山田勉氏【週明け反落、米雇用統計を受け潮流に変化?】(1) <相場観特集>
―行き過ぎた米早期利下げ期待、その反動はくるのか―
週明け8日の東京株式市場は日経平均株価が反落となった。注目された6月の米雇用統計が事前の市場予測を大きく上回ったことで、これが7月末に予定されるFOMCにも影響を与えそうだ。行き過ぎた米利下げへの期待が剥落した形だが、為替が円安に振れるなど東京市場にとってはマイナス材料ばかりではない。今回は株式市場全般の見通しや為替の動向について、先読みに定評のある市場関係者2人に意見を聞いた。
●「上値の重い相場続き、個別材料株で幕間つなぎ」
山田勉氏(カブドットコム証券 投資情報室 マーケットアナリスト)
8日の東京株式市場は、前週来、株高の原動力となっていた米国の早期利下げ期待が、週末の米雇用統計発表を受けて後退したことが格好の利益確定売りの口実となった。利下げ期待が後退したとはいっても、7月末のFOMCで利下げすることについて濃厚視されていることに変わりはなく、一部に根強い期待のあった0.5%引き下げの選択肢が消えたということだろう。
ただし今の段階では、米国経済の実勢は強く、7月利下げを見送る可能性も否定しきれない状況にある。その意味で、今週10~11日に予定されるパウエルFRB議長の議会証言が注目される。「成長持続へ適切な行動」「金融緩和の必然性高まる」を繰り返すとみられるが、これまでより若干タカ派寄りにスタンスの変化が見られた場合、米株市場はバランスを崩す可能性もあるだけに注意したい。
外国為替市場でドルが買い戻され1ドル=108円台の推移となっていることは、日本株にはプラス材料。主力輸出株中心に相場の下支え材料となるが、為替相場の円安だけでは今の市場エネルギー不足の日本株を押し上げるには力不足だ。米国株が仮にここから下値を探る展開となれば東京市場もこれに追随して、軟調な推移を強いられることになるだろう。きょうは、中国株の下げも目立ち市場心理を悪化させている。
国内のファンダメンタルズに目を向けた場合、景気は下り坂なのに10月消費増税を実施することへの警戒感が拭えない。6月から続く東証1部売買代金の2兆円割れ常態化もそのゆえんだろう。参院選は「年金が足りないなら、増税も仕方ない」と諦めムードも広がり、転機にはなりにくそう。景気悪化の懸念があっては内需株を積極的に買いに行けるような地合いでもない。日経平均は200日移動平均線の2万1600円近辺は戻り売り圧力も意識されやすく、結論として上値の重い局面が続くだろう。今は急いで主力株を買いに行く必然性には乏しい。今週はファーストリテイリング <9983> や安川電機 <6506> などの決算絡みで全体相場は不安定な動きとなる可能性もあり得る。引き続き、IT系など個別材料株に投資家の関心が向かうところとなろう。
(聞き手・中村潤一)
<プロフィール>(やまだ・つとむ)
マーケットアナリストとして証券界で十数年活躍。2004年5月、カブドットコム証券入社。『こちカブ』(ラジオNIKKEI)『まーけっとNavi』(日テレNEWS24)『マーケットホットライン』(ストックボイス)などに出演。
株探ニュース