります。有価証券報告書では実質的な株主が信託した資産管理会社や信託銀行などの名義で掲載されるためです。

株探ニュース

人気ニュースアクセスランキング 直近8時間

特集記事

株探からのお知らせ

過去のお知らせを見る
米国株へ
株探プレミアムとは
PC版を表示
【当サイトで提供する情報について】
当サイト「株探(かぶたん)」で提供する情報は投資勧誘または投資に関する助言をすることを目的としておりません。
投資の決定は、ご自身の判断でなされますようお願いいたします。
当サイトにおけるデータは、東京証券取引所、大阪取引所、名古屋証券取引所、JPX総研、ジャパンネクスト証券、China Investment Information Services、CME Group Inc. 等からの情報の提供を受けております。
日経平均株価の著作権は日本経済新聞社に帰属します。
株探に掲載される株価チャートは、その銘柄の過去の株価推移を確認する用途で掲載しているものであり、その銘柄の将来の価値の動向を示唆あるいは保証するものではなく、また、売買を推奨するものではありません。
決算を扱う記事における「サプライズ決算」とは、決算情報として注目に値するかという観点から、発表された決算のサプライズ度(当該会社の本決算か各四半期であるか、業績予想の修正か配当予想の修正であるか、及びそこで発表された決算結果ならびに当該会社が過去に公表した業績予想・配当予想との比較及び過去の決算との比較を数値化し判定)が高い銘柄であり、また「サプライズ順」はサプライズ度に基づいた順番で決算情報を掲載しているものであり、記事に掲載されている各銘柄の将来の価値の動向を示唆あるいは保証するものではなく、また、売買を推奨するものではありません。
(C) MINKABU THE INFONOID, Inc.