窪田朋一郎氏【下げない日経平均、更なる上昇はあるか】(1) <相場観特集>
―景気減速懸念を政策期待が上回る強調相場が継続中―
週明け21日の東京株式市場は引き続きリスクオンの相場が継続した。前週末の米国株市場で中国景気減速への警戒感が再燃するなか、NYダウが250ドルを超える下げをみせた。しかし、東京市場はそれに追随することなく売り物をこなし日経平均株価は2万2000円台を固める動きをみせている。年末に向け、どこまでこの強調相場は続くのか。先読みに定評のある市場関係者に今後の見通しを聞いた。
●「2万3000円ライン奪回を視野に入れる展開に」
窪田朋一郎氏(松井証券 シニアマーケットアナリスト)
東京株式市場は想定以上に強い地合いが続いているが、この背景には大きく分けて3つの要因が挙げられる。まず、一つ目としては良好な株式需給関係が株高を後押ししているということ。米中摩擦の問題や世界景気減速に対する警戒感が強かったこともあって、依然として空売り筋による踏み上げ余地が今の相場には残されている。NEXT FUNDS 日経平均レバレッジ・インデックス連動型上場投信 <1570> [東証E]をみても信用取組は売り買い拮抗(信用倍率1.09倍)、日証金では逆日歩が付いた状態にあり、需給関係で言えば相場全体の縮図となっている。
二つ目にはこれまで株式市場の上値押さえの要因となっていた中国景気の減速に対する警戒ムードがヤマを越えたとみられること。直近発表された、中国の7-9月期GDP伸び率は過去最低だったが、これについては織り込みが進んでおり、一方で中国財新製造業PMIが改善傾向にあることや月次でみた発電量もプラスに転じていることなどで、マーケットは中国経済の「底入れ」の兆しを感じ取っている。
そして三つ目としては世界的な半導体市況の回復だ。台湾のTSMCの決算でも明らかとなったように次世代通信規格5G向けの半導体需要が想定以上であり、今後5G対応のスマートフォンなど、半導体回復の流れが更に強まることが予想される。同関連株の上昇は、世界景気減速への懸念を和らげ株式市場全般にポジティブに働いている。
10月からの消費税引き上げもポイント還元などによる軽減措置がうまく機能して、思ったほど実勢経済へのマイナス影響は大きくないようだ。一方、世界的な金融緩和環境が続くなか、国内では補正予算編成に対する期待も現実味を帯びてきた。外国為替市場ではリスクオンの円安に振れていることも市場のセンチメント改善に一役買っている。
こうした状況を考慮して、当面の日経平均のレンジとしては2万2000~2万3000円のゾーンで強含みに推移するとみている。場合によっては2万3000円ラインを突破することもありそうだ。物色対象としては引き続き東京エレクトロン <8035> やアドバンテスト <6857> 、ディスコ <6146> などの半導体製造装置関連のほか、ファナック <6954> など工作機械関連株にも上値余地が見込まれる。
(聞き手・中村潤一)
<プロフィール>(くぼた・ともいちろう)
松井証券へ入社後、マーケティング部を経て現職。ネット証券草創期から株式を中心に相場をウォッチし続け、個人投資家の売買動向にも詳しい。
株探ニュース