【植木靖男の相場展望】 ─ 天気晴朗なれども波高し
「天気晴朗なれども波高し」
●先高感を支える“金余り”
天気晴朗なれども波高し――いまの東京市場を表現すれば、こうなる。8月以降、日経平均株価はここまで上昇してくる間、何回か際どい場面があったが、その都度すーっと切り返してきた。あたかも相場操縦、つまりマニピュレーションではと疑念を持つくらいだ。先物市場では相変わらず某外資系2社が売買高で突出している。
その手口は、“売り方キラー”とでもいえそうだ。売り方の買い戻しを許さないといった売買だ。だとすると、大量の空売りを飲み込んだまま高値に持って行くことになる。現在、1兆円近い売り残がある。
最たる例は、11月14日の急落だ。1ヵ月半ぶりの2日連続安だ。この動きからすれば、売り方に買い戻しのチャンスが巡ってきた、と誰しも判断する。ところが、翌15日に早くも上昇、またしても売り方は買い戻しがきかないばかりか、むしろ売りを重ねる状況だ。
週明け18日も上昇すれば、買い方は一気に元気づくことになろう。またしても、空売り筋は“地獄行きの列車”に乗ったままとなる。
さて、こうした強い地合いを保っている理由はどこにあるのか。
市場の大半は、米中通商協議での暫定合意の署名が近いことを挙げている。確かに12月15日には、米国は最後の関税引き上げの期限が来る。それまでには署名は終わる、との思惑があるのは事実。
だが、基本的な要因は、やはり金余りとみている。たとえば、新興国市場は再び上昇に転じているし、米国では低格付け債の価格が上昇を続けている。さらに、米国はここへきて3回の利下げをしていて、一段と金余り感を醸し出している。仮に、ここで一服感が出るにしても依然、先高感を拭うことはできないようだ。
かといって、安心ばかりではないようだ。8月安値から日柄でちょうど区切りの3ヵ月にあたる。日々注意を怠ってはならないことは、いうまでもないだろう
●SOXの放れ見極めまで個別株物色で対処
ところで、物色の流れはどうか。
依然として、柱はみられない。水準が高いだけになおさらである。参考になるのは、米SOX指数だ。ここ高値もみ合いも8~9日間となり、いよいよ上放れるか、下放れるか方向性が見えてくる。上放れるとすれば、市場の人気は再び半導体関連にシフトしそうだ。
それまでは、引き続き個別株物色であろう。もっとも、こういう段階では、最も効率のよいのは経験則に照らせば、 ETFだ。ETFを軸にして、個別ではまず日本ペイントホールディングス <4612> だ。1-9月期税引き前利益は3.8%減ながら、株価は年初来高値を更新してきた。
また、同じ理屈でいえば、直近の戻り高値を抜いてきた東邦チタニウム <5727> も面白そうだ。このほか小物ではジャックス <8584>だ 。業績がよくPER9倍、利回り3%台。バリュー株として注目したい。
2019年11月15日 記
株探ニュース