NYダウ3万ドル接近、“適温相場”復活のシナリオを探る <株探トップ特集>

特集
2020年1月21日 19時30分

―10~12月期決算にマーケットの関心集まる、上昇急ピッチで目先警戒感も―

米国株式市場の急激な上昇が市場関係者の注目を集めている。イラン情勢への懸念が一巡すると NYダウは上昇基調を強め、初の2万9000ドルを突破。市場からは早くも、“NYダウ3万ドル”に向けたカウントダウンの声も聞かれ始めた。この背景にあるのは、米中貿易協議の前進への評価や米国経済の底堅さだ。ただ、その一方で「足もとの上昇は急ピッチ過ぎる」との警戒感も台頭している。一部からは中国発の新型肺炎の影響を警戒する声も挙がり始めた。こうしたなか、10~12月期決算の結果に市場の関心が集まっている。

●米中協議の進展でNYダウ上昇に弾み

20日はキング牧師誕生日の祝日で休場だったものの、17日までNYダウは5日続伸で2万9300ドル台に乗せた。新年に入り、わずか10日強でNYダウは昨年末から3%近く急伸した。 ナスダック指数も大きく値を上げ、NYダウ3万ドルとナスダック1万ポイント達成が視野に入っている。この背景にあるのは、年初に浮上したイラン問題への警戒が薄れ、リスク懸念が後退したことだ。それに15日には米国と中国の貿易交渉の第1段階合意が署名され、中国は米国製品の輸入を1.5倍に増やすことが明らかになったことも好感された。更に、米国の景気動向も堅調であり、昨年末のクリスマス商戦も良好だった。

市場関係者からは「米国の個人消費は依然、強く景気が底堅いことは無視できない」との見方が出ている。特に、米中協議が第1段階の合意に達したことで、年後半に向けての世界景気回復期待も出ている。

●FRBの短期国債買い入れが相場上昇の要因に

加えて無視できないのが、米連邦準備制度理事会(FRB)の金融政策だ。昨年10月にFRBは短期国債を月間600億ドル(約6兆6000億円)ペースで買い入れることを決定しており、FRBのバランスシートは拡大。これが、市場に金融緩和効果を呼んでいる。底堅い米国景気にFRBの金融政策が加わり、「実質的な適温相場が戻ってきた」(アナリスト)との観測も市場には出ている。

更に、半導体受託生産最大手、台湾積体電路製造(TSMC)の決算は良好で半導体関連株が上昇したほか、アルファベット(グーグル)の時価総額が1兆ドルに乗せるなどGAFA株の上昇も米国市場の牽引役となった。

●PER高水準で高値警戒感、新型肺炎の影響にも警戒

ただ、市場には「米国市場の上昇は急ピッチでややスピード違反気味」との警戒感も出ている。最大の懸念材料は、 S&P500種ベースのPERが19倍前後の高水準となっていることだ。足もとで発表が本格化している19年10-12月期の米国決算では1%前後の減益が見込まれている。これは最終的には増益転換するとの見方もあるが、依然として高水準のPERに対する警戒感は続く可能性がある。また、FRBの短期国債買い入れは少なくとも4~6月期までは続く見通しだが、その後は不透明で「今後の政策動向は要注目」(アナリスト)との見方もある。更に、11月の米大統領選に対する不透明感が高まる可能性がある。いちよしアセットマネジメントの秋野充成上席執行役員は「2003年のSARS(重症急性呼吸器症候群)発生時には相場に影響が出た。今回の中国発の新型肺炎が、ニューヨーク市場を含む株式市場の調整要因として悪材料視されることもあり得る」と指摘する。

●年後半の業績回復への期待でNYダウ3万ドル達成へ

また、東海東京調査センターの庵原浩樹シニアストラテジストは、「NYダウの3万ドル乗せは十分期待できるが、いまは押し目待ちの状態だ。2万9000ドル割れがあれば、そこは絶好の拾い場となる」という。ただ「PERの割高感は否定できず、3万ドルは春以降かもしれない」ともみている。もっとも、米国市場ではS&P500種の業績は、20年前半は1ケタ前半の増益だが、後半に入ってからは7~9月期は9%増、10~12月期は15%増とV字型の業績回復が見込まれている。米国企業の業績と景気が底堅ければ、NYダウはここから一気に3万ドルに突き進む可能性もある。

果たして適温相場の復活は本物なのか。当面の焦点は10~12月期決算だ。今晩のネットフリックスや明日のオランダ・ASMLホールディングス、23日のインテル、28日のアップル、29日のマイクロソフト、31日のキャタピラーの決算などが相場の行方を握りそうだ。

■10~12月期決算発表のスケジュール

1月  21日 ネットフリックス、IBM

22日 ASMLホールディングス、ジョンソン&ジョンソン、

テキサス・インスツルメンツ

23日 インテル、スカイワークス、プロクター&ギャンブル、トラベラーズ

24日 アメリカン・エキスプレス

28日 アップル、スリーエム、スターバックス、ザイリンクス、

ファイザー、AMD

29日 フェイスブック、マイクロソフト、ボーイング、テスラ、マクドナルド

30日 アマゾン・ドット・コム、バイオジェン、ビザ、ユニリーバ

31日 キャタピラー、エクソン・モービル、ハネウェル

2月   4日 アルファベット、ディズニー、フォード、KLAコーポレーション

5日 クアルコム、メルク、スポティファイ、GM

6日 フィリップモリス、ウーバー、ケロッグ

12日 アプライドマテリアルズ

(注)予定は変更となることがあります。

株探ニュース

人気ニュースアクセスランキング 直近8時間

特集記事

株探からのお知らせ

過去のお知らせを見る
米国株へ
株探プレミアムとは
PC版を表示
【当サイトで提供する情報について】
当サイト「株探(かぶたん)」で提供する情報は投資勧誘または投資に関する助言をすることを目的としておりません。
投資の決定は、ご自身の判断でなされますようお願いいたします。
当サイトにおけるデータは、東京証券取引所、大阪取引所、名古屋証券取引所、JPX総研、ジャパンネクスト証券、China Investment Information Services、CME Group Inc. 等からの情報の提供を受けております。
日経平均株価の著作権は日本経済新聞社に帰属します。
株探に掲載される株価チャートは、その銘柄の過去の株価推移を確認する用途で掲載しているものであり、その銘柄の将来の価値の動向を示唆あるいは保証するものではなく、また、売買を推奨するものではありません。
決算を扱う記事における「サプライズ決算」とは、決算情報として注目に値するかという観点から、発表された決算のサプライズ度(当該会社の本決算か各四半期であるか、業績予想の修正か配当予想の修正であるか、及びそこで発表された決算結果ならびに当該会社が過去に公表した業績予想・配当予想との比較及び過去の決算との比較を数値化し判定)が高い銘柄であり、また「サプライズ順」はサプライズ度に基づいた順番で決算情報を掲載しているものであり、記事に掲載されている各銘柄の将来の価値の動向を示唆あるいは保証するものではなく、また、売買を推奨するものではありません。
(C) MINKABU THE INFONOID, Inc.