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2019年12月11日 11時40分
特集

「次のワークマンの種」を探せ!


大川智宏の「日本株・数字で徹底診断!」 第30回

大川智宏大川智宏(Tomohiro Okawa)
智剣・Oskarグループ CEO兼主席ストラテジスト
2005年に野村総合研究所へ入社後、JPモルガン・アセットマネジメントにてトレーダー、クレディ・スイス証券にてクオンツ・アナリスト、UBS証券にて日本株ストラテジストを経て、16年に独立系リサーチ会社の智剣・Oskarグループを設立し現在に至る。専門は計量分析に基づいた株式市場の予測、投資戦略の立案、ファンドの設計など。日経CNBCのコメンテーターなどを務めている。

日本株市場は一応底堅くは推移しておりますが、出来高は連日1兆5000億円前後と急減し、特に海外投資家の日本株への興味は日に日に薄れているのを実感せざるを得ない状況です。市場の声を聞く限り、ほぼ間違いなく米中摩擦問題に辟易した投資家の株離れ(特にマクロに振り回されやすい日本株離れ)が主因と思われます。

そのような時期は、市場の騰落に一喜一憂しても無意味なので、落ち着いて中長期的に上昇を狙える銘柄の発掘に心血を注ぐべきでしょう。そうした銘柄を探すにあたっては「成功者にならえ」ということで、昨今特に驚異的なリターンを生み出して話題になっている銘柄を研究することが早道と言えそうです。

その銘柄とは、ワークマン <7564> 。ここ1年程度、市場でこの名前を聞かない日はないと言っても過言ではないほど注目を集めている銘柄です。元々は、作業着や安全靴を製造、販売し、郊外を中心に店舗を構えるいわゆる「ガテン系」の専門店でしたが、ここにきて若者向けの「丈夫でおしゃれで廉価」なファッションの人気に火が付きました。

特に、今までガテン系のイメージと無縁であった女性やファッションに敏感な若年層の取り込みに成功し、さらにキャンプなどのアウトドアブームも手伝って、業績、株価ともにうなぎ登りの状態です。テンバガー(株価が10倍になった銘柄)とまではいきませんが、過去3年間で利益は2倍近く、株価は5倍以上に上昇し、一躍スター銘柄に躍り出ました。

過去1年のパフォーマンスは東証全銘柄の中で24位

ちなみに、過去1年間の株価リターンは、東証の上場全銘柄(4000銘柄弱)の中では24位、機関投資家の投資対象となり得る時価総額300億円以上(計測開始時、約1600銘柄)の中では見事第1位のパフォーマンスです。秋口には一旦急落し、このまま失速するかに思われましたが、持ち直して足元で再び急騰を見せています。

ワークマンの株価推移

ここで重要なのは、ワークマンがこれほどまでに業績と株価を伸ばした要因についてです。先ほど、利益が2倍、株価は5倍と述べましたが、株価収益率(PER)の観点からすれば、増益率に対して倍以上に株価の高騰していることになります。

もちろん、話題の銘柄特有の需給の集中で過度なプレミアムが付いている可能性もありますが、理論的には、今後も強い増益が長期的に継続する前提で値付けがされているはずです。

業態を考えれば、ファーストリテイリング <9983> やしまむら <8227> といったファスト・ファッションの成功例を踏襲している印象を受け、店舗拡大が飽和すれば株価も時期に頭打ちになる可能性はあります。しかし、ワークマンはそこに作業着専門で培ってきた特有の丈夫さ、高品質という強みがあり、他とは一線を画すようにも思えます。

これらを踏まえた上で、ひとつの疑問が湧いてきます。このワークマンの事例は、個別具体的な特殊要因に基づくものなのか、または成功銘柄に共通する条件に当てはまっていたからこそこの高パフォーマンスが実現できたのか、という点です。

トリガーとファクターを考えれば納得感が

これについての回答を先に述べてしまえば、「Yesでもあり、Noでもある」という、なんとも歯切れの悪い感じになってしまいます。ただし、定性面を「トリガー」、定量面を「ファクター」として考えれば、すっきりと業績および株価の高騰の背景を見渡すことができます。

まず、定性面(トリガー)からです。前述のように、現在の日本経済は表面上の好景気ですが、消費の動向はその字面とはかけ離れています。実際に、消費者のセンチメントを表す消費者態度指数を見ると、足元でやや底打ち傾向も見られますが、とても好況下にあるとは思えない水準での推移が続いています。前回好況時後期の2007年と比較しても大幅に下回っており、金融危機よりはマシ、といった水準です。

消費者態度指数の推移

言い換えれば、好況と言われる現在にあっても、消費や所得、雇用に対する見方は依然として非常に厳しいものがあり、ラグジュアリーで高価格なサービスよりも、それなりの質で低価格な方が好まれやすいという消費者の心理や行動を端的に表していることになります。

事実、牛丼チェーン大手の吉野家ホールディングス <9861> 、松屋フーズホールディングス <9887> 、そして500円ランチが好評を博しているケンタッキーフライドチキンでおなじみの日本KFCホールディングス <9873> などの低価格外食チェーンは、直近半年程度だけを見ても、破竹の勢いで株価が高騰しています。

外食チェーン3社の株価動向

つまり、定性的に考えれば、全体的な景気の良し悪しに関係なく、高級路線よりも「安い、品質が良い」が好まれる時代の流れの真っ只中で、業態および消費者のターゲットを専門的なニッチな分野から思い切って進出できたことがきっかけ(トリガー)で、今まで取り込めていなかった分が利益成長として純増したわけです。もちろん、前述のようにそこに専門分野で培った高い品質があることが大前提です。

このトリガーは、時代に流れに沿ったサービスを打ち出せる事業を有しており、かつその中でも競合に比して数々の強みがあったというワークマン固有の材料かもしれません。

※当該情報は、一般情報の提供を目的としたものであり、有価証券その他の金融商品に関する助言または推奨を行うものではありません。

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