スマホ革命の裾野広がる、「電子チケット関連」熱視線浴びるプレミアな株 <株探トップ特集>
―チケットも紙からスマホの時代へ、メリット多大でイベント主催者も普及に本腰―
音楽ライブや演劇鑑賞、スポーツ観戦などの場で、紙のチケットに代わり電子チケットが徐々に浸透しつつある。
デジタルチケット、モバイルチケットなどとも呼ばれる 電子チケットは、購入したチケットをスマートフォンなどで電子的に取得し、画面上に表示したチケットを入口で提示することなどにより入場できる仕組み。これまでインターネットの扱いに慣れた世代でないと利用方法が分かりにくいなどといわれていたが、スマホの普及で入手・利用がしやすくなったことに加えて、会場内の飲食店の割引クーポンや、当日の画像などを受け取ることができる特典をつけるケースが増えてきたことで、世代を問わず利用が増えている。電子チケットの利用は転売の防止にもつながるほか、購入者との間でイベントの前から後まで継続的なコミュニケーションが行える、マーケティングデータの収集ができるといったメリットがあることから、イベント主催者サイドも普及に力を入れている。
●ネットによるチケット販売市場は拡大基調
チケット販売は、以前からインターネットとの親和性が高い分野といわれていた。経済産業省の「平成30年度我が国におけるデータ駆動型社会に係る基盤整備 (電子商取引に関する市場調査)」によると、2018年のチケット(音楽系、ステージ系、スポーツ系及び映画)販売におけるBtoC-ECの市場規模は4887億円で前年比6.3%増と拡大基調が続いた。人気の高いアーティストのチケット販売は、今ではネットでの先行予約が当たり前となっている。
その一方で、社会的な問題となっているのが、チケットの高額転売だ。これに関しては、アーティスト自らが転売禁止を呼び掛けるなどしたものの、ネットを介した個人間のやり取りが増えたことなどから、いっこうになくならない状況にあった。ただ、今年6月に施行された「特定興行入場券の不正転売の禁止等による興行入場券の適正な流通の確保に関する法律」(チケット不正転売禁止法)により、不正行為の減少が期待されている。
●不正転売禁止法の施行も追い風
チケット不正転売禁止法では、(1)転売禁止を明記(2)日時、場所、座席が指定(3)購入者の氏名や連絡先を確認した上で販売――したチケットを対象に、転売目的でチケットを購入したり、「業」として反復継続して定価を上回る価格で販売したりすることを禁止した。違反した場合、1年以下の懲役か100万円以下の罰金が科せられる。
同法成立の背景には、チケットの高額転売が社会的な問題となっていたことに加えて、20年東京オリンピック・パラリンピックを控え、国際オリンピック委員会(IOC)が、悪質な転売や空席による五輪のイメージ悪化を防ぐため、東京大会の組織委員会に転売対策を求めていたことも背景にあるといわれている。
その東京五輪に関しては、サイトから購入する場合、事前に公式サイトに個人情報を登録してIDを取得する仕組みが採用されている。
チケットの種類では、従来からの紙のほかにスマホやタブレットで表示する「モバイルチケット」(電子チケット)、自身のプリンターでプリントアウトする「ホームプリントチケット」があり、紙チケットの場合、発行手数料や配送手数料がかかる一方、モバイルチケットやホームプリントチケットは手数料がいらないという利点がある。
そのため、これまで電子チケットに縁がなかった人でもモバイルチケットを利用するケースが増えるとみられ、東京五輪を機にこれまで以上に身近になりそうだ。
●テーマパークなどでも導入進む
電子チケットは既に、国内外のアーティストのライブやスポーツ観戦などで利用されているが、近年、利用の裾野が広がりつつある。代表的なものとしては、オリエンタルランド <4661> が運営する東京ディズニーリゾートが18年2月から、電子チケット「ディズニーeチケット」サービスを開始した。また、サンリオ <8136> が運営するサンリオピューロランドでも18年10月から「前売りeパスポート」を導入している。また、交通分野では次世代移動サービスであるMaaSへの取り組みが活発化するなどで電子チケットを導入するケースが増えており、最近ではJR東日本 <9020> が10月から、新潟駅発の定額観光タクシーに電子チケットを導入するなどしている。
●エムアップは電子チケット会社を子会社化
エムアップ <3661> は、18年9月に、スマホ画面にスタンプを押すタイプの「EMTG電子チケット」を開発したEMTGを完全子会社化し、今年3月には100%子会社エンターテイメント・ミュージック・チケットガードに電子チケット事業を承継させた。エンターテイメント・ミュージック・チケットガードの上期(4-9月)の電子チケット取扱枚数は前年同期比40%増の約111万枚に及ぶなど順調に拡大。また、チケット不正転売禁止法の施行を受けて、公式2次流通のチケットトレード成立枚数も同68%増の約4万7000枚と順調に推移した。今年2月には大手プレイガイドのイープラス(東京都渋谷区)と資本・業務提携。特に公式2次流通に注力しており、「公式2次流通のナンバーワンを目指す」としている。
SKIYAKI <3995> [東証M]は、ファンマーケティングプラットフォームの一環としてQRコードを利用した電子チケットサービス「SKIYAKI TICKET」を展開。上期(2-7月)の累計流通枚数は前年同期比2.0倍の17万8969枚と順調に拡大した。なお、同社では、第3四半期決算を12月13日に発表予定であり、こちらも注目だ。
LINE <3938> は、アミューズ <4301> などと設立したLINE TICKETで、LINEからチケットを検索・購入・発券できる電子チケット「LINEチケット」を18年10月から展開し、18年は約300公演のチケットを販売した。また、同社と20年10月までに経営統合する予定のZホールディングス <4689> も傘下のヤフーが13年から電子チケットサービス「PassMarket」を展開している。
●MaaSサービスの一環として電子チケットを活用するジョルダン
ギフティ <4449> [東証M]は、店頭で引き換えることのできるデジタルのギフトチケットの生成と配信、及びそのギフトチケットを自社サイト上で販売できる「eGift System」を「スターバックスコーヒー」や「ミスタードーナツ」など74社(19年9月末現在)に提供している。前述のJR東日本の新潟市の観光タクシーにも同ソリューションが利用されている。
ジョルダン <3710> [JQ]は、総代理店となっている英マサビ社の発券・認証技術を用い、全国の自治体や観光施設、交通事業者向けに今年5月から、電子チケットの提供を開始すると発表し、新たなMaaSサービスとして話題になった。今年8月には愛知県豊田市で、10月には大分市で「観光型MaaS」のモバイルチケットの販売を開始しており、サービス開始から1年以内に10以上の自治体・交通事業者などへの導入を目指している。
更に、米リアルネットワークス社の顔認識システムを利用して、子会社OSK日本歌劇団のイベントで顔パス入場を実現したネクストウェア <4814> [JQ]や、トリプルアイズ(東京都千代田区)の画像認識プラットフォームを利用して、イベントなどの入場管理を顔情報で行う「顔チケ」サービスの実証実験を行うキューブシステム <2335> なども関連銘柄として挙げられよう。
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