来週の相場で注目すべき3つのポイント:米中閣僚級協議、安川電やファストリ決算、ノーベル賞ウィーク
■株式相場見通し
予想レンジ:上限22000-下限21000円
来週の日経平均は、心理的な節目である21000円台をキープできるかが焦点となってくる。前週に日経平均は週間で約468円、2週間では668円程度の下げ幅となっていることから、相応の自律反発も期待される。ただ、米国では9月の重要経済指標が相次ぎ悪化し、9月雇用統計も強弱感が混在する内容で、NYダウは景気減速への懸念を強めている。米国でインパクトの大きい経済指標の発表が見当たらないことは救いだが、利下げ期待の高まりによって日米金利差の縮小への思惑から為替相場が円高に進むと、日経平均は下方圧力が強まることになる。また、相場の関心は、米国経済動向から米中貿易問題に移る。10日に中国の劉鶴(リュウ・ハァ)副首相がワシントンを訪れ、米国側のライトハイザー通商代表部(USTR)代表、ムニューシン財務長官と2日間の予定で閣僚級貿易協議を開く。トランプ米政権は10月15日に2500億ドル(約27兆円)分の中国製品への制裁関税を現在の25%から30%に引き上げる構えをみせているほか、12月15日に制裁関税「第4弾」の残りを発動する予定となっている。10月15日を前に妥協点を見いだせるかが焦点で、協議に進展がなければ報復関税の応酬が再開されて貿易戦争が激しくなるリスクがある。中国では7日で国慶節による大型連休が終わり、8日から上海証券取引所も再開され、日経平均はこれらを睨んで神経質な展開となることが予想される。
物色的には、個別材料株に関心が向かうことになりそうだ。まず、ノーベル賞ウィークとなり、7日にノーベル医学生理学賞、8日に物理学賞、9日に化学賞、10日に文学賞、11日に平和賞の発表がそれぞれ予定されている。過去の日本人の受賞は米国籍2人を含め計26人で、2年連続での日本人の受賞があれば関連物色へのインパクトになる。一部報道では、医学生理学賞で「ゲノム編集」、物理学賞で「強相関電子物質」、化学賞で「リチウムイオン電池」の研究が注目されている。このほか、翌週15日からアジア最大級の規模を誇るIT技術とエレクトロニクスの国際展示会「シーテック2019」(千葉、18日まで)が開催されるなどのイベントスケジュールを睨み、材料株物色が高まる期待がある。また、消費関連を中心とする決算発表が本格化し、8日にJ.フロント リテイリング<3086>、吉野家HD<9861>、9日にローソン<2651>、イオン<8267>、10日にファーストリテイリング、セブン&アイHD<3382>、安川電機<6506>、11日に東宝<9602>が予定している。消費関連株の場合は、結果よりも消費増税後の対応や見通しに関心が向く。また、安川電機の今上期(2019年3-8月)決算は、中国関連、設備投資関連の先行指標として注目される。
主な国内経済関連スケジュールは、7日に8月景気動向指数、8日に9月景気ウォッチャー調査、8月国際収支、8月家計調査、8月毎月勤労統計調査、10日に9月国内企業物価指数、8月機械受注、9月都心オフィス空室率、11日に9月マネーストックがそれぞれ発表される予定だ。
■為替市場見通し
来週のドル・円は底堅い値動きか。米連邦準備制度理事会(FRB)による予防的追加利下げが引き続きテーマとなりそうだ。10月10日発表の9月消費者物価指数(CPI)は、ほぼ前回並みの水準が予想されるが、利下げ観測を弱める材料にはならないとみられている。1日に発表された米国の9月ISM製造業景気指数は、経済活動の拡大・縮小の境目である50を2カ月連続で下回り、2009年6月以来となる47.8に落ち込んだ。3日発表の9月ISM非製造業景気指数も悪化しており、今月開催の連邦公開市場委員会(FOMC)に向け追加利下げ観測が一気に高まっている。
9日に公表予定の9月17-18日開催分のFOMC議事要旨について、一部の市場関係者はFOMCの声明内容はタカ派寄りと受け止めていた。ただ、FOMC声明には強気なトーンは特に含まれていなかったことから、FOMC議事要旨はドル買い材料にはなりにくいと予想される。10日発表の9月CPIはコア指数も含め、インフレ率は2%台前半の見通し。インフレ進行の兆候は確認できず、利下げ予想は継続しよう。
一方、ユーロ圏も弱い経済指標から景気減速が鮮明になり、欧州中央銀行(ECB)の一段の金融緩和を想定したユーロ売りは継続するとみられる。欧州連合(EU)からの合意なき離脱の可能性が残るなか、英国では景気減速が顕著で英中央銀行から利下げの主張も出始めた。英国金利の先安観台頭を意識してポンド売りが強まる可能性があり、この影響で欧州通貨売り・米ドル買いの動きが広がった場合、米ドル・円相場を押し上げる場面もありそうだ。また、10日から開催される閣僚級の米中貿易協議では何らかの進展が期待されており、米中対立の早期解消への思惑が広がれば、リスク選好的なドル買い・円売りが強まる可能性がある。
■来週の注目スケジュール
10月7日(月):日・外貨準備高、独製造業受注、中国外貨準備高など
10月8日(火):日・国際収支、中・財新PMI、独鉱工業生産指数、スイス・失業率、米・パウエル連邦準備制度理事会(FRB)議長がNABE年次会合で講演など
10月9日(水):日・工作機械受注、米求人件数、米連邦公開市場委員会(FOMC)議事要旨(9月17-18日分)、IMFが世界経済見通し(WEO)公表など
10月10日(木):独貿易収支、独経常収支、英鉱工業生産指数、石油輸出国機構(OPEC)月報、欧財務相理事会など
10月11日(金):印鉱工業生産、米輸入物価指数、加失業率など
《SK》
提供:フィスコ