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2020年1月1日 14時00分
特集

山岡和雅が“3つのキーワード”で読む2020年為替相場 <新春特別企画>

山岡和雅(minkabu PRESS 外国為替担当編集長)

◆方向感乏しいドル・円相場もたらした2つの背景

2019年、 ドル・円相場は変動相場制が始まって以来、最も値幅の狭い年となった。レンジは104円46銭から112円40銭までのわずか7円94銭にとどまっている。

2020年こそは、ある程度動きを伴う盛り上がった相場になるのか。20年の注目キーワードとともに展望していきたい。

19年が動きの乏しい展開に陥った背景には、昨年の年始のレポート「山岡和雅が斬る2019年『為替相場の大胆予想』」で、19年のキーワードとしてが掲げた二つの材料がある。

昨年年初に掲げた19年のキーワードは「ブレグジット」と「トランプ米大統領」。トランプ大統領に関しては、特に米中の通商摩擦問題が重要であると示した。

この二つの問題、ブレグジットは19年3月末の当初のEU離脱期限、米中通商摩擦問題については18年の米中首脳会談で示された当時の追加制裁の猶予期限であった3月1日をメドに、解決まで行くかはともかく、ある程度の方向性が見えてくることで相場に動きが出ると期待していた。

しかし、ブレグジット問題に関しては英政府案を議会で可決できないというグタグタの展開が続いた。EU離脱期限の二度の延長を経て、前倒しで行われた12月の下院選挙での与党保守党の圧勝をもって、ようやくの一段落に。年の瀬が近づいてやっと落ち着きを見せてきたということで、19年のほとんどは先行き不透明感だけが広がる展開であった。

米中通商合意についても、年明けは比較的前向きな期待が強かったものの、両国の関係は一時悪化。6月のG20大阪サミットでの米中首脳会談で再びの前向き姿勢も、協議が進展せず、8月に米国が対中関税の強化に踏み切り再び悪化するなど、一進一退の攻防が続いた。その後、奇しくも英ブレグジット問題が一服するきっかけとなった英下院選挙と同じ12月12日に第一弾の原則合意が報じられて、ようやく一段落を見せた。こちらもほぼ一年を通じて不透明感の広がる展開であった。

市場が注目した二つの材料が、年間を通じてモヤッとした展開になったことが、19年の方向感の弱い展開を誘ったといえる。

◆2020年第1のキーワード「ブレグジット」

とはいえ、これらの問題について年末にある程度の一服感が出たところで、20年の相場はどうなるのか。キーワードごとにみていきたい。

最初のキーワードは、前年に続き「ブレグジット」。19年12月の英下院選挙で与党保守党が圧勝したことで、1月31日を期限とするEU離脱の実行は確実なものとなっている。

今後の注目点はその後の英国とEUとの関係づくり。スケジュール的には20年末を期限として離脱の移行期間に入り、それまでに英国とEUの間で新しい自由貿易協定(FTA)を結ぶ必要がある。

当初は協議の進展状況を確認しつつ、20年6月末までに要請することで、1回限り最大2年の移行期間延長が認められており、ある程度の期間のブレはあっても、貿易協定締結に向けた動きが順調に進むと期待されていた。しかし、離脱プロセスの長期化を嫌気したジョンソン英首相は、EU離脱協定の議会合意に際して、関連法案として離脱プロセスの期間延長を回避する法案を提出。保守党がかなり余裕をもって単独過半数を確保している状況だけに、成立が予想される状況となっている。

もっとも、EU離脱協定を巡る英国とEUとの協議がこれまでかなり難航してきた経緯から、新たなFTA合意までは紆余曲折があると見込まれるだけに、EU離脱決定後、約11カ月しかないという移行期間はあまりに短く感じられる。20年後半に入っても協議が難航するようだと、FTAを結ばない中での移行期間終了となり、21年からはWTO(世界貿易機関)のルールに基づいて英国-EU間の貿易に関税がかかることとなる。こうなった場合、英経済への深刻な影響が見込まれるだけでなく、EU経済もかなり厳しい状況になる。さらにそこから世界経済全体への波及も予想される。

ポンド・ドルポンド・円の下げはもちろんのこと、世界的なリスク警戒感を受けての新興国通貨売り、リスク回避通貨としての円独歩高なども見込まれるところ。年半ばぐらいから英国-EU間の通商協議の動向に注目が集まりそうだ。

◆第2のキーワード「米中通商協議」

続く第2のキーワードとしては、前年に続いて「米中通商協議」にも要注意である。第1弾の原則合意が成立し、1月にも調印が期待されるところだが、合意の具体的な内容は調印時に明らかにされるとなっており、どこまで踏み込んでいるのかは未知数。これまでの関係者筋情報などを見る限り、今回の合意では関税の引き下げや中国による米国産品の輸入拡大などは、徐々に進展を見ながらとなる可能性が高い。状況次第では再び両国関係が悪化し、世界的な警戒感を誘う可能性もあろう。

また、知的財産権を含む元々の両国の対立材料については、第2弾以降に回される可能性が高い。第1弾合意後、第2弾に向けた協議日程すら決まっておらず、こちらも不透明感が広がりやすい状況にある。

米中関係が良好に進めばドル買いに、関係悪化でドル売りと、上下ともに大きな値動きにつながる材料となる可能性を秘めているだけに、協議動向は要注意となる。

◆第3のキーワード「米大統領選挙」

最後に今年新たに加わったキーワードとして「米大統領選挙」が挙げられる。

早いもので、衝撃的な勝利となったトランプ米大統領の一期目の任期もあと1年ほど。20年11月3日には米大統領選挙が実施される。

共和党の候補はこの二期目を目指すトランプ大統領。一方、民主党はこれまでの大統領選同様に、現時点では多くの候補者が乱立している状況で、2月以降の予備選挙・党員集会で候補者が絞られていくこととなる。

米国において大統領の権限はかなり大きなものであり、誰が米国を率いるかによって米国経済の状況は大きく変化する可能性がある。そして、その時にはドル相場も大きな変動が見込まれる。

19年12月25日時点での支持率を基に、民主党の有力候補4名を挙げて相場への影響を考察していきたい。

現時点で支持率トップに立っているのは、ジョー・バイデン前副大統領。前副大統領としての知名度、民主党中道派の代表格としてこれまで上院議員を7期務める中で、外交委員長なども経験しており、政治的手腕にも定評がある。

民主党候補者争いの中で、これまでほとんどの期間で支持率トップに立っており、もしバイデン氏が候補になったケースとして調査された大統領選支持率動向でもトランプ大統領を上回ることが多いなど、勝利が期待できる候補として名前が挙がっている。

もっとも、米ウォールストリートとの相性という意味では、トランプ大統領には及ばないとみられている。バイデン氏が大統領選に勝利した場合はある程度のドル売りとなりそう。ただ、後述するエリザベス・ウォーレン上院議員ら、他の多くの候補に比べるとその影響は限定的なものとみられる。

◆波乱要因となるか?民主党の急進左派候補の2人

そのため、民主党の予備選、特に3月3日のスーパーチューズデーでバイデン氏優勢が報じられると、安心感からいったんドル高になりそう。候補が正式に決まった後はトランプ大統領との事前の支持率争い動向にドル相場は左右される形となるが、こちらの動きも他の候補に比べるとおとなしくなりそうである。

続いて、支持率2位のバーニー・サンダース上院議員(バーモント州選出)。民主系無所属議員として上院議員選挙に当選し、前回16年の大統領選では民主党に入党して立候補したが、ヒラリー・クリントン氏に敗れ、離党している。

社会主義的な姿勢で知られ(自身は民主社会主義者としている)、格差是正、TPP反対、オバマケアをさらに進めた国民皆保険制度の実現などを主張。若者からの支持を得ている。

上院議員として最低賃金の引き上げなどで功績のある同氏の影響については、主張の似ているウォーレン上院議員と合わせて論評する。

支持率3位となっているのがエリザベス・ウォーレン上院議員(マサチューセッツ州選出)である。国民皆保険制度の提唱など、サンダース議員と主張としてはかなり近いものがあり、急進左派候補の二名という取り扱われ方が多い。一時サンダース氏だけでなく、バイデン氏も抑えて支持率でトップに立つなど、人気の高い政治家である。

サンダース氏、ウォーレン氏のいずれかが勝利した場合、かなりの株安が予想されている。両者とも富裕者層への増税方針を公言。特に超富裕層に対して総資産から年間8%の税を徴収するというサンダース氏のプランなどをみると、大統領になる可能性が高まった時点で、ある程度の富の逃避が始まる可能性が十分にありそうだ。

巨大企業に対する批判も共通しているが、こちらではウォーレン氏の批判がより強い。IT大手に対して市場を独占しているとして解体を主張する同氏が大統領になると、米経済の混乱は必至とみられる。

両氏ともに大統領になった場合は大きなドル売りが見込まれる。民主党候補になる可能性が高まった時点でもドル売りが入るとみられるだけに、2月以降の予備選挙状況などにも要注目である。どちらかの候補が民主党の代表となった場合の大統領選でトランプ大統領が勝利した場合は、一気のドル買いも。最も波乱含みなのが両候補のどちらかが優勢に選挙戦を進めた場合と言える。

最後に台風の目となりそうな支持率4位、インディアナ州サウスベンド市長のピート・ブティジェッジ氏を見てみたい。インディアナ州にある人口10万人程度の地方都市の市長で、政治的手腕は未知数だが、有力候補に高齢者が並んだ今回の大統領選において、37歳という若さを武器に世代交代を訴えて支持を集めている。

そつのない選挙戦を繰り広げ、特に民主党予備選・党員集会の走りとなる19年2月3日のアイオワ州では、世論調査でトップに立つ場面も見られた。

政治的手腕が全くの未知数だけに、市場としても反応に困るところだろう。投資資金は不確定要素を嫌うだけに、民主党の代表となった場合、トランプ大統領の勝利でドル買い、ブティジェッジ氏勝利でドル売りという構図が見込まれるものの、影響が最も読みにくい。今後の政策方針の展開次第といったところか。

以上、3つのキーワードを掲げたが、このうち一つを選ぶとすると「大統領選」が挙げられる。2月の予備選スタート以降、情勢の変化によって都度相場に影響してくると考えられるだけに、アンテナを常に張っておきたい。

市場を散々振り回すトランプ大統領が続投となるとドル買いというのは皮肉なようにも見えるが、現時点での状況を見る限り、材料としてはドル買いとして捉えた方がよさそうだ。

2019年12月26日 記

★元日~6日に、2020年「新春特集」を一挙、“26本”配信します。ご期待ください。

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株探ニュース

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