為替週間見通し:もみ合いか、米中貿易摩擦長期化で円買い継続も

通貨
2019年6月1日 15時03分

【先週の概況】

■米中対立長期化への懸念などで円買い強まる

先週のドル・円は弱含み。トランプ米大統領が「中国との貿易協定合意の準備はない」と発言する一方、中国政府はレア・アース(希土類)の対米輸出規制を真剣に検討するとの観測が浮上し、米中貿易摩擦の長期化に対する警戒感が再び高まった。米中対立の長期化は世界経済の成長鈍化につながることから、米長期金利は低下し、リスク回避的なドル売り・円買いが活発となった。クラリダ米連邦準備制度理事会(FRB)副議長が利下げを含めた金融緩和を検討する考えを示唆したこともドル売り材料となった。

5月31日のニューヨーク外為市場でドル・円は、108円91銭から一時108円28銭まで下落した。トランプ米政権が不法移民の流入を理由に、メキシコからの輸入品に対し5%関税を導入すると警告したことを受けて、米国経済の成長が悪化するとの懸念が一層強まった。米利下げ観測も強まり、米国債利回りの低下に伴うドル売りが観測された。ドル・円の上値は一段と重くなり、108円29銭でこの週の取引を終えた。ドル・円の取引レンジ:108円28銭-109円93銭。

【今週の見通し】

■もみ合いか、米中貿易摩擦長期化で円買い継続も

今週のドル・円はもみ合いか。5月米雇用統計など重要経済指標は良好な内容となっても、米連邦準備制度理事会(FRB)による利下げ観測は払しょくされず、リスク選好的なドル買いがただちに広がることは期待できない。5月ISM製造業景況指数は前回実績を上回る可能性があり、5月米雇用統計では失業率が半世紀ぶりの低水準(3.6%)を維持すると予想されているものの、米中貿易摩擦の深刻化・長期化を警戒してリスク回避の円買いは継続する可能性があるため、ドルの上値は重いままとなりそうだ。

中国政府がレア・アース(希土類)の輸出規制に言及し、米中の対立はより深まるとの見方からリスク回避の円買いが強まりやすい。欧州では、イタリアの財政規律をめぐり反欧州連合(EU)路線が強まり、ユーロ体制を維持すること難しくなるとの懸念が広がっている。英国の政治不安も払拭されていないことから、ユーロ、英ポンドに対しては安全逃避のドル買いが見込まれる。しかしながら、ドル・円の取引については、米長期金利の低下や早期利下げの思惑などでリスク回避の円買いがやや優勢となる可能性がある。

【米・5月ISM製造業景況指数】(6月3日発表予定)

6月3日発表予定の米5月ISM製造業景況指数は53.0と、4月の52.8をやや上回る見通し。4月耐久財受注などは低調となったが、先行指標とされる5月NY連銀製造業指数は改善されており、製造業の回復を見極める材料に。

【米・5月雇用統計】(6月7日発表予定)

6月7日発表予定の5月雇用統計は、失業率3.6%(前回3.6%)、非農業部門雇用者数は前月比+19.0万人(同+26.3万人)、平均時給は前年比+3.2%(同+3.2%)と見込まれる。米国の雇用情勢は引き続き良好であり、市場予想と一致すれば株価の押し上げ要因となる可能性がある。

予想レンジ:107円00銭-110円00銭

《FA》

提供:フィスコ

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