為替週間見通し:底堅い値動きか、米利下げ打ち止めの思惑残る
【先週の概況】
■ドル・円は下げ渋り、米中通商協議進展への期待持続
先週のドル・円は下げ渋り。米中協議のすみやかな進展への期待は低下し、リスク回避のドル売り・円買いが活発となり、ドル・円は一時108円台前半まで下落した。しかしながら、米政府高官が「米中通商協議で第1段階の合意成立は最終段階」との見方を示したことから、リスク回避のドル売り・円買いは縮小し、ドル・円は108円台後半まで戻した。
米中通商協議については、「中国が米農産品購入の公約をためらっている」と報じられたことから、通商合意成立が困難となり追加関税が発動されるとの警戒感が高まった。中国の10月の鉱工業生産や小売売上高が市場予想を下回ったことも懸念され、米長期金利の低下を受けたドル売り・円買いが観測された。
15日のニューヨーク外為市場でドル・円は108円86銭まで上昇した。この日発表された10月の米小売売上高が予想を上回ったため、長期金利の上昇に伴うドル買いが観測された。クドロー国家経済会議(NEC)委員長やロス商務長官の発言を受けて、米中通商協議における「第1段階(フェーズ1)」の通商合意が近く成立可能との見方が広がったこともドル買い材料となった。ドル・円は108円78銭でこの週の取引を終えた。取引レンジ:108円24銭-109円29銭。
【今週の見通し】
■底堅い値動きか、米利下げ打ち止めの思惑残る
今週のドル・円は底堅い値動きか。米中通商協議の行方については予断を許さない状況が続いており、リスク回避的な円買いがただちに縮小する可能性は低いとみられる。ただ、米連邦準備制度理事会(FRB)による利下げ打ち止め観測は後退していないことから、金利見通しの引き下げにつながる材料が提供されない場合、ドル売り・円買いが大きく広がる可能性も低いとみられる。
米中通商協議について、両国は第1段階(フェーズ1)の合意に向けて最終的な調整を進めているとみられる。一部報道によると、米国産農産物の輸入や相互に発動した関税の撤廃を巡って双方の主張は異なっているようだ。通商協議が難航するとの懸念は払拭されていないが、近日中に第1段階の合意が成立する可能性は残されていること、パウエルFRB議長は議会証言で、政策金利を当面据え置く考えがあることを示唆しており、目先的にリスク回避的なドル売り・円買いは抑制されるとみられる。
市場関係者の間では、20日に公表される米連邦公開市場委員会(FOMC)議事要旨(10月29-30日開催分)に対する関心が高いようだ。前回の会合で政策金利を0.25ポイント(25bp)引き下げることが決定されたが、会合後の声明では、景気拡大に向け「適切に行動する」との従来の文言は削除された。追加緩和に否定的な意見が多く出ていた場合、ドル買い・円売りが強まり、心理的節目の110円を目指す展開もあり得る。
【米連邦公開市場委員会(FOMC)議事要旨】(20日公表予定)
20日に公表されるFOMC議事要旨(10月29-30日開催分)は、年内追加利下げの可能性を探る手がかり材料となろう。利下げ打ち止めのトーンが強まれば、リスク回避のドル売りは抑制される可能性がある。
【米・11月フィラデルフィア連銀景況調査】(21日発表予定)
21日発表の米11月フィラデルフィア連銀景況調査は6.7と、10月の5.6を上回る見通し。ただし、直近のISM製造業景況指数は低水準に落ち込んでおり、製造業の業況悪化が示された場合、追加利下げへの思惑が広がりやすい。
予想レンジ:107円50銭-110円00銭
《FA》
提供:フィスコ