為替週間見通し:ドルはもみ合いか、米FRB議長の議会証言が手掛かり材料に
【先週の概況】
■米長期金利上昇を意識してドル買い強まる
先週のドル・円は強含み。一時107円53銭まで下落後、108円64銭まで買われた。米国の対中制裁関税第4弾の発動が先送りされたことが好感され、ドル買いが先行した。ナバロ米大統領補佐官(通商担当)が「米中通商協議が妥当な合意に達するには時間を要する」と述べたことを嫌って、リスク回避的なドル売り・円買いが一時優勢となったが、欧州中央銀行(ECB)の次期総裁に国際通貨基金(IMF)のラガルド専務理事が指名され、ECBは2020年以降も緩和的な金融政策を維持するとの観測が広がったことや、日本銀行による追加緩和への思惑が広がったことから、リスク回避的なドル売りは縮小した。
5日のニューヨーク外為市場でドル・円は108円64銭まで上昇した。この日発表された6月米雇用統計で非農業部門雇用者数は市場予想を上回る前月比+22.4万人となり、米連邦準備制度理事会(FRB)による利下げ観測はやや後退。米10年債利回りは一時2.06%台まで急反発したことを意識して、リスク選好的なドル買い・円売りが活発となり、ドル・円は108円47銭でこの週の取引を終えた。ドル・円の取引レンジ:107円53銭-108円64銭。
【今週の見通し】
■ドルはもみ合いか、米FRB議長の議会証言が手掛かり材料に
今週のドル・円はもみ合いか。6月米雇用統計はある程度改善したものの、7月利下げの可能性は依然として高い。しかしながら、欧州中央銀行(ECB)と日本銀行は金融緩和策を強化するとの思惑が広がっていること、豪準備銀行(中央銀行)による連続利下げなどを受けてリスク回避的なドル売りは縮小しつつある。そうしたなか、今週10-11日に行われるパウエル米連邦準備制度理事会(FRB)議長による半期に1度の議会証言が注目される。
6月18-19日の連邦公開市場委員会(FOMC)では、政策金利の誘導目標を2.25-2.50%のレンジに据え置くことが決定された。同時に、不確実性が高まっていることを理由に今後入手する情報を「注意深く見守る」との見解を示している。10日には6月会合の議事要旨が公表される。次回7月30-31日のFOMC会合では0.25ポイントの利下げが有力視されている。パウエル議長の見解が0.25ポイントの利下げ予想に沿った内容だった場合、リスク回避的なドル売りは抑制される見込み。ただし、金利引き下げに積極的であると市場が判断した場合、年内複数回の利下げ観測が広がり、ドル売りがやや強まる展開となりそうだ。
また、トランプ米大統領は「利下げは景気を押し上げる」などと発言し、金利引き下げを繰り返し要求している。また、米FRB理事に指名されているジュディ・シェルトン氏(2016年の大統領選で経済顧問を務める)は、「金融当局者は金融市場を支えている支援を打ち切るべきではない」との見解を表明し、利下げを支持している。政府側からの利下げ要求が一段と高まっていることはドル上昇を抑える一因となり得る。
【米FRB議長議会証言】(上下両院で10-11日開催予定)
パウエル米FRB議長は10、11の両日、半期に1度の議会証言に臨む。FRBは6月18-19日の連邦公開市場委員会(FOMC)で政策金利の据え置きを決めたが、7月30-31日の会合での利下げが見込まれている。パウル議長がどのようなメッセージを市場に伝えるのか、注目される。
【米・6月消費者物価コア指数(CPI)】(11日発表予定)
11日発表の6月消費者物価指数(CPI)では、総合指数は5月実績の前年比+1.8%をやや下回る見通しだが、コア指数は+2.0%の上昇が見込まれている。想定通りなら米国の利下げは当面小幅にとどまるとの思惑でドル売りは限定的になりそうだ。
予想レンジ:107円50銭-109円50銭
《FA》
提供:フィスコ