明日の株式相場戦略=静かなる急騰、動きだす新たな価値観
3連休明け(5日)の東京株式市場は大きく買い優勢に傾いた。前週末の気迷い相場の余韻など微塵も感じさせずにリスクオン一色、日経平均株価は一時480円近い上昇で2万3300円台に歩を進め、昨年10月10日以来の高値水準に到達した。ちなみに昨年10月11日に日経平均は915円安と急落しており、株式需給面から滞留出来高の薄い真空地帯を駆け上がる格好となった。いわば静かなる急騰だ。
ここまで強い相場は正直想定外、どこかで反動がくるだろうという漠然とした思惑は現時点まできれいに裏切られた形となっている。売り方による積極的なショートは踏み上げ相場の肥やしになったが、それだけではない。懐疑のなかで育つとはよく言ったもので、買い方がポジションを軽めにする一方、バランス感覚によるヘッジ目的の売りポジションも上値を軽くしたといえるかもしれない。「全体相場は10月後半から11月にかけて調整するだろう」という暗黙のコンセンサスが、逆に上昇相場に味方した。
もっとも、米国株市場では主要株価指数が史上最高値圏を走っているわけであり、常に米中摩擦や米景気減速懸念の「再燃」と「後退」に振り回されてきた東京市場にしても、本家の株価が強ければそれに追随するのが道理ではある。10月の消費税引き上げを過剰にマイナス視した部分は市場関係者ならではの見誤りといえるかもしれない。米国株がどこまで行くのか、日経平均の今後もそこに委ねられている。
いずれにしても「下がりそうだから買えない」ではなく「買いたいから下がってほしい」に投資家のマインドが変化してきた。持たざるリスクの解消を念頭に置き、押し目形成場面を渇望するという地合いに変わりつつある。そうしたなか、主力株が強い一方、中小型株も決して弱いというわけではない。半導体関連では一足先に高値圏を舞った東京エレクトロン<8035>やアドバンテスト<6857>などの主力株が目先一服となる一方、これまで目立たなかった出遅れ感顕著な銘柄に物色の火が燃え移っている。半導体向け感光性材料のトップメーカーであるダイトーケミックス<4366>のストップ高などはその典型といえそうだ。世界景気敏感株が買われるのであれば、業績面でその恩恵に浴する銘柄には分け隔てなく陽光が注ぐ。
中国に積極展開を図っている銘柄も、それがこれまでのような株価上昇を邪魔する足かせではなく、株高をもたらす翼に変わる可能性が出てきた。例えばリコー<7752>のきょうの株高は、中期計画で中国事業に積極注力するという姿勢にあることが伝えられ、株価を強く刺激した。リコーの株価動向がきっかけとなって、このコンセンサスが中小型株にも浸透していく公算は小さくない。
このほか、新鮮味のある銘柄に投資資金が回っている。18日にマドを開けて上放れたリブセンス<6054>はマド埋めを拒否して三角もち合いを形成後、定跡通りに大きく上に放れてきた。2次電池や半導体関連の出遅れで過去大相場の実績がある藤倉コンポジット<5121>なども急動意した。いずれもきょうは大幅高ながら陰線形成となってしまったが、これは低位株の初動ではよくあること。過去2年くらいさかのぼってチャートを眺めれば、底値離脱の第一歩に過ぎないともいえる。値運びの速さは確かに魅力だが、1年後の株価位置をイメージするという中期的な視点も大切だ。
日程面では、あすは日銀金融政策決定会合の議事要旨(9月18~19日開催分)が開示されるほか、10年物国債の入札が行われる。海外では9月のユーロ圏小売売上高、7~9月期の米労働生産性指数(速報値)が発表される。また、タイ中銀の金融政策会合がある。米10年債の入札も予定される。(中村潤一)