明日の株式相場戦略=米中摩擦に対する恐怖感が提供する好機
きょう(6日)の東京株式市場は、日経平均が続落したものの大引けは134円安の2万585円で着地。気分的には大きくリバウンドをみせたに等しい相場展開となった。日経平均は朝方に600円を超える下げで2万110円まで下落、2万円大台攻防を意識させたが、その後は突っ込み警戒感からの買い戻しやリバウンド狙いの押し目買いを誘導し、漸次下げ渋る動きをみせた。外国為替市場でドルが買い戻され1ドル=106円台後半まで円安方向に大きく振れたことが、全体株式市場に浮揚力を与える背景となった。
朝方9時前に先物が安寄りして2万円大台を割り込んだところで、海外ヘッジファンド筋の買い戻しが流入、市場関係者によると「それに歩調を合わせ、国内年金資金などの政策的な買いが、寄り後早々に現物の主力株に入った」(国内ネット証券ストラテジスト)という。突っ込み買いが奏功する典型的なパターンとなった。
米中貿易摩擦の激化を背景に、人民元安にスポットライトが当たっている。米財務省が中国を為替操作国に認定したことが、センセーショナルに伝わり寄り付き時点では総悲観ムードに支配されていた。これを受けて、中国人民銀行が人民元の取引基準値をどこに設定するかが注目されたが、午前10時15分、人民銀行は1ドル=6.9元台に設定。7元台を予想していた大方の見方よりも元高に設定したことが、「中国がまだ冷静を保っている」との思惑を呼びリスク回避一辺倒の流れを変えた。
前引け時点では9割以上の銘柄が値を下げていたが、後場はプラス圏に切り返すものが増え、大引け段階では全体の6割が値下がりするにとどまった。これで全体相場が完全に立ち直ったとはいえず、遅かれ早かれもう一度下値を試す局面はありそうだが、リスクオフの奔流はひとまず堰き止めた形となっている。
個別では半導体関連株の切り返しが目を引いた。とにかく強さが際立つのがアドバンテスト<6857>。7月25日にマドを開けて700円高はストップ高に買われた後も売り物をすべて飲み込み連日陽線を示現、全体相場が大きくバランスを崩す中でこの値運びは特筆に値する。高水準に積み上がった空売りの買い戻しが機能していることは明白だが、“株は需給”ということを改めて痛感させられる動きだ。ここから更に大きく上放れるイメージは描きにくいが、当面は注目場面が続くことになる。これは、東京エレクトロン<8035>やディスコ<6146>など他の半導体製造装置関連も同様で、直近はチャートがお辞儀する格好となってはいるものの、それでもやたらと陽線の多さが目立つ。売り方が買い戻しを急いでいる。これは半導体市況の在庫調整がヤマを越えたことを暗示しているともいえる。
中小型材料株ではサイバーセキュリティー関連のハイパー<3054>が引き続き買い人気を集め、きょうは600円台後半まで歩を進めた。このほか、以前取り上げた銘柄ではホテルや旅館向け宿泊予約管理システム「TEMAIRAZ」の販売を手掛ける手間いらず<2477>が驚異的な強さ。東京五輪を控え、宿泊施設には強烈なインバウンド需要が発生、この取り込みに照準を合わせた同社の戦略に収益成長期待が大きい。また、AI関連で存在感をみせるシグマクシス<6088>も再び25日移動平均線を上回ってきた。更に“光通信関連”で出世頭となっているオリコン<4800>も一目均衡の雲の上を快走しており、引き続きマークしたい。
新しいところでは富士ソフトサービスビューロ<6188>。今年1月の株式分割で値ごろ感があり、8月1日の急騰後の調整一巡で25日移動平均線との上方カイ離を修正しつつある300円台半ばは魅力的に映る。
日程面では、あすは7月29~30日に行われた日銀金融政策決定会合の「主な意見」が開示され、マーケットの耳目を集めそうだ。また、海外ではニュージーランド中銀やインド中銀、タイ中銀などが政策金利を発表する。(中村潤一)
出所:みんなの株式(minkabu PRESS)