奏功するかOPECプラス追加減産、石油需給のカギ握る米中協議 <コモディティ特集>

特集
2019年12月11日 13時30分

今月6日、サウジアラビアなど石油輸出国機構(OPEC)加盟国にロシアを中心とした非加盟国を加えたOPECプラスは、日量50万バレルを追加減産することで合意した。従来の減産規模が日量120万バレルだったことから、合計で同170万バレルが減産目標となる。ただ、サウジが自主的に追加減産を実施してきたことから、今回の合意で一段と生産量が減少するわけではない。

サウジは今後も積極的な減産を継続し、実質的な減産規模は日量210万バレル程度まで膨らむという。OPECプラスの中核国の新たな生産目標は、サウジが日量1014万4000バレル、ロシアは同1112万1000バレル、イラクは同446万2000バレル、クウェートは同266万9000バレルである。サウジの追加負担が日量16万7000バレルと突出していることからすれば、新規株式公開(IPO)を果たした国営石油会社サウジアラムコの減収リスクをいとわないようだ。ロシアの追加減産は日量7万バレルと、アラブ首長国連邦(UAE)の同6万バレルと大差がなく、ロシアの減産に対する消極性が現れている。ロシアの原油生産量はサウジアラビアとほぼ同じであり、UAEの約3倍である。

この新たな減産が行われるのは来年1~3月である。3月5、6日に臨時総会が行われ、4月以降の生産規模があらためて協議される予定であるが、今回の合意が奏功するかどうかは景気見通し次第である。米中貿易摩擦を背景とした世界経済の減速が一巡し、景気見通しの悪化が止まるようであれば、石油需要の下振れ懸念が膨らむことは避けられそうだ。ただ、世界的に景気を圧迫してきた米中通商協議の行方を見通すことはできない。今週末15日、米国はスマートフォンやパソコンを含む1560億ドル分の中国製品を対象に15%の追加関税を発動する予定である。

●第1段階の合意内容で協議の進捗度を推し測る

協議担当者の発言を信用するならば、米中通商協議は第1段階の合意に向かっているようだが、ロス商務長官やクドロー米国家経済会議(NEC)委員長は、合意は近いと呪文のように繰り返しているだけである。15日の対中関税強化は回避されるのだろうか。

米中通商協議が本当に前進しているならば、第1段階の合意に至り、米国が宣言しているように今週末の追加関税発動は見送られることになる。ただ、長期間に渡る協議の結果、中国による米国産農産物の購入を中心とした合意になるようだと落胆しかない。中国による強制的な技術移転の禁止、中国国営企業に対する補助金の削減、知的財産権の保護など、根本的な問題が含まれない合意は米国にとって中身があるとは言えず、ハリボテでしかない。来年に米大統領選を控え、トランプ米大統領にとってはマイナス要因となるのではないか。

第1段階の合意内容によって、これまでの協議の進捗度を推し測ることが可能である。15日の期日を控えて米中通商協議に動きが発生するにしても、ぬか喜びさせられるリスクは高い。

(minkabu PRESS CXアナリスト 谷口 英司)

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