為替週間見通し:ドルはもみ合いか、米追加利下げを織り込む展開に

通貨
2019年9月7日 16時25分

【先週の概況】

■米中協議再開への期待でドル強含み

先週のドル・円は強含み。105円74銭まで下落後、一時107円23銭まで上昇した。米中が9月1日に報復関税を相互に発動し、米中貿易協議再開に不透明感が浮上した。さらに、米国の8月ISM製造業景況指数は予想外の50割れとなり、9月大幅利下げ観測が強まり、リスク回避のドル売り・円買いが活発となった。

しかしながら、日本時間5日午前、「米中の通商チームは9月半ばに通商に関して意見交換することや、中国と米国が10月初めにワシントンで通商協議を開催することで合意した」と報じられたことから、リスク回避のドル売り・円買いは縮小した。英国議会下院で欧州連合(EU)からの離脱期限を延期する法案が可決されたことも円売り材料となった。5日のニューヨーク市場でドル・円は一時107円23銭まで買われる場面があった。

6日のニューヨーク外為市場でドル・円はやや上げ渋った。この日発表された8月米雇用統計で非農業部門雇用者数は市場予想を下回る伸びにとどまったことや、パウエル米連邦準備制度理事会(FRB)議長が追加利下げの可能性を示唆したことから、ドル売りがやや優勢となった。ただ、8月の平均時給は市場予想を上回る伸びを記録したことから、ドル売りは拡大せず、結局106円90銭でこの週の取引を終えた。ドル・円の取引レンジ:105円74銭-107円23銭。

【今週の見通し】

■ドルはもみ合いか、米追加利下げを織り込む展開に

今週のドル・円はもみ合いか。世界経済の減速に対する警戒感は消えていないが、米中貿易摩擦の段階的な解消への期待は残されており、ドル・円の取引では売買が交錯しそうだ。中国人民銀行(中央銀行)が市中銀行の預金準備率の引き下げを発表したことは、リスク回避の円買いを抑制する一因となる可能性がある。ただ、米連邦公開市場委員会(FOMC)会合を翌週(17-18日)に控え、今週発表される米経済指標が低調だった場合、大幅利下げ観測が再浮上し、ドル・円相場を下押しする場面もあろう。

英国議会上下両院で欧州連合(EU)からの離脱延期法案が可決されたことや、総選挙の早期実施提案の否決を受け、合意なきEU離脱への懸念はひとまず収束した。ジョンソン政権は総選挙実施の方針を改めていないが、野党勢は早期の総選挙実施に反対しており、総選挙が10月中に行われる可能性は低いとみられている。しかしながら、英国がEUに離脱期限を2020年1月31日まで延期しても、国内政治が安定する保証はない。また、ユーロ圏経済の減速懸念は消えていないことから、欧州通貨売り・米ドル買いが再び広がった場合、ドル・円の取引にも影響が及ぶとみられる。このため、新たなドル売り材料が提供されない場合、ドル・円は下げ渋る状態が続く可能性がある。

【米・8月消費者物価コア指数(CPI)】(12日発表予定)

12日発表の8月消費者物価コア指数(CPI)は7月を小幅に上回る前年比+2.3%と、底堅い内容が予想される。予想通りとなった場合、連邦準備制度理事会(FRB)による大幅利下げ観測は後退し、ドル買い材料になりそうだ。

【米・8月小売売上高】(13日発表予定)

13日発表の8月小売売上高は、前月比+0.3%と、7月の同+0.7%から鈍化が見込まれる。8月小売売上高が市場予想を下回った場合、個人消費の減退を警戒してドル売りがやや強まる可能性がある。

予想レンジ:105円50銭-108円00銭

《FA》

提供:フィスコ

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