山田勉氏【米国株は戻り足、日経平均続伸で視界は変わるか】(2) <相場観特集>
―景気減速と政策期待の狭間で揺れる夏相場後半戦を読む―
週明け19日の東京株式市場は、日経平均株価が続伸し一時2万600円台に歩を進めた。前週末の米国株市場でNYダウが300ドルあまり上昇するなど、リスクを取る動きが優勢となったことが追い風となったが、全体売買代金は低調で市場参加者不足が目立つ。世界景気減速懸念が強まる一方、金融緩和や財政出動などの経済政策に期待がかかるなか、8月から9月にかけて東京市場にはどういう景色が広がるのか。市場第一線で活躍する関係者に意見を聞いた。
●「先行き不安材料多いものの需給面に底堅さ」
山田勉氏(カブドットコム証券 投資情報室 マーケットアナリスト)
米国株市場では、“逆イールド・ショック”から立ち直り、足もとは不安心理先行で売り込まれた分の巻き戻しが入っている。この流れに週明けの東京市場もついて行く形で、日経平均は上値を指向する展開となった。目先、米10年債利回りが下げ止まっていることに加えて、米国では小売売上高が好調を堅持しており、今の段階でリセッションの可能性を声高に叫ぶのは時期尚早といってもよい。
ただし国内に目を向ければ、これから秋口に向け消費増税を控えており、投資家マインドは高まりにくい環境にあるのは事実。また、海外では10月末にブレグジットが予定され、ハードブレグジットになるかどうかは未知数ながら積極的な買いポジションは取りづらい。財政支出の可能性が取り沙汰される中国も、9月と12月に米国の追加関税を前にして、本腰を入れて景気浮揚策に取り組まないと、厳しい局面に遭遇する懸念は小さくない。これからのスケジュールを考えると、株式市場も決して楽観はできない状況にある。
差し当たっては今週22~24日の日程で行われるジャクソンホールでの国際経済シンポジウムにマーケットの関心が高い。ここで、前回のFOMCで利下げサイクル開始を否定したパウエルFRB議長が、どういった発言をするかが市場のセンチメントに大きく影響しそうだ。この結果を見極める前の段階では、売りも買いもポジションを一方向に傾けるのは難しい部分もあり、様子見が続くことになる。
当面、日経平均は下値を探る際には2万円大台割れが意識されるものの、株式需給面からは妙に浮揚力が働いている点も認識しておきたい。日銀のETF買い、年金資金の政策買い、更に高水準の自社株買いも続いている。これをベースに売り方の買い戻しが誘発される場面では、上値を意外に伸ばす可能性があり、200日移動平均線の位置する2万1300円近辺がメドとなろう。物色対象としては、引き続き半導体製造装置関連で東京エレクトロン <8035> やアドバンテスト <6857> 。また、5G関連でNEC <6701> 、富士通 <6702> 、アンリツ <6754> などをマークしておきたい。
(聞き手・中村潤一)
<プロフィール>(やまだ・つとむ)
マーケットアナリストとして証券界で十数年活躍。2004年5月、カブドットコム証券入社。『こちカブ』(ラジオNIKKEI)『まーけっとNavi』(日テレNEWS24)『マーケットホットライン』(ストックボイス)などに出演。
株探ニュース