米民主党離れは加速へ【フィスコ・コラム】

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2019年10月20日 7時30分

来年の今ごろ、アメリカは大統領選を控え大いに盛り上がっていることでしょう。現時点で民主党の指名候補争いではウォレン氏が一歩リード。ただ、ウクライナ問題に端を発する大統領弾劾騒動で逆に民主党の腐敗が明らかになれば、トランプ再選を阻止できない可能性もあります。

英国のメディアと調査会社が9月末から10月にかけて実施した「今日、民主党の大統領予備選が行われたら誰に投票するか」を問う調査で、ウォレン氏が29%でトップに躍り出ました。以下、バイデン氏、サンダース氏と続きます。これまでバイデン、サンダースの両氏がトップを争う構図に変化がみられ、ウォレン氏がリードを広げられるか今後も注目されます。

ウォレン氏はもともと連邦倒産法を専門分野とする商法学者で、2008年の金融危機の不良資産救済プログラム(TARP)を監督する議会監督委員会(COP)の議長を務めています。2010年にオバマ前政権で大統領補佐官、消費者金融保護局財務長官顧問に就任。リベラル層からの信認は厚く、2012年の上院議員選でマサチューセッツ州から出馬し、初当選を果たしました。

上院議員として、中流階級の目線で巨大な金融機関や企業を批判し続け、トランプ大統領の自身のビジネスに関わる利益相反問題に目を光らせます。2020年の大統領選に向け、グーグルの分割など行き過ぎた資本主義の規制を政策に盛り込みました。反ウォール街の点ではサンダース氏に近いと言えるでしょう。前回も党内で待望論が持ち上がったほどで、指名争いではかなりの善戦が期待されます。

しかし、ウォレン氏が仮に民主党の指名候補となっても、トランプ大統領を打ち負かすことはできないでしょう。ウクライナ問題が民主党にとって致命傷になりかねないためです。トランプ大統領がバイデン氏の副大統領時代のスキャンダルを探すようウクライナ大統領に圧力をかけたとされる問題で、民主党が下院で弾劾訴追の構えをみせていますが、現在は上院で共和党が多数派のため罷免は困難です

直近のキニピアック大学による世論調査では、トランプ大統領が職権を乱用していると思うかと聞いたところ「思う」が半数を超えたものの、弾劾、罷免されるべきと思うかとの問いには「思わない」が「思う」を上回っています。「ロシアゲート」で同大統領を退陣に追い込めなかった有力メディアはこぞって弾劾キャンペーンを展開しており、トランプ大統領にとってのマイナス材料になります。

とはいえ、オバマ前政権が反ロシアの立場から友好関係を強めたウクライナで、当時の米副大統領の長男が利権まみれのガス会社で役員を務めるなど、それだけでも大問題です。月額5万ドルという破格の報酬を手にしていたのが事実だとしたら、まさに「縁故資本主義」。先進国であるはずのアメリカには途上国のような側面もあり、バイデン氏親子こそ他の複数の疑惑を含め調査されるべきでしょう。

ウクライナ問題は民主党の対トランプの決め手にならないどころか、有権者の民主党離れを加速させる要因とみます。

(吉池 威)

※あくまでも筆者の個人的な見解であり、弊社の見解を代表するものではありません。

《SK》

提供:フィスコ

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