日本株は目先の高値を打ったか? 米中第1弾合意も残された懸念 <東条麻衣子の株式注意情報>
米中貿易協議における第1段階合意、ドル円の110円乗せ、米国企業の決算発表、中国人民銀行の預金準備率0.5ポイント引き下げ、米国のレポオペ(米国債などを担保に資金を供給する公開市場操作)など、日本の株式市場にとって追い風となる材料は豊富だ。だが、米国株式市場の高値更新の力強さに比べると、日本株は上値の重さが目につく。
一方で、上海総合指数に視線を移すと、 日経平均株価以上に、昨夏に付けた安値(日中両国の市場ともに8月6日)からの回復の足取りは鈍く、中国株式市場の上値の重さが印象づけられる。ただ、ここでは振れ幅はともかく、2019年以降の日中両国の株価指数が描く波動リズムが相似している点に留意したい。
今回はこの中国株式市場について考えてみたい。
■2020年春節の大型連休が接近
中国における旧正月である春節は7日間の大型連休だが、今年はいつもよりも早く1月24日(金)から1月30日(木)までが連休期間となる。
大型連休を控えるうえに、株価は上値が重いながらも高値圏にあることなどから、中国株式市場では今週から来週にかけては利益確定売りが出やすくなる可能性がある。
■第1弾合意の署名式における中国側発言
貿易交渉を巡る第1段階の合意署名式で、中国の劉鶴副首相より「米農産品の大量輸入は市場状況に基づく購入になる」との発言がなされたと伝わっている。
今回の合意では、中国は今後2年間で米農産品やエネルギーなどの輸入を2000億ドル以上増やすが、劉鶴副首相の発言によって中国の買い付け状況を確認していく必要性もあらためて認識された。第1段階で合意したとはいえ、今後、米国の課している対中制裁関税の撤廃に至るかについては懸念が残る形となった。
これまでマーケットの追い風となっていた「米中協議の合意→制裁関税の撤廃→世界景気の減速懸念の払拭」という期待が現実のものとなるかは、中国による農産品等の買い付けの進捗次第であり、中国の出方を慎重に見極めていく必要があろう。
■テクニカル面、騰落レシオとの連動強める中国市場
直近半年の推移をみると、上海株式市場は騰落レシオの動きに素直に反応していることがうかがえ、特に上海市場の代表銘柄で構成される上海50A株指数の騰落レシオ(25日)が120を超えると、上海総合指数はその当日か、営業日で数日以内に目先の高値を打っている。その数値が直近で再び120を超えてきている点に注意したい。
●上海50A株指数の騰落レシオ120乗せと上海総合指数の高値日との関係
騰落レシオ 上海総合指数
121.111(2019/9/9) 高値 3042.93(2019/9/16)
123.364(2019/10/14) 高値 3026.38(2019/10/14)
122.078(2020/1/15) 高値 ?
日本株式市場が米国市場の上昇にはついていけず、中国睨みの展開が今後も続くのだとすれば、目先の高値はつけたとみてよいのではないか。
中国の春節到来に伴う需給要因、テクニカル面、材料面(米中貿易協議への懸念)を踏まえると、1月後半の日経平均株価は上値重たい展開を余儀なくされる可能性がありそうだ。(2020年1月16日 記)
◆東条麻衣子
株式注意情報.jpを主宰。投資家に対し、株式投資に関する注意すべき情報や懸念材料を発信します。
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