すご腕投資家さんに聞く「銘柄選び」の技 towaさんの場合-第3回
"期待値警察"と仲間からいわれるほど、期待値にこだわるワケ
金融機関出身のフリーライター。株式、投資信託、不動産投資などを中心とした資産形成に関連する記事執筆を主に担当。相続、税金、ライフプラン関連も数多く執筆。
パチスロで貯めた3000万円の一部を元手に資産を10年で16倍化したバリュー投資家。現在の投資歴は約10年。比較的時間の自由が効く会社員というメリットを生かしつつ、兼業でも時間を上手にやりくりして投資に向かう。企業の資産価値に着目して割安度を計る資産バリュー投資に軸足を置き、サテライトで成長株を標的としたモメンタム投資も手掛け、着々と資産を拡大してきた。投資を本格的に始めた2008年以降、初年と2018年以外は全て運用成績は対前年比でプラス。投資開始2年目の09年は約60%、11年と13年は約80%という好成績を収めている。「努力が嫌い」と言いつつ、実は投資本を100以上も読むほど勉強熱心さんだ。
「『期待値』『期待値』ってあまりにも言うので、投資仲間からは『期待値警察』って冷やかされるほどなんですよ」
「期待値警察? 何ですかそれ」
今回towaさん(ハンドルネーム)に登場をお願いしたのは、本コラムで紹介したさる投資家さんから「品行方正なバリュー投資家」として紹介を受けたのがきっかけ。ところが、取材を始めたのっけから、「昨日は決算プレーが上手くいって…」といきなりバリュー投資とは無縁な話題に。そもそも投資を始めたきっかけを聞くと、一時期パチスロにのめり込んでおり、それが影響したのだという。
「もしかして紹介された人とは別人?」と錯覚してしまうほど、事前に想定していた品行方正ぶりとは180度違う話が続く。しかし、じっくり聞いていくと、パチスロから決算プレー、そして投資の軸とするバリュー投資には、一貫した筋が通っていることがわかった。
その筋というのが、冒頭の期待値だった。"警察"と仲間から言われるほどにハマっている期待値の考え方について、今回は掘り下げていく。
今回損をしてもOK、「期待値ある銘柄に投資できたか」がキモ
読者のみなさんは、投資の成功もしくは失敗の物差しは何に置いているだろうか。一般的なのは、「○万円を儲けた」「年間の運用成績は前年比◎%だった」などだろう。
towaさんの場合も、もちろんこうした物差しで自分の成果を振り返ることもあるが、最も大切にしていることが「期待値が見込めるものに挑戦できたのか」。仮に結果が損に終わっても、自分なりに期待値を吟味した結果での負けならば、次につながる負けとして潔く受け入れる。
もちろん、資産を増やす目的で投資をしている以上、損するよりは儲かる方がいい。しかし、儲けるにしても、「たまたま成功した」というのでは、意味がない。今後につながるノウハウがないだけに、今回は成功しても次回は失敗することも十分にあり得るからだ。
これに対して、プラスリターンの見込める期待値を見極めた投資の場合は、こうした運任せの投資とは一線を画すため、期待に反して株価が上がらず、損をしても、それは無意味な負けにはならない。期待値の理論では、試行回数を重ねるにつれ期待の値に近づく。初回は失敗に終わっても、最終的には平均すると期待値の数字に着地するため、全体では利益を勝ち取れる見込みがあることになる。
towaさんが期待値警察と呼ばれるほど期待値にこだわるのは、感情ではなく理論で銘柄を選ぶことこそ、投資で成功する確率を高める唯一の方法だと信じているからだ。
前回の記事で、towaさんが1泊2日ないしはそのプラスαの短期の時間軸で、決算発表前後の株価のモメンタム(趨勢)に乗る「決算プレー」の取り組みについて触れた。こうした決算プレーの対象になる銘柄は、決算発表時期にはボラティリティー(株価の変動率)の大きい値動きをし、「運任せのギャンブル的な投資」とも思われがちだ。
だが、towaさんは決して運任せの向こう見ずの投資をしているわけではない。towaさんなりに考え、期待値が高いと思う銘柄に絞って参戦し、決算プレー全体の勝率が上がるよう、しっかり考えた上での「品行方正」な投資となるよう取り組んでいる。
期待値は「平均するとどれだけ儲かるか」と示すもの
では、その期待値とはどんなものなのか。投資家の中で期待値を意識している人はどれだけいるのか不明だが、言葉を聞いてもピンとこない人もいるだろう。期待値とは、その言葉の通り「期待される値」のことで、「何回も同じ行動を繰り返す中で、それを平均するとどれくらい儲かるか」という確率を表したものだ。一般的には、投資額に対して期待値がマイナスである時、その投資に踏み切るべきでないと判断できる。
例えばtowaさん流に言うと、
① 40%の確率でハズレが出る(儲けは0円)
② 40%の確率で100円もらえるB賞(儲けは100円)
③ 20%の確率で500円もらえるA賞(儲けは500円)
という宝くじがあった場合、
期待値は①(0.4×0)+ ②(0.4×100)+ ③(0.2×500)=140
の計算で求められる。
もしこの宝くじが1回140円なら、プラスにもマイナスにも「期待値は0%」(towaさん)。いわゆるトントンの状態で、ここが損益分岐点となる。
一方、宝くじが100円なら、「140-100=40」で、期待値はプラス40%に。払うお金よりもリターンが高くなる状態になり、これなら「買う価値あり」と判断できる。
ところが宝くじが200円になってしまうと、「140-200=▲60」となり、期待値は▲60%というマイナスの値となる。払うお金よりリターンが低くなるので「買う価値なし」と考えるのが妥当とされる。
実際、もっと高度な使い方をする場面では、人によって期待値の考え方に若干の違いはある。だがベースとなる考え方はこの算式の要領で、towaさんの考えもこれに基づいている。
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