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2020年1月5日 18時00分
特集

2020年コモディティ――雲覆う市場に転機もたらすか米大統領選 <新春特別企画>

2019年のコモディティ市場は、景気見通しの変化に揺さぶられた一年だった。米中通商協議に関する報道を追い続けるのは楽ではない。2018年から世界的な石油需要の伸びは鈍化したうえ、銅やアルミニウムなど非鉄の価格推移も秋口まで低調で、コモディティ市場は米中貿易摩擦という苦難に試されたといえる。

●低迷から回復へ、底堅さを示したコモディティ市場

試練の年に輝いたのは安全資産の金である。ドル建ての金価格は9月に1556.65ドルまで上昇し、2013年以来の高値をつけた。米中貿易戦争の悪化は世界経済のリセッション入りを警戒させ、逃避的な金の需要が高まった。IHSマークイットが公表する主要国の購買部担当景気指数(PMI)は低下し、悪化が顕著なドイツでは4-6月期に国内総生産(GDP)が前期比-0.2%となるなど、一部の国については景気後退が一時的に視野に入った。

ただ、GDPに対して先行性のあるPMIの低下は一服している。IHSマークイットは鉄鋼やアルミニウム、銅の需要先となる企業のPMIも調査・公表しており、それぞれのPMIは年初にかけて景気判断の分岐点である50を下回ったが、年後半にかけては50超の水準を回復した。米中の対立によって企業マインドは悲観的な方向へ傾き、製造業を中心にPMIは低迷しているとはいえ、工業用のコモディティ市場の一角から眺めると需要減速懸念は一巡しているようだ。ロンドン金属取引所(LME)のアルミニウムに上値の重さは残るが、銅は年末にかけてはっきりと戻している。石油輸出国機構(OPEC)を中心とした産油国による減産目標の拡大もあって、原油も年末は堅調だった。

総括するならば、2019年の世界経済はトランプ米大統領が始めた中国との貿易戦争によって傷ついたにせよ、立ち直れないほどの深傷を負っておらず、底堅さを示したといえる。景気見通しの不透明感で企業は設備投資を見送り、雇用の先行きに悲観的な見方が広がりつつあるが、主要国の個人消費は堅調なままである。ただ、2020年も曇り空が世界経済を覆う。

●米中問題は今後も難航

19年末に米中通商協議が第1段階の合意に至ったことで、米中貿易摩擦の悪化懸念が緩み、金融市場はやや楽観的な動きを見せたが、世界経済は再び拡大へと向かうだろうか。米連邦準備理事会(FRB)や欧州中央銀行(ECB)が緩和方向へ再び舵を切ったこともあって、企業が設備投資を積極化させ、経済活動が活発化すると想定するのは安易である。

第1弾の米中通商合意の内容を確認する必要はあるが、第2、第3弾の通商合意までの道のりはおそらく長い。共産党が舵取りを行う中国の商習慣は西側の主要国にとって異質であり、知的所有権の保護、強制的な技術移転、国営企業に対する補助金など、貿易戦争が勃発する背景となった溝はたやすく埋まるものではない。これまでの協議の紆余曲折が今後の難航を示唆している。最終合意が見えるまで企業の慎重な姿勢に変わりはないだろう。

●20年もコモディティ市場全般は重そう

2020年の米大統領選で、現職のトランプ米大統領は二期目を目指す。中国に経済的な殴り合いを仕掛けたトランプ氏が敗北し、新たな米大統領が選ばれると米中間の対立が変化する余地があるが、民主党候補が勝利を収めるためにはトランプ米大統領以上に中国に対する強硬的な態度が不可欠である。経済的な不公平は正す必要があり、安全保障のほか、香港や新疆ウイグル自治区の人権問題もあって、共和党であれ民主党であれ、中国との融和を口にする次期大統領候補は勝てないのではないか。米大統領選がヒートアップする過程で、中国への様々な反感が高まり、間接的に米中通商協議に影響することはあり得る。

米大統領選までに米中通商協議が最終合意を迎える可能性はほぼない。2020年も協議に関する報道で右往左往しなければならないだろう。おそらく2021年も、である。主要中銀による金融緩和で株高が続くとしても、需要見通しの本格的な回復がなければ工業用のコモディティ需要は低迷を続けそうだ。企業は新規投資を控えつつ、守りの体勢を続けるだろう。設備投資だけでなく、人的投資にも慎重さが波及するリスクは十分にある。米国や英国の賃金上昇率はピークアウトしており、ユーロ圏では失業率の改善が止まっている。2019年に続き消費が堅調さを維持するとは思えない。

2020年は前年の繰り返しで、コモディティ市場全般は重そうだ。安全資産の需要拡大で金はまた注目を浴びる場面があるだろう。株価が多少強くとも景気見通しの改善や、コモディティの需要の好転を示唆せず、米中通商協議の動向を見守るしかない。

●転換点となり得る米大統領選

ただ、米大統領選は米中貿易戦争の転換点となり得る。批判を浴びつつも、経済や人権問題など中国への対応が評価されトランプ氏が二期目に入るならば、中国に対する圧力が強まるだろう。民主党候補が勝利を収め米政権が交代すると、交渉担当者が様変わりすることから、通商協議の先行きがまた見通しにくくなる。協議がさらに長期化すると、経済統計が不備な中国の懸念が広がりやすく、不利な状況に追い込まれるリスクがあることから、早期に最終合意に至るというシナリオもある。

とはいえ、あれこれ想像を巡らせたところで、日々の報道で景気見通しが微妙に変化する状況に変わりはなさそうだ。米中両政府の一挙手一投足が金融市場を絶えず刺激する神経質で難儀な一年がまた始まる。来年末にはもう少し楽な相場になっていることを期待したい。

(minkabu PRESS CXアナリスト 谷口 英司)

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