新春3大テーマ (2) 政治編 「米大統領選の行方と株式市場の勘所を読む」 <株探トップ特集>

特集
2020年1月5日 19時00分

―トランプ再選に強弱感が対立、民主党左派台頭なら波乱要因に―

今年の世界のマーケットの流れを決めるのが11月3日に行われる米大統領選挙だ。トランプ氏の劇的勝利という下馬評を覆す大どんでん返しを演じた2016年の大統領選から今年で4年目。新年の大統領選に向けた市場の関心は「トランプ大統領の再選はあるか」に集中している。この20年の大統領選で、民主党の巻き返しがあるのか。また、新年の米株式市場はどんな展開が予想されるのか。米大統領選の動向とその影響を探った。

●トランプ政権下でNYダウは4割強上昇、大型減税など好感

トランプ米大統領が17年1月に就任してから、直近までの米NYダウの上昇率は40%を超す。民主党のクリントン候補を破り大統領に就任したトランプ氏は、経済政策では保護主義を前面に打ち出す“異端の大統領”としての警戒感が強かった。しかし、大規模な法人減税や規制緩和を行うなど、マーケットに優しい政策を実施。過去3年間では、大幅な株高を達成した。

米大統領選挙で現職は強く、過去30年間でも1期4年間のみにとどまったのは1989~93年に大統領を務めたジョージ・H・W・ブッシュ氏のみ。このため、国内の株式市場関係者からは「トランプ氏の再選による共和党の勝利がメインシナリオ」とみる声がもっぱらだ。しかし、20年の大統領選に向けトランプ氏の再選ムードが高まっているかとなると、そうとは言い切れない。

●トランプ氏の再選確率は5割超程度、支持層に離反の動きも

「いまのところトランプ再選の確率は50%を少し超える程度。絶対に大丈夫という水準ではない。例えば民主党からバイデン前副大統領が大統領候補として出てくれば接戦になるのではないか」と第一生命経済研究所の桂畑誠治主任エコノミストは指摘する。トランプ氏を支える白人労働者層といった岩盤層の支持は変わらないものの、「もともとトランプ嫌いは多いうえに、最近では女性蔑視発言で主婦層からの支持も低下している」と同氏はトランプ支持層に変化が出ていることに注目する。また、東海東京調査センターの庵原浩樹シニアストラテジストも「日本ではトランプ氏の再選が濃厚というムードだが、現地の見方では再選の確率は5分5分だという話が出ている」とトランプ再選の楽観ムードに釘を刺している。

●3月3日の「スーパーチューズデー」の結果に関心が集まる

11月3日に予定されている米大統領選挙に向けた日程をみてみよう。まず2月3日のアイオワ州での党員集会から本格的な大統領選が始まる。同月11日のニューハンプシャー州予備選、22日のネバダ州党員集会などを経て、3月3日にカリフォルニア州やテキサス州などの予備選が集中する指名争いの山場となる「スーパーチューズデー」を迎える。

その後、7月13~16日の民主党全国大会、8月24~27日の共和党全国大会で正式な大統領候補を決定。9月と10月に両党の大統領候補による討論会が開かれ、11月3日の投開票を迎える。最大の関心は、民主党の候補として誰が選出され、共和党のトランプ氏の対抗馬となるかだ。このなかまずは、3月3日のスーパーチューズデーの結果が注目されている。

●民主党はバイデン氏が有力だが、左派統一候補の誕生の可能性も

民主党の大統領候補の選出レースの先頭を走っているのは中道派のバイデン氏だ。直近の調査ではトランプ氏とバイデン氏が直接対決した場合、バイデン氏が優勢との結果も出ている。市場には、「民主党が勝利した場合、企業への課税の強化などが警戒され株価はネガティブに反応するだろう」(アナリスト)との見方は少なくない。ただ「バイデン氏が大統領になるのなら、株式市場からの拒否反応はそれほど大きくはないと思う」(桂畑氏)との見方もある。

一方、懸念されるのはサンダース上院議員やウォーレン上院議員といった民主党左派が台頭することだ。アマゾン・ドット・コムやフェイスブックなど米IT大手のGAFA解体を唱え一躍脚光を浴びたウォーレン氏の人気はやや失速気味だが、サンダース氏は依然、高い人気を誇る。特に警戒感が高まるケースは「サンダース氏とウォーレン氏が手を組み、どちらかが左派統一として名乗りを上げること」(桂畑氏)だ。

●民主党左派が大統領選勝利なら株価暴落の懸念も

サンダース氏とウォーレン氏が、それぞれ独立して予備選を戦えば、支持率でバイデン氏を上回ることはないとみられるが、左派統一候補となり両陣営の支持者が一本化すれば、バイデン氏を上回ることもあり得る。

また、米大統領選で民主党の左派統一候補がトランプ氏に勝利することがあり得るかは疑問だ。しかし、もし左派が勝利し議会も民主党が制覇すれば「株価は暴落もあり得る」(市場関係者)との声も出ている。それだけに、左派統一候補が誕生した場合、市場はリスク要因が高まったとみてネガティブに反応する可能性はある。ただ、米大統領選は長丁場であり「株式市場が本格的にその動向を織り込み始めるのは、7月以降ではないか」(アナリスト)との見方が出ている。

●大統領選に波乱なければNYダウは3万ドル台に到達へ

では、この米大統領選を視野に入れながら20年の米国市場は、どんな株価推移が予想されるのだろうか。前出の庵原氏は、「年前半に株価が上昇しNYダウは3万ドルを突破するとみている。その一方、後半は軟調な展開を予想している」という。一方、桂畑氏は「年前半は米大統領選などへの不透明感やEUとの貿易摩擦も懸念され軟調な展開があり得る。年後半に向けて、大統領選への不透明感が薄れるとともに上向き、NYダウは3万ドル近辺までの上昇を見込んでいる」という。

高値をつける時期の見方は、年前半と後半で割れているが、NYダウの高値は3万ドル近辺で一致している。米国大統領選の年のNYダウは不透明感から、上昇率はやや伸び悩むともいわれる。上昇率が2割を超えた19年に比べ20年は数パーセントにとどまるかも知れない。

●米中摩擦は一時休戦、FRBの金融政策も現状維持続く

市場の関心が高い米中協議に関しては、「中国が産業補助金の削減など構造問題まで踏み込んで譲歩するとは思えない。米大統領選が迫るなか関税引き上げ合戦もないが、大きな進展もないだろう」(桂畑氏)とみられている。米連邦準備制度理事会(FRB)による金融政策は現状維持が続くとの見方が多い。

そんななか、米国の個別株物色にはどんな影響が出てくるのだろうか。「不透明要因はあるが、やはりメインシナリオはトランプ氏の再選。2期目入りを意識し積み残された公約であるインフラ投資を意識した相場展開があり得るだろう」と庵原氏はみる。年後半にかけては、16年のトランプ氏勝利の際に急騰したキャタピラーやスリーエムのようなオールドエコノミー株が、再び上昇基調を強めるかもしれない。

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