明日の株式相場戦略=米中協議予断許さず、建設周辺に低位株物色の芽
きょう(8日)の東京株式市場は朝方取引開始前と開始後ではガラリ雰囲気が変わった。前日の米国株市場でNYダウやナスダック総合指数が反落したうえ、今週10~11日に米中間の閣僚級貿易協議を控え、更に週末はオプションSQ算出が待っている。ここで上値を買いに行く投資家がどのくらいいるのか、と考えてしまえば、寄り前の段階で地合いが強気に傾くという結論は導きにくい。ところが、こういう場面で過去にも幾度となく繰り返されてきたが、意外な強さで薄商いのなか全体指数が水準を切り上げるケースは少なくない。
いわゆる売り方の作る相場、先物を絡めた買い戻しが全体相場に浮揚力を与える。買い方不在とは言わないまでも、実需の買いで上がっている部分は少ないと思われる。ポイントは2つある。外国為替市場で円安方向に振れたこと、そして国慶節に伴い1週間休場していた中国株市場が連休明け後、堅調な動きをみせ、アジア株全般もこれに追随したことだ。米中協議に対する警戒感が払拭されたわけではないが、アルゴリズム売買が円安、中国株高の2つのリスクオンに連動した。
売買代金は1兆9000億円にとどまり、前週末から3営業日連続で2兆円を下回った。ただし、インデックス主導の上昇ではむしろ参加者が少ない方が、ノイズが少なく上がりやすい面もある。結果的に“人間の”思惑が音を立ててぶつかり合う相場は、10~12日の米中協議の結果が見えてからということになりそうだ。もし交渉決裂なら、15日の対中関税拡大は実施されることになり、株式市場は少なくとも一度は下値を探る展開となる。また、それなりにうまくまとまって関税拡大が回避された場合は、株式市場は素直に上値を追うことになるだろう。それまでは予断を許さず、出てきた結果に柔軟に対応するよりない。
ただし、全体指数と距離を保った個別株戦略は参戦することに躊躇はいらない。Jストリーム<4308>が早速いい感じの値運びをみせている。5G関連ではシステム開発会社や計測器など普及を担う側が脚光を浴びやすいが、5G環境によってもたらされるビジネスチャンスを評価すべき銘柄というものも存在する。動画配信の象徴株でもある同社は当然後者の方だ。
前週取り上げた小林産業<8077>も強い動きで、押し目を形成しながらも上値慕いの展開をみせている。建設用ボルトなどネジ関連の専門商社でPER12倍、PBR0.7倍は割安。買い方にすれば安心感がある。国土強靱化関連としては見落とされがちで、それだけに新鮮味もある。秋の補正予算編成絡みで300円近辺の株価は魅力的に映る。
今回は、この流れで補正予算を含みとした国土強靱化関連で銘柄を探してみる。台風接近は決して歓迎できることではないが、株式市場は社会問題や自然環境の変化などネガティブなエネルギーを肥やしにして上昇の糧とすることが多いのも事実だ。
建設会社では、森組<1853>は動き出すと足の速い銘柄で、昔風に言えば仕手性が強い。2017年の秋から18年2月にかけて株価を4倍化させた経緯がある。今20年3月期については業績低迷が予想されており、その点は理解しておく必要があるが、今期予想PER6倍で配当利回り4.4%台は買いの根拠となる。
このほか大盛工業<1844>がジリジリと水準を切り上げてきた。こちらはまだ200円台前半に位置している。東京を中心に下水道や地中工事を主力としており、不動産流動化関連の一角でもあり、現在の低金利環境は追い風が強い。
更に、既に売買高を伴い動意しているが落橋防止用装置で業界トップのエスイー<3423>も国土強靱化関連の有力銘柄としてマークしたい。8月28日につけた331円の年初来高値を終値で払拭してくれば、上昇トレンドが強まる可能性がある。
日程面では、あすは9月の工作機械受注(速報値)。また、ジャスダック市場にアンビスホールディングス<7071>が新規上場する。海外では、FOMC議事要旨(9月17~18日開催分)、8月の米卸売在庫・売上高。米10年国債の入札も行われる。このほか、ノーベル化学賞が発表される。(中村潤一)
最終更新日:2019年10月08日 18時54分