すご腕投資家さんに聞く「銘柄選び」の技 御発注さんの場合-最終回
割安投資を身につける極意は、普段の生活から高値買いを徹底排除
金融機関出身のフリーライター。株式、投資信託、不動産投資などを中心とした資産形成に関連する記事執筆を主に担当。相続、税金、ライフプラン関連も数多く執筆。
サラリーマン投資家で、必死の節約で貯めた約100万円を元手に2002年から投資開始。投資スタイルは銘柄数を絞ったバリュー株狙い。もはや趣味と化している筋金入りの節約生活と銘柄選びの段取りがユニークなのが特徴。誤発注事件で大損した経験を糧に、投資スキルをさらにパワーアップさせ、現在の金融資産は約3億円。
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ここまでの御発注さん(ハンドルネーム)の特集記事では、今の名前を生むきっかけとなった「誤発注事件」の悔しさを糧に、投資手法を改良して資産拡大をさらにパワーアップさせたその足取りなどを紹介してきた。
サラリーマンながら30代で資産を3億円にまで拡大できたのは、銘柄選択や投資手法のノウハウが光っていたのはもちろんのこと。だが、これと同時に無視できないのが、徹底した節約への取り組みだ。御発注さんには投資の種銭となる余裕資金そのものを総額3800万円まで積み上げた実績もあり、これもかなり全体の資産拡大に貢献した部分となる。
最終回となる今回は、資産拡大の重要な一役を担った、もはや趣味の域まで行き着いている御発注さんのユニーク節約活動について紹介していく。
ゴミ箱から100万円分のレシートを集めたド根性の持ち主
「最近の一番の贅沢ですか? そうだなあ、優待券をオークションで売る時に62円のミニレターを使って郵送できるところを、横着して82円の通常の封筒で送ってしまったこと。20円もムダに費やしてしまいました」
「投資の元手資金をこれまでのトータルで3800万円貯めた」という、なかなかできない節約術について聞き取りしていた時のこと。御発注さんのこんな返答に取材班は爆笑してしまった。
初めは冗談なのかとも思ったが、じっくり話すうちに、「数十円たりともムダ使いはしない」という節約への取り組みが、幼い時からの当たり前の行動として身に付き、今はそれが楽しみにさえなっている様子が浮き彫りになってきた。
節約とは少し意味合いが違うが、「そこまでやるか」と驚いてしまうド根性系では、大学生時代のレシート集めのエピソードも面白い。かつて大学の生協で、「買い物のレシート2000円分で1回くじ引きできる」という企画があり、御発注さんは必死に生協のゴミ箱からレシートを拾い集め、なんと100万円分のレシートをゲットしたことがあるとか。
100万円分ともなれば、福引は500回も引くことができる。この成果で自転車や生協の食事券を手に入れることができた。ただし、このエピソードは御発注さんが節約にかけるこだわりが人一倍強いことを示す一例であって、真髄は効果と効率のいい節約と、そうでない節約をわきまえていることだ。
株式投資と同様、節約も漫然とではなく戦略性を追求して取り組んでいる。
1回切りではなく、継続的なストック型節約で効率アップ
その特徴の1つは、今世間で話題になっている時短。サラリーマンである御発注さんは、株式投資では銘柄選択や売買の際に取るべき行動をルーティン化して効率アップを図っている。節約も、この考え方と同様、時間をかけずに自動的に出費削減につながる方法は何かを考え、最大限の効果が出るよう「仕組み化」を心掛けている。
例えば、御発注さんの基準で理想的な例・好ましくない例を分かりやすく言うと、
「今日は安売り」などを理由に、隣駅のスーパーなどに時間を掛けて買い物に出かける」
――のは好ましくない例。節約という効果を生み出すためにその都度、大事な時間を食いつぶしてしまうやり方だからだ。
一方、理想的な例の代表は、
「クレジットカードをポイント還元率が高いものに変える」
「スマートフォンを通信料の安い業者に乗り換える」
――などの見直しだ。これらは初めに一回だけ手間をかければ、後は時間をかけずに自動的に生活の中で節約の効果が発生する。
また、住居、自動車など、そもそも出費金額が規模大きいものからのテコ入れを優先させ、通信料のように「毎日習慣的に使う」ものも規模が大きいものから見直し入れるのもキモとなる要素だ。
ちなみに下の図は、投資も節約活動も効率化を目指す御発注さんが、常日頃意識している「あるべき時間の投入先」の概念図だ。同じ時間を費やすにしても、価値あるものに費やせばよい循環(複利効果)が生まれるが、価値のないものに費やすと悪い循環が生まれるという考えを持って行動しているという。
■プラスの複利効果が働く理想的な時間の投入先
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