桂畑誠治氏【日経平均急騰、米中首脳会談後に上値追い加速】(1) <相場観特集>
―相場は変わったか、それとも思惑先行で買われ過ぎ?―
名実ともに7月相場入りとなった1日の東京株式市場は、幸先よく日経平均株価が450円を超える急騰で幕が上がった。G20大阪サミットと日程を合わせて行われた米中首脳会談は、貿易協議の再開と中国への課税引き上げを見送ることで合意、これを受けて東証1部銘柄の9割以上が上昇する買い気の強い地合いとなった。果たして相場のトレンドは大きく変わったのか。第一線で活躍する市場関係者に今後の見通しを聞いた。
●「4月高値視界ながら下値リスクもくすぶる」
桂畑誠治氏(第一生命経済研究所 主任エコノミスト)
東京株式市場は足もと強気一色に傾いたが、目先的には思惑先行で買われ過ぎた感も否めない。当面の日経平均は4月の年初来高値水準である2万2300円近辺が上値のメドとなるが、下値リスクも拭い切れず、調整局面では2万1000円ラインを意識する展開もあるとみている。
まず、注目された米中首脳会談で貿易協議が再開される方向となり、懸念された中国への追加関税は見送られる方向となった。対中関税引き上げが実施されない方向でマーケットは事前に織り込んでいたとはいえ、警戒感がくすぶっていただけに首脳会談の結果はポジティブに受け止められた。
中国通信機器大手ファーウェイの取引措置の緩和も安全保障に関わらない部分の取引を対象にしたもので、その線引きが今のところはっきりしない。また、農作物の輸入を中国側が増やすことにトランプ米大統領は言及したが、これも具体的な項目は見えていない。既存の中国に対する制裁措置を緩和するというような話も出なかった。
今回の米中会談を受けてはっきりしているのは、米国による制裁関税第4弾は見送られたということだけだ。ここだけを見ればそれほど株式市場に吹く追い風は強いものとはいえない。しかし、事前に米中首脳会談に対する期待値がそれほど高くなかったこと、そして外国為替市場で1ドル=108円台前半に円安が進行したことも、折よく投資家心理に味方した。
経済ファンダメンタルズに着目すると、6月の経済指標は世界的に悪化しているものが目立つが、米国の経済指標に限れば強さを維持している。米国の個人消費についても19年4-6月期は前期比年率で伸びが加速している。こういう状況下でマーケットが前倒しで織り込んでいる7月利下げ実施の可能性についても予断は許さず、米国の経済指標が明確に悪化していない現状では微妙な要素もはらんでいる。したがって今週は3日の米非製造業景況指数と5日の米6月雇用統計の発表が要注目となろう。
また、日本国内に目を向けると今月は日米間の事務方による貿易交渉が行われ、その動向を横にらみに相場も神経質な展開が想定される。ただ下旬には参院選も控えており、政策アナウンス効果などが下値を支える可能性はある。
(聞き手・中村潤一)
<プロフィール>(かつらはた・せいじ)
第一生命経済研究所 経済調査部・主任エコノミスト。担当は、米国経済・金融市場・海外経済総括。1992年、日本総合研究所入社。95年、日本経済研究センターに出向。99年、丸三証券入社。日本、米国、欧州、新興国の経済・金融市場などの分析を担当。2001年から現職。この間、欧州、新興国経済などの担当を兼務。
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