明日の株式相場戦略=“米中クリスマス休戦”で浮上する株
週明け16日の東京市場では日経平均株価は反落を余儀なくされたが、70円安の2万3952円と2万4000円ラインからそれほど遠くない位置で着地した。米中の歩み寄りを受けた前週末の米国株市場は、NYダウ、ナスダック指数ともに朝方こそハイボラティリティな値動きをみせたものの、後半は前の日の終値近辺を横ばいする動きとなり、反応は限られた。東京市場では前週末に日経平均が先物に引っ張られ600円高と望外に値を飛ばした後だけに、ハシゴを外されるような調整があっても不思議ではなかった。しかし、そうはならなかった。今の地合いは“押さば買い”という暗黙のコンセンサスがマーケットに底流している。
米中協議における第1段階の合意は中身を見ると手放しで称賛できるものではないようだ。第4弾の全面発動は回避されたが、米国側にすればひとまず先送りして様子を見るという上から目線のスタンス。9月に発動した1200億ドル分については関税率を15%から7.5%に半減するが、第1~第3弾の2500億ドル分については25%の関税を続ける。よくぞこれで中国側が納得したといえるような、トランプ政権の“小出し作戦”ではある。米国の農産品や工業製品の購入拡大についても中国側は数値目標を提示していない。合意文書の署名も来年1月以降に持ち越されるとのことだが、今の感じだと1月から2月にまたぞろ先延ばしされるようなケースも考えられる。
しかし、とりあえず市場が期待していた“クリスマス休戦”の格好にはなった。昨年10月2日の取引時間中につけたアベノミクス高値2万4448円の奪回がいつ来るかは想定しにくいものの、きょうの上昇一服で目先トレンドが変わるような感触はなく、年末年始相場は2万4000円台半ばを目指して上値を慕う雰囲気にある。これは世界的な流動性相場の賜物といってもよい。
きょうは、主力株の上値は重かったものの中小型株人気はかなり旺盛、ジャスダック市場を中心にストップ高銘柄が10銘柄も出ている。マザーズは“サンバイオショック”でバイオ関連が総じて売り込まれた影響が全体指数の下げに反映されたが、好業績のメーカー系企業が多いジャスダック市場は根強い買いが流入している。そのなか、電子計測器のファブレスメーカーで野心的な中期計画に取り組んでいるリーダー電子<6867>は上昇率27.5%と全上場株を通じて値上がり率トップに買われた。
前週の繰り返しになるが、今の相場の流れは5Gと半導体周辺銘柄の水準訂正が鮮烈だ。米中対立の構図がやや緩んできたことが、半導体関連に対する評価を更に高めている。半導体製造装置トップの東京エレクトロン<8035>が前週末に未踏の2万5000円台乗せを果たすなど最高値圏を走っているが、他の関連銘柄もこれに刺激される形で順次スタートを切っている。単なる市況底入れ期待というような曖昧なものでなく、例えばここ急速に立ち上がってきたEUV(極端紫外線)関連市場のキャパシティが想像以上に大きいということを市場が感じ取っているようなフシがある。EUV関連のど真ん中銘柄では、レーザーテック<6920>のここ半年間の上げ足などは特筆に値する。
半導体装置周辺の中小型株では野村マイクロ・サイエンス<6254>が動兆著しいほか、出遅れ組の和井田製作所<6158>や浜井産業<6131>あたりにも動きが出てきそうだ。
このほか、5G関連の穴株として製鉄・化学プラント中堅の高田工業所<1966>を注目してみたい。同社は装置事業でスマートフォン向けセンサーや車載向けパワー半導体、5Gなどの通信分野など成長市場への展開を戦略的に進めている。PER4倍台、PBR0.6倍台は株価指標面だけで判断しても水準訂正余地が大きい。
これ以外では、前週に光通信が大株主に浮上した日本コンピュータ・ダイナミクス<4783>、教育ICT関連のアイ・オー・データ機器<6916>などもマークしてみたい。
日程面では、あすは11月の首都圏・近畿マンション販売。20年国債の入札も予定される。また。IPOが2件あり、フリー<4478>、ウィルズ<4482>がいずれもマザーズ市場に新規上場する。海外では11月の米住宅着工件数、米建設許可件数、米鉱工業生産指数・設備稼働率が発表される。(中村潤一)
最終更新日:2019年12月16日 17時48分