Jトラスト Research Memo(9):アジア金融事業を中心に発展を目指す成長戦略に変更なし
■中長期の成長戦略
Jトラスト<8508>は、IFRS転換が遅れたことに加え、韓国及びモンゴル金融事業では負ののれんの処理や当局の規制強化の影響、東南アジア金融事業では不良債権処理の影響、投資事業ではGL関連損失処理の影響などから、結果として中期経営計画(2016年3月期?2018年3月期)は予定どおりには進まなかった。現在、新たな中期経営計画の発表はないが、会社として投資家に中期的な利益目標を示すことは非常に重要であると弊社では考える。
2019年3月期も東南アジア金融事業、投資事業の損失に伴い業績悪化を余儀なくされたが、不良債権を前倒しで一括処理したことで、今後の不安材料はなくなった。この結果、2020年12月期からの本格的な業績回復を目指す準備が整ったと言えるだろう。中長期的には主力の金融3事業が中心となり、グループ全体の収益拡大を図るとのビジネスモデルに修正はない。既に見たように、2019年12月期決算は営業利益61百万円への小幅黒字転換を計画するが、第1四半期の出足は好調で、計画を上回って着地する公算が大きい。これまでに着手している戦略を推進することで、2020年12月期の営業利益は60億円へ、さらに2021年12月期には100億円規模に拡大すると見込まれる。
すなわち、引き続き日本金融事業では信用保証事業と債権回収事業により、安定的な利益を稼ぐ。また韓国及びモンゴル金融事業でも、貯蓄銀行業に対する規制強化の影響を抑えつつ、債権回収事業とも合わせて増益を確保する。一方、現状は業績悪化に苦しんでいる東南アジア金融事業では、既に見たように、再建に向けて、人材・組織の再構築、リスクマネジメントの強化、ITの改善、調達コストの改善、優良資産の積上げ等の諸施策に着手しており、今後業績を回復することで、同社グループ全体の増収増益基調をけん引すると期待される。
アジア経済圏では、外需の低迷、中国の成長減速、原油を中心とした商品価格の伸び悩みなどの影響により、各国の経済成長率は従来よりも低水準にとどまり、国内の企業収益や個人所得に悪影響を与えているとの指摘がある。特に、最近では米国と中国の貿易戦争による景気への悪影響が懸念される。しかし、IMFの統計によれば、インドネシア経済は世界16位の規模であり、アジア金融危機時の1998年を除き安定した成長を続けており、2019年の実質GDP成長率見込みも5.24%である。
また、2019年12月期からカンボジアの商業銀行JTRBが同社グループに加わった。カンボジア経済は世界108位の規模ながら実質GDPは年率6~7%の成長率を続けており、またJTRBは資産内容の良い優良銀行で安定的に年間30億円程度の営業利益を計上していることから、今後、グループへの利益貢献が期待される。
このように、同社グループは成長可能性が大きい東南アジア金融事業を原動力に、持続的な成長を目指しており、将来的には、さらにラオスやミャンマーなどへの進出も考えているようだ。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 国重 希)
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提供:フィスコ