動兆!サイバー防衛関連、亜空間を翔ける「究極の上値期待株」6連弾 <株探トップ特集>

特集
2019年6月8日 19時30分

―IoT・5G時代の光と影、世界で高まるサイバー攻撃の脅威と戦う銘柄群を追え―

近年、 サイバーセキュリティの重要性が声高に叫ばれている。我々の日常はスマートフォンやパソコンなどを通じネット空間と常に接触している。そうしたなかでフィッシング詐欺やマルウェア被害など、サイバー犯罪による被害は増勢の一途だ。サイバー犯罪の検挙件数も増加に歯止めがかからず、警察庁によれば2018年は9040件に達し過去最高を更新している。

また、企業や自治体などに直接メールを送信するなどの標的型攻撃メールは警察が連携事業者などから報告を受けた分だけで6740件と前年比12%増加している。しかも、これについて業界関係者からは「数字としては実態とカイ離している印象を受ける。攻撃を受けていても、それに気づいていない法人や個人を含めれば、今見えている被害は氷山の一角に過ぎない可能性もある」(国内IT系大手企業)という声が聞かれる。大手セキュリティソフト会社の調べでは、17年の段階で国内法人組織の実に4割以上が、従業員や顧客などに関するランサムウェア(身代金要求型マルウェア)や情報漏洩といったセキュリティインシデント(保安上の脅威となる出来事や案件)に起因する重大被害に遭遇しているとされ、看過できない状況に晒されている。

●サイバー攻撃は国際戦争の様相に

更に国家安全保障の観点から、政府レベルでもサイバー攻撃への対応は喫緊の課題といえる。2016年の米大統領選ではロシアがサイバー攻撃を仕掛けた可能性が濃厚とみられているが、その後は中国がロシアに倣う形で近隣諸国への「サイバー政治介入」の動きを強めていることなどが折に触れ報じられている。昨年11月の米中間選挙でも16年と同様の動きがあり、米国のサイバー防衛部隊がロシア側の攻撃を事前に察知して対処、事なきを得たことが米メディアを通じて伝えられた。いずれにせよ、国家を背景としたサイバー攻撃は年々先鋭化し、まさに“バーチャル空間における国際戦争”の様相を呈している。

世界的に各国が競って商用化前倒しに動く次世代通信規格「5G」も、その普及局面に際し、セキュリティを強化しなければならない必要性に迫られている。この分野を巡っては米中が激しく牽制し合っている。米国のファーウェイ排除の動きはその最たるものだ。5G時代に同時進行するIoT社会では、ネットにつながれた不特定多数の端末が情報漏洩やランサムウェアなどのサイバー攻撃を受ければ、その被害は想定を超える甚大なものとなる可能性がある。鉄の塊である自動車も例外ではない。コネクテッドカーなどは5Gがベースとなっており、サイバーテロはそのまま3次元空間での脅威となる。

●サプライチェーン・リスクをどう解決するか

日本では20年の東京五輪・パラリンピック まであと14ヵ月弱に迫っているが、組織委員会のコンピューターシステムなどをターゲットとしたサイバー攻撃にどう対応するかは、いうまでもなく最優先しなければならない重要課題といってよい。内閣官房に設置されている「内閣サイバーセキュリティセンター(NISC)」の予算強化に加え、IoTの安全な利用環境構築に資金を投下することを骨子に19年度サイバーセキュリティ予算は前年度比37%増の853億円と大幅に積み増しされた。

また、東京五輪・パラリンピックは一つのメルクマールに過ぎず、サイバー防衛は中長期的にもしっかりとしたノウハウやメカニズムを確立して対応にあたることが必須だ。5月中旬には自民党のサイバーセキュリティ対策本部が、サイバー防衛の関連施策を一元的に担当する「サイバーセキュリティ庁」の新設を柱とする提言を安倍首相に提出、2025年の創設を目指す方向で準備を進めていく構えにある。

サイバーセキュリティ予算は年々増加の一途にあるが、来年度以降は更に上積みされていく可能性が高い。脆弱な中小企業などをターゲットにサイバー攻撃が仕掛けられ、通信回線や端末などから情報が漏洩したり、システム停止を引き起こすいわゆるサプライチェーン・リスクについて、政府は20年度予算で関連費用を拡充する方針を決めている。ここでは通信機器などに不正なプログラムが入り込んでいないかを検証する技術に注力する方針を明確に示している。

●FFRIが象徴株として買われるワケ

株式市場では、こうした背景を受けてサイバーセキュリティ関連株にテーマ買いの動きが顕在化しつつある。その象徴として存在感を浮き彫りにしているのがFFRI <3692> [東証M]だ。同社はヒューリスティックエンジンを使った未知のウイルスを検知する技術で優位性を持ち、基礎技術から自社開発を行っている点でも同業他社と一線を画している。

同社が展開するソフトで標的型攻撃に対応する「FFRI yarai(ヤライ)」は中央省庁や官公庁、グローバル企業にも数多く納入実績があり、高い評価を得ている。同社の未知のウイルスに対する強みはとは何か。これについて会社側は「従来のセキュリティソフトはパターンマッチングで対応するため、“新しい型”が出てきた時にそのウイルスを駆逐することが難しくなる。それに対し、当社の技術はマルウェアの構造やプログラムの動きに焦点を合わせた対策ソフトであるため、新型ウイルスにも対応できる」としている。この技術力の高さを世間に知らしめたのが、5月15日に発表したNEC <6701> との協業発表である。

「FFRI yarai」を擁し、人材面でもトップレベルのセキュリティエンジニアが多数在籍しているFFRIと連携することで、中小企業におけるサイバー防衛、サプライチェーン・リスク解消という大命題を実現させる、というのがNECの狙いである。そしてこの両社連携の意味を理解し、大きく評価したのは、紛れもなくFFRIの株価そのものだった。発表後の5月16日に同社株は700円高はストップ高となる3950円に買われ、その後もこの日に開けたマドを埋めにいくような素振りさえ見せず、下値を切り上げ続けた。時価4500円近辺の株価は、発表直前の水準(15日終値3250円)から4割近くも上昇している。

とはいえFFRIの株価は15年7月につけた最高値1万8500円からみれば、依然として4分の1、山の麓(ふもと)に過ぎない。上値の伸びしろは極めて大きい。

●ここから羽ばたくサイバー防衛関連5銘柄

そして今後、このFFRIに続く変身銘柄が、サイバーセキュリティ関連に位置付けられる銘柄の中から数多く輩出されてくる可能性は高い。今回は、国を挙げて取り組まねばならない「サイバー防衛」という喫緊のテーマに絡む銘柄群のなかから上値が大きく期待される5銘柄を選りすぐった。

【ソリトンは4ケタ大台乗せから真骨頂発揮へ】

ソリトンシステムズ <3040> は上値期待が抜群といえる。目先底入れから動きを一変させ1100円台まで上値を伸ばしてきたが、あくまで大出直り相場の初動であり、押し目買いで勝機は十分。中期的にみて真骨頂を発揮するのはこれからだ。

同社はセキュリティ対策ソフトと、認証システム開発などを主軸にITセキュリティ部門が売り上げの9割以上を占める。高い技術力が売り物で、官公庁・民間ともにセキュリティ需要が高まるなか、自社開発製品を強みに順調に需要開拓が進んでいる状況だ。19年12月期業績は営業利益段階で15億円と前期比2ケタ近い伸びが見込まれている。

17年3月から「サイバーセキュリティ総合支援サービス」をスタートさせているが、新メニューを随時加え、顧客ニーズの取り込みを図っている。直近5月下旬には同サービスにサイバーリスク診断サービスなど新たに8種類を追加提供することを発表した。

更に、同社は内閣サイバーセキュリティセンターの「サイバーセキュリティ協議会」の構成員でもあることもポイントだ。同協議会はサイバーセキュリティに関する施策の推進に関し必要な協議を行うもので、国内におけるサイバー攻撃の脅威に対応していくことを骨子としている。

【No.1は光通信との連携評価、大相場の匂いも】

No.1 <3562> [JQ]は5月30日にストップ高で1070円まで買われた後、反動安に見舞われたが75日移動平均線近辺でしっかりと買いが入り戻り足に転じている。値動きは荒いが、潜在的成長力を考慮すればPER11倍台の時価近辺はかなり割安感が強い。

同社はOA機器やサーバーなどを販売するほか、自社企画の情報セキュリティ商品を取り扱っている。利益率の高い情報セキュリティ商品の販売が順調で、業績に大きく貢献、19年2月期は営業利益段階で前期比19%増の3億3000万円と2割近い伸びを達成、20年2月期も6%増の3億5000万円を計画するが上振れする公算は小さくない。オフィスのネットワーク環境をガードする「WALLIOR壁投資」などの有力商品が注目される。

ストップ高に買われた背景は、同社子会社のNo.1パートナーについて、保有株式の35%を光通信 <9435> に譲渡するとともに、光通信とWebマーケティングによる各種情報通信端末の販売事業に関する業務提携を行うと発表したこと。光通信の強みとするストック型ビジネスのノウハウを取り込むことが、No.1の業容拡大につながるものとして、株価を押し上げる格好となった。両社提携のシナジーは、No.1の今期以降の業績成長力に反映され、株価的にも大相場の匂いを漂わせている。

【SIGはサイバー防衛の申し子で買い好機】

SIG <4386> [東証2]は底値買い好機にある。株価は3月19日に年初来高値886円をつけた後、下値を模索する動きにあったが、600円台前半をターニングポイントに再浮上してきた。昨年6月に鳴り物入りでジャスダック市場に上場したが、公開価格2000円に対し、2.3倍の4665円の初値(株式分割後修正値で1555円)をつけた実績は光る。時価はその1555円から半値以下にディスカウントされた水準だが、同社の成長期待値はむしろ高まっている。今年6月から東証2部市場に指定替えとなり、これを契機に逆襲高相場に向かう公算大だ。

官公庁向けで高いシェアを持つシステム開発会社でハイレベルのデジタル人材を育成しており、セキュリティ事業に傾注する姿勢をみせている。目を見張る豊富なラインアップでまさにサイバー防衛の申し子といえるような会社だ。ビッグデータやクラウドの普及加速に伴うシステムの複雑化がセキュリティリスクを高めるなか、人材サービス、セキュリティソフトともに充実しており、保守サポート拡充に積極的に取り組んでいる。

会社側では「人材を派遣して行うセキュリティサービスでは脆弱性診断や、ハイスキルな専門人材で固めたレッドチームによる診断サービスに引き合いが強い。また、ソフト製品では指紋認証で米セキュジェン社の商品を取り扱っており、官公庁向けなどで高評価を得ている」としている。また、20年3月期は営業利益段階で4%減と減益見通しだが、「これは下期に世界的な不確実性の高まりを考慮した保守的な予想」(会社側)としており、一転増益で着地する可能性も十分にある。来期以降は利益成長が本格化しそうだ。

【ラックはアジア全域で新たな活躍の舞台】

ラック <3857> [JQ]は年初からじりじりと水準を切り上げているが、元来ハイボラティリティな銘柄であり、どこかでギアチェンジして2000円台に向けて駆け上がる場面がみられそうだ。情報セキュリティ分野に高い実績を持つシステムインテグレーターで、セキュリティ診断やネットワーク監視などで業界を先駆している。セキュリティ診断サービスはWebアプリケーション診断やスマホ向けアプリケーション診断が好調で業績に寄与している。

KDDI <9433> を大株主に擁し展開力に厚みを増している。M&Aによる業容拡大にも余念がない。最近では3月にNECグループのシンガポール現地法人NECアジア・パシフィックと、アジア太平洋地域のサイバーセキュリティ分野で協業することで合意しており、中堅・中小企業を対象とした高度なセキュリティ監視サービスの提供を今年の年末までに始める予定で注目される。

20年3月期売上高は14%増収の440億円、営業利益は6%増益の25億円を見込み、年間配当は前期実績比2円増配の24円を計画するなど株主還元にも前向きだ。今後もトップラインの安定した伸びが見込まれるなか、ビッグデータ・アナリティクスなど基盤システム構築で培った強みを生かし、新たなサービス開発にも期待が大きい。

【セキュアヴェはネットワーク監視で時流に乗る】

セキュアヴェイル <3042> [JQG]は800~900円を中心とするボックス圏往来が続いていたが、早晩このゾーンから脱却して4ケタ大台を目指す展開が予想される。昨年7月には1617円の高値をつけているが。同年5月初旬の時点では現在と同じ800円台に位置していた。いったん火がつけば、その上げ足の速さは投資資金の食指を動かすのに十分な魅力を携えている。

同社はネットワーク監視サービスやログ解析サービスのスペシャリストであり、24時間有人対応監視などで優位性を有する。次世代を担うワンストップ運用監視サービス「ネットステア」を武器に企業のサイバー防衛に対するニーズを取り込むほか、クラウドサービス機能を充実させた次期基幹システムの開発にも傾注している。ハードを一括納入して完結するのではなく、継続的に収益貢献の見込めるセキュリティ監視を主力としている点で中期的な収益基盤を確保できる点は強みだ。

同社に資本出資するNRIグループと連携して案件獲得に努め、利益水準はまだ低いものの20年3月期は前期比倍増の8500万円と回復色を強める見通し。増収効果で懸案となっている人件費負担をこなし、来期以降は更に利益拡大に弾みがつきそうだ。

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