スーパー・エルニーニョ襲来へ、気象リスクに対峙する実力派の銘柄群 <株探トップ特集>
―農産物の供給不安高まれば食料インフレ加速、台風は大型・長寿命化の可能性も―
世界経済に大きな影響を与える異常気象が、大きなテーマとして浮上する可能性が高まってきた。「スーパー・エルニーニョ」である。大型台風の襲来リスクが指摘されており、実体経済にどのような影響をもたらすのか、市場参加者の関心が日増しに高まっている。過去に同様の現象が見られた際のマーケットの反応を参考にしながら、 猛暑、 防災、食料備蓄など、注目のセクターや銘柄をピックアップしていく。
●「スーパー・エルニーニョ」とは
エルニーニョとはスペイン語で「神の子(男の子)」を意味し、ペルー・エクアドル沿岸の漁師たちがクリスマスの時期に海水温の上昇で魚が消えることを「神の子の到来」と呼んだことに由来する。気象庁は、太平洋赤道域の日付変更線付近から南米沿岸にかけて海面水温が平年より高くなり、その状態が1年程度続く現象をエルニーニョと定義している。通常の貿易風が弱まって西側の暖水が東へ広がり、大気循環が変容することで世界規模の異常気象を引き起こすというものだ。発生周期は2~7年、持続期間は9カ月~1年程度である。
エルニーニョが発生した場合、日本は「夏は冷夏・長梅雨」になりやすいのが通説だが、今回(2026年)は「むしろ猛暑の恐れがある」という専門家の見解が出ている。エルニーニョのなかでもより強いスーパー・エルニーニョとなれば、台風が勢力を維持する期間が平均よりも長くなり、大型化のリスクが増大する、と考えられている。
スーパー・エルニーニョは正式な科学用語ではなく、観測海域の海面水温偏差がプラス2.0度以上の状態が数カ月持続する場合、予報官が慣習的に用いる呼称である。近年では1972~73年、82~83年、97~98年、2015~16年に発生したことになっている。今年5月12日付の気象庁「エルニーニョ監視速報(No.404)」では、「今後、夏までにエルニーニョ現象が発生する可能性が高い(90%)」と明記している。アメリカ海洋大気庁の気候予測センターによる最新診断も「今年5~7月の発生確率82%、冬まで継続する確率96%」と予測している。
●脆弱性増幅の触媒になる恐れも
過去の例をみると、エルニーニョが単独で金融市場を動かしたと断言することは困難であるものの、他の経済的・政治的な要因と複合することで事態を加速させた可能性が指摘されている。近年のスーパー・エルニーニョの中でも観測史上最強とされた15~16年当時のマーケットを振り返ると、MSCIワールド指数は15年高値から16年安値まで約2割下落し、日経平均株価は15年6月の2万0900円台から16年2月に1万4800円台まで30%近く値下がりした。ドル円は1ドル=125円台から16年6月には100円割れのリスクオフ地合いとなり、WTI(ウエスト・テキサス・インターミディエート)原油は供給過多の懸念を背景に一時1バレル=20ドル台に突入。農産物は16年に大豆が値上がりする一方、天然ガスはエルニーニョ期の暖冬で最も不振なコモディティとなった。
他の事例をみてもスーパー・エルニーニョは農産物(コメ・小麦・砂糖・コーヒー)の供給制約を引き起こしてきた。食料インフレは途上国の政治リスクと通貨リスクを増幅させる。そして、暖冬による天然ガス需要減少は公益セクターにとって逆風となる。半面、農業コモディティ関連企業には投資機会をもたらす可能性がある。スーパー・エルニーニョは単独で金融危機を引き起こすわけではないものの、既存の脆弱性(高金利環境・地政学リスク・財政悪化など)を増幅させる「触媒」として機能してきた歴史がある。
金融市場の参加者は気候変動によるマーケットの著しい乱高下を「テールリスク(まれだが起きれば甚大な影響をもたらすリスク)」として位置づけてきた。しかし過去のスーパー・エルニーニョが示す通り、それはもはやテールではなく、繰り返し現れる「構造的リスク」として認識すべき時代が来ていると言えよう。その際、投資家のアクションリストとしては、農業・エネルギー・保険といった各セクターへの配分見直し、新興国債券・通貨のエクスポージャー管理、コモディティ先物を活用したヘッジ戦略の検討などが挙げられる。残された問いは一つ。「今回がスーパーになるかどうか」ではなく、「スーパーになったときの備えができているか」であろう。
●猛暑予測で「空調」「冷却」がキーワードに
過去の事例と26年の気候見通しを重ね合わせると、東京市場で注目すべきテーマが浮かび上がる。具体的には「猛暑」や「防災」、「食料備蓄」などだ。いずれも気象予測に基づく先回りの要素が強く、「麦わら帽子は冬に買え」という相場格言通り、実際に暑さや災害が可視化されてからでは出遅れる場合が多い点に注意が必要である。
猛暑関連では、空調・冷却といったキーワードに絡んだ銘柄が浮上する。26年のスーパー・エルニーニョは、教科書的な冷夏にはならず、むしろ猛暑の恐れがあるとされる。海洋研究開発機構(JAMSTEC)のSINTEX-Fシミュレーションは1月時点で「26年は観測史上最も暑い年になるかもしれない」と指摘していた。猛暑関連株には本格的な暑さが始まる前の5~7月上旬に注目が集まりやすい。ただし気温が35度を超えると消費が減少に転じるという逆効果も指摘されており、猛暑の行き過ぎには注意が必要である。
空調設備・エアコン関連としてはダイキン工業 <6367> [東証P]を筆頭にさまざまな銘柄が存在する。エアコンに関しては「2027年問題」に絡んだ商戦が繰り広げられている。また、外食産業での冷却需要は気温に連動する傾向があるとされている。業務用冷蔵庫・製氷機の国内最大手としてホシザキ <6465> [東証P]が高いプレゼンスを発揮しているが、ダークホースとしてガリレイ <6420> [東証P]に注目したい。今期経常は微増でも6期連続で過去最高益を更新する見通し。順調に業績を拡大している。
高気温下では清涼飲料や アイスクリームの消費が増加する。飲料・食品関連では清涼飲料からはサントリービバレッジ&フード <2587> [東証P]や伊藤園 <2593> [東証P]などが代表格となる。アイスクリーム関連でB-R サーティワンアイスクリーム <2268> [東証S]の株価は例年6~7月に年初来高値を記録する傾向がある。
●インフラ工事関連に思惑拡大の余地
スーパー・エルニーニョ発生時は台風が長寿命化し上陸リスクが高まるとされる。気象庁によると、15年の事例では、台風の勢力を維持していた期間の平均値は7.4日と最も長くなった。26年は5月14日時点で5つの台風が発生し、15年以来の状況になっている。自然災害のリスクの高まりで連想されるのが、国土強靱化政策だ。老朽化したインフラの強化や防災対策が政権内で重視されてきたことを踏まえると、建設・土木関連に対する思惑が広がりやすい状況にある。
建設・土木関連で注目したいのは、法面吹き付け工事大手であるライト工業 <1926> [東証P]だ。26年3月期業績は計画を上振れして着地。27年3月期は減益見通しとはいえ、決算発表後に株価は水準を切り上げる場面があった。現中期経営計画期間中は、累進配当で配当性向50%以上を目安とし、28年3月期には株主資本配当率(DOE)6%以上の達成を目指す方針。道路舗装大手の世紀東急工業 <1898> [東証P]の27年3月期は4期連続増益予想で配当利回りは5%を超す。
防災に欠かせない気象情報関連として、民間気象最大手であるウェザーニューズ <4825> [東証P]も見逃せない。異常気象への警戒が高まる局面で同社のサービス需要が増す構造にある。26年5月期は2ケタ増益かつ連続最高益更新を予想。18日に創業40周年の記念配当を5円積み増す形で、普通配当とあわせた今期の期末一括配当予想を62円50銭に増額修正したと発表し、翌営業日に株価は動意づいた。
防災機器関連では能美防災 <6744> [東証P]が下値を切り上げながら上昇トレンドを継続中だ。今期の営業利益は3期連続の最高益更新を計画。セコム <9735> [東証P]と親子上場の関係にある。デンヨー <6517> [東証P]は非常用発電機を手掛けており、今期の営業利益は4期連続で過去最高となる見通し。同社はアクティビストのニッポン・アクティブ・バリュー・ファンドより株主提案を受けている。
●長期保存食・非常食関連も注視
食料備蓄関連も目配りをしておきたい。スーパー・エルニーニョ期には東南アジア・インドの干ばつでコメや小麦などの供給不足が歴史的に繰り返されてきた。国内でも最近は、食料備蓄需要が災害リスクの高まりと消費者の備蓄意識向上に伴い拡大している。
非常食・長期保存食関連としては、亀田製菓 <2220> [東証P]がグループ会社の尾西食品において「アルファ米」などの長期保存食・非常食を展開している。サトウ食品 <2923> [東証S]も関連銘柄に加わるだろう。コメ・小麦・大豆の国際価格が上昇する局面では、昭和産業 <2004> [東証P]など穀物加工企業が連想買いの対象となりやすい。
このほか、業務用冷蔵・冷凍機器関連では期初に保守的な見通しが慣例となっている東プレ <5975> [東証P]、飲料関連ではサイバー攻撃を受けた下押し後のリバウンドが期待されるアサヒグループホールディングス <2502> [東証P]、配当性向の向上が期待されるアイスクリーム関連として井村屋グループ <2209> [東証P]などを注視しておきたい。
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