富田隆弥の【CHART CLUB】 「出尽くし感に注意」
◆注目されたFOMCで、FRBは市場の想定通り政策金利を0.25%引き下げた。そして、パウエルFRB議長は「金利は適正な水準になったと思う。今後の金融政策は経済動向を注視して決める」という主旨の発言をした。これを「利下げ打ち止め」と受け止めるか、「しばらく利上げはしない」と受け止めるかは様々だ。
◆ただ、チャート的には直近まで世界同時株高を演じ、テクニカル指標が過熱感を漂わせているだけに、イベント通過で「出尽くし感」が出ないかを注視したいところだ。FRBが利下げを決めた前回と前々回(7月31日、9月18日)は、利下げを織り込むように株式市場は大きく上昇してテクニカルは過熱を強めていたが、利下げが決まると株式市場は利食い優勢となり大きく下落した経緯がある。つまり、「二度あることは三度」あるのか、日経平均やNYダウの日足チャートに注意する必要がある。
◆NYダウ平均(10月30日終値2万7186ドル)は7月16日の過去最高値2万7398ドルや、9月12日の戻り高値2万7306ドルに迫っているものの、日足チャートは高値の節を抜けていないので「もみ合い」である。もみ合いの下値は200日移動平均線(2万6200ドル処)だが、出尽くし感から調整入りするならその近辺まで下落してもおかしくない。
◆S&P500指数は好決算を映して30日に3046ポイントと最高値を更新したが、上値追いの動きが鈍くなる傾向を見せており、ここでも決算発表を終えて「出尽くし感」をにじませるのか注意したい。
◆日本でも決算発表(4-9月)が始まった。「5G」関連の好調により3月期通期見通しを上方修正した「アドバンテスト <6857> 」だが、株価は31日に475円安の4945円と下落した。「アンリツ <6754> 」も同じように下落したが、それまでに株価が大きく上げていただけに決算発表で「出尽くし」として利益確定売りを強めたとも言える。
◆一方、「安川電機 <6506> 」「ファナック <6954> 」など中国関連には業績を下方修正するものが目立ったが、株価は逆に上昇した。「上期を底に下期から回復する」との解説が多く聞かれるが、果たして本当にそうだろうか。インデックス買いや買い戻しという需給による面が小さくないように思われる。そうであるなら、買いが一巡したあとに真価が問われることになり、日経平均など全体の動向がポイントになってこよう。
◆日経平均株価(31日終値2万2927円)は29日に高値2万3008円と順調で、チャートのN波2万3500円前後を目指す流れにある。だが、サイコロジカルライン(29日11勝1敗)、RCI(29日に9日線と13日線が97%でデッドクロス)、騰落レシオ(16日139%)など日足のテクニカル指標は過熱し、30日に日足が「宵の明星」を見せた。こうした日足の様子は1ヵ月前(9月26日頃)とよく似ており、この先調整を見せるなら25日移動平均線(2万2154円)に近づく可能性があることを覚悟しておくべきだろう。
◆このような状況で31日の米国市場(ザラバ段階)ではNYダウが250ドルほど下げている(31日執筆時点)。「出尽くし感」からNYダウが調整を見せるなら、世界同時株高の流れが止まることも否めない。昨年の10~12月には大きく下落した経緯もあり、調整の兆しを見せるなら無理をせず様子見も一策となろう。
(10月31日 記、毎週土曜日に更新)
情報提供:富田隆弥のチャートクラブ
株探ニュース