スタートダッシュした2月決算企業、高進捗率の増額期待15銘柄はこれだ <株探トップ特集>
―3~5月期の決算発表出そろう、上値期待が大きく膨らむ絶好調銘柄をロックオン!―
2月期決算企業の20年2月期第1四半期(3-5月)決算発表がほぼ出そろった。2月を本決算月とする企業の数は3月期、12月期に次いで多く、今月下旬から本格化する3月期決算の行方を占ううえでの前哨戦としても注目される。今回は20年2月期第1四半期の業績が好スタートを切り、かつ経常利益の通期計画に対する進捗率が高水準で上方修正が期待できる銘柄を追った。
●全体マイナスも個別では半数以上が増益を確保
「株探」集計によると、16日までに20年2月期第1四半期(3-5月)決算を発表した202社の経常利益は前年同期と比べて4%減少し、前の四半期である18年12月-19年2月期に続いて減益となった。2月期決算企業の半数を占める小売業では、根強い節約志向による個人消費の低迷や人件費・物流費をはじめとしたコスト上昇が重荷となる企業が目立った。また、主要ハイテク株決算の先行指標として注目を集めた安川電機 <6506> は中国を中心に産業用ロボットやサーボモーターの販売が減速、経常利益ベースで前年同期比58.6%の大幅減益となり、全体の利益を押し下げた。
一方、前年同期比で増益または黒字転換、赤字縮小して着地した企業は111社と減益決算の数を上回り、個別では前年比プラスを確保した企業が多数派となった。小売りセクターではウエルシアホールディングス <3141> やコーナン商事 <7516> 、ローソン <2651> などが2ケタ増益を達成したほか、内装工事の大型案件が増えた乃村工藝社 <9716> 、多くのヒット作品に恵まれた東宝 <9602> 、再生不動産物件の販売が好調だったいちご <2337> の増益幅も大きかった。
別表では、第1四半期決算発表を終えた2月期決算企業を対象に、(1)時価総額が50億円以上、(2)20年2月期第1四半期(3-5月)の経常利益が2ケタ増益もしくは黒字転換を達成、(3)第1四半期経常利益の通期計画に対する進捗率が35%を超え、かつ同利益額が1億円以上、といった条件でスクリーニングし、選出された15社を対通期進捗率の高い順に並べた。
●吉野家は「超特盛」ヒットで進捗率80%超え
対通期進捗率が最も高かったのは吉野家ホールディングス <9861> 。9日に発表した20年2月期第1四半期(3-5月)の経常損益は12億5400万円の黒字(前年同期は4400万円の赤字)に浮上して着地。牛丼の新サイズ「超特盛」の売れ行きが好調だった吉野家の既存店売上高が前年実績を6.1%も上回ったほか、積極出店を進めた海外事業も業績拡大に貢献した。第1四半期実績だけで通期計画15億円に対する進捗率は83.6%に達しており、業績上振れは必至とみられる。今期は絶好のスタートを切ったことで5期ぶりに期初予想を上回る通期決算が期待できそうだ。
●テラスカイはクラウド市場の拡大で活躍余地広がる
2位に入ったテラスカイ <3915> は米セールスフォース・ドットコムが提供するクラウドベースのCRM(顧客関係管理)ソフトで国内トップの導入実績を持つほか、足もとではAWS(アマゾン・ウェブ・サービス)システム構築のシェアを伸ばしている。12日に発表した第1四半期(3-5月)の経常損益は1億9200万円の黒字(前年同期は1300万円の赤字)で着地。クラウド導入支援サービスが伸びたうえ、クラウドに特化したサービスを開発・販売する製品事業で大型案件の受注や契約社数が増加したことも収益を押し上げた。第1四半期実績の通期計画2億5000万円に対する進捗率は76.8%と高水準で業績上振れが濃厚視される。16日の株価はストップ高に買われ2072円まで上値を伸ばしたが、クラウド市場の拡大を背景とする同社の成長期待は大きく、上昇相場はこれからが本番となりそうだ。
●ピックルスはキムチ好調で四半期最高益を達成
漬け物業界トップのピックルスコーポレーション <2925> が6月25日に発表した第1四半期(3-5月)の経常利益は前年同期比77%増の7億8400万円に拡大し、全四半期ベースの過去最高益を記録した。主力の「ご飯がススム」シリーズを中心にキムチ製品が好調だったほか、「牛角やみつきになる!丸ごと塩オクラ」などの販売も伸びた。また、原料野菜の価格安定や佐賀工場の本格稼働による採算改善の効果も大きかった。好決算を受けて8日に上場来高値2540円をつけた後は調整含みにあるが、指標面で予想PER14倍台と割高感はなく押し目買い候補として注視したい。
●クリレスHDは既存店好調や出店抑制で1Qは66%増益
クリエイト・レストランツ・ホールディングス <3387> は12日に第1四半期決算を発表。税引き前利益は前年同期比66%増の27億9800万円に膨らんだ。昨年より天候が良く、ゴールデンウィークも好調に推移し、既存店売上高は期初計画を上回る水準を達成。また、コストコントロールの進展に加え、意図的に出店を抑制したことで開業経費が減少したことも利益拡大に貢献した。9月に買収するエスエスエルの業績上積みを考慮し、20年2月期通期の税引き前利益見通しを63億円(従来は56億円)に上方修正したが、第1四半期実績の修正した通期計画に対する進捗率は44.4%と依然として高く、一段の上振れの可能性を内包している。
●キャリアリンクは上期増額したことで通期上方修正の期待大
人材派遣を手掛けるキャリアリンク <6070> の第1四半期(3-5月)経常利益は1億7600万円と前年実績を3.9倍も上回って着地。テレマーケティング事業者や金融機関向け事務系派遣の受注が伸びたほか、前期から受注を開始したキャッシュレス決済関連受託業務も順調に拡大した。また、利益率の高い新規案件の受注獲得に加え、採用費や賃借料を見直したことも大幅増益の要因となった。同社は第1四半期決算発表前に上期業績予想を大幅増額修正したが、通期計画は据え置いた。第1四半期業績の対通期進捗率は42%と好調であり、今後の上方修正に期待がもてそうだ。
●レイは1Q実績が上期計画を大幅超過
広告やデジタル映像の企画制作会社であるレイ <4317> [JQ]は12日に第1四半期(3-5月)決算を発表。売上高は前年同期比13.7%増の28億6100万円、経常利益は同4.7倍の2億6300万円と業績高変化を遂げた。前期に低調だったセールスプロモーション・イベント部門の業績が回復したうえ、テレビCMやテレビ番組の改編期にあたる年度初めに編集業務を中心に受注が増勢だった。第1四半期実績が上期計画1億5000万円を大きく超過しており、業績上振れする確度は高いとみられる。同社は10月上旬に業績修正するケースが多く、上方修正を発表するタイミングとして押さえておきたい。
●パルHDは商品サイクル短縮が奏功
最後に紹介するのは衣料専門店と300円均一の雑貨店を展開するパルグループホールディングス <2726> 。第1四半期(3-5月)は積極的なブランドプロモーションや機動的な商品投入を継続し、衣料事業の収益が伸びたほか、原価低減や販管費の抑制なども寄与し、経常利益は前年同期比36.2%増の36億3500万円と四半期ベースで初めて30億円を突破した。第1四半期実績の対通期進捗率は40.4%に達しており、上方修正が視野に入っている。
◇スタートダッシュに成功した主な高進捗銘柄
対通期 ┌─ 経常利益 ─┐ 増益率
コード 銘柄名 進捗率 3-5月期 通期計画 3-5月期
<9861> 吉野家HD 83.6 1254 1500 黒転
<3915> テラスカイ 76.8 192 250 黒転
<7450> サンデー 67.3 269 400 122
<2685> アダストリア 51.2 5119 10000 277
<2925> ピックルス 45.1 784 1739 77.0
<3387> クリレスHD 44.4 2798 6300 66.0
<7599> IDOM 43.6 959 2200 831
<6070> キャリアL 42.0 176 419 291
<4317> レイ 40.5 263 650 370
<2726> パルHD 40.4 3635 9000 36.2
<3198> SFP 39.1 1056 2700 30.0
<1712> ダイセキS 38.4 349 910 32.7
<6323> ローツェ 36.2 2170 5997 89.4
<7624> NaITO 36.2 452 1250 63.2
<3073> DDHD 36.0 845 2350 51.4
※「対通期進捗率」は3-5月期経常利益の通期計画に対する進捗率。経常利益の単位は百万円。
株探ニュース